日本刀を超えて 「身体」と「竹刀」から考える剣道論

著者 :
  • スキージャーナル
2.83
  • (0)
  • (2)
  • (2)
  • (1)
  • (1)
本棚登録 : 13
感想 : 2
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784789900768

作品紹介・あらすじ

日本刀が実体としても観念としても遠くなった今、「竹刀は日本刀の代用」と考えるのではなく、日本人の伝統的な「動作原理」を基盤に、まったく新しい剣道技術論を構築する。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 剣道の専門家が、竹刀について書いた本。剣道は日本刀を使った戦いから生まれたわけであるが、真剣を使わなくなった現在において、代わりに使われている竹刀は、本当に日本刀の代用品と言えるのか。現在の剣道における竹刀に焦点を当て、深く分析している。
    武士道などのメンタル面の教育と、竹刀を使った勝つための技術を追求した競技性との両面が中途半端に混在し、現在の剣道の教えが矛盾に満ちていると著者はのべ、あるべき姿を最後に示している。私には十分理解できなかったが、剣道に内在する問題点がわかり、楽しめる1冊であった。
    「試合に勝つための技術がなぜいけないのか、正しい剣道とはどういうことなのか、というような疑問が放置されたままであると感じます。現実には竹刀を用いての技術が日本刀での技術から離れて独自の技術を生み出しているのではないでしょうか」p18
    「試合と審査や稽古ではその内容が全く異なるという現象まで生じている」p54
    「現代の「竹刀打ち剣道」の技術が「剣の理法」すなわち「刀法」となりうるのでしょうか。結論を言えば、技術論の立場からは現代剣道の技術が「刀法」であることはありえません」p58
    「(全日本選手権講評)百歩譲って、あのような野性味あふれる剣道があっていいのだろうが、お手本になっては困る剣道なのである。言い換えれば、お手本になっては困る剣道が全日本選手権で二連覇を果たしたということだ」p59
    「剣道はつねに生死という人生最大の問題、極限状況に直面した場合を課題としつつ、これを決するにもっとも素朴な刀という一本の武器をもってしたことに関係がある。「剣術とは生死を決する道」というのが、古来の一致した定義だと見てさしつかえないと思う。これは、平和が人生の第一原理だと考えている現代人の好みにはおそらく合わないであろう」p64
    「現行ルール内における勝利を得るための技術の開発は、「剣道らしさ」の喪失ととらえてきた」p118

  • 今年(2016年)の全日本選手権、準決勝で、強烈な突きに対してすかさず引き面を返した場面があった。突きに入る竹刀は相手竹刀によりにより凌がれている、また、突きの残心の前に面を返されている等々で、突きは無効、引き面が1本の判定だった。

    あれだけ強烈な突きを放たれていながら、有効打突として判定されないあたりが象徴しているように、現代剣道は日本刀の操法を競うのではなく、あくまでも竹刀操法の技術競技だ。しかし、竹刀は真剣のつもりで扱うよう教えられてきたし、日本剣道型が示すものも日本刀の操法によっている。その背反するテーマを矛盾することなく剣道の伝統、剣道らしさにまとめるよう、歩き方を中心に、身体の動作原理を基に展開されている。

    剣道界のとらわれた伝統的な剣道観に対して、上品に一石を投じている剣道論です。

全2件中 1 - 2件を表示

著者プロフィール

筑波大学体育専門学群卒。大阪教育大学大学院教育学研究科健康科学専攻修了。
現在、九州共立大学教授。なみあし身体研究所代表。剣道教士7段。
著書に『錯覚のスポーツ身体学』共著(東京堂出版)など多数。

「2018年 『日本人に今いちばん必要な超かんたん!「体つくり」運動』 で使われていた紹介文から引用しています。」

木寺英史の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×