境界性パーソナリティ障害サバイバル・ガイド BPDとともに生きるうえで知っておくべきこと
- 星和書店 (2009年12月4日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
- / ISBN・EAN: 9784791107278
感想・レビュー・書評
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「困難ではあるが治療可能なBPD」
つまり本書は "BPDは治せる" という視点、前提で書かれている。
尚且つ、「苦しんでいる人について」ではなく、「苦しんでいる人のため」の本だという。
「対人関係を有効に保つためのスキル」「情動制御スキル」「苦悩に耐えるスキル」「メンタライゼーション」など、健常者ならごく自然に身につけてきたこと、生きるうえでこんなに基本的なことすら、BPDにはとても難しいんだなぁ…そりゃ生きづらいだろうなぁ…と思いながら読む。
『感情への対処法』では
「今感じていることを受け入れる」と声に出して言うとか、注意をそらすために「百からゼロまで逆に数える」とか…正直、読みながらバカバカしくなってくる。でも逆に言えば、そんなことを訓練しなければ自分の感情に対処できないのがBPDなのだろう。
ただ、私たちがまず理解していなければならないのは、どんな症状もBPD本人が悪いのではないということ。本人もそうなりたくてなったんじゃない、ということだろう。感情に感情で対応していては、BPDを支援することはできない。
たとえば扁桃体と海馬の大きさや活性、コルチゾールの過剰反応といった生物学的な視点から理解することも大切だ。つまりBPD特有の悲劇的な行動は、本人の意思ではなく、脳がそうさせているのだと冷静な理解をしておくこと。
本書では自傷行動・自殺行動について一章を割いて説明されているが、そういった行動をしないタイプのBPD、いわゆる高機能型BPDについても、もっと触れてほしかった。
全体的にイマイチ踏み込めていない感はあるものの、BPDを表すのに適切な表現、視点の良さ、BPD本人にも向けた記述がある。
実際には、治療や支援の前にまず本人に自覚させることが非常に難しく、そこで躓いて停止、後退、ただ被害者を増やす自爆テロ的な状態で悪循環をグルグルまわっているというパターンが大半なのではないかと思う。BPD本人には、自分の生きづらさが環境や周囲のせいではなく自分の問題なのだと自覚することが非常に難しい。
現実に存在するBPD患者をどうにか救い出してあげたいと試行錯誤する支援者としては、こうした悪循環から「自覚」という突破口へ本人を導くためのヒントを探しているのだが、残念ながらこの本にもそれは載っていない。
" サバイバル " 以前の問題が置き去りにされている。
そして気づく時が来る。
彼らは救いようがない。逃げたほうがよい。
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境界性パーソナリティー障害とPTSDは親和性があるというのは勉強になった。よくまとまっていると思う。
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翻訳本なので、日本の実情にはフィットしているとは言い難いかもだけど、、、治るという視点で書かれている本であるところがよい。心理療法は日本ではどこでどうやって受けられるんだろう。そこにたどり着くまでが大変な気がする。