現代思想 2015年3月臨時増刊号 総特集◎シャルリ・エブド襲撃/イスラム国人質事件の衝撃

  • 青土社
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  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784791712960

感想・レビュー・書評

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  •  先日youtubeで中東研究者有志の会が「ガザ戦争の即時停戦」を求めるLIVE配信を行った。そこで栗田禎子、酒井啓子女史を知りこの本を手に取った。本書はシャルリエブド事件の際に組まれた特集号である。シャルリエブド事件は、少し前の話だが、ガザで戦争が行われていることとひとつなぎであり、内容はまったく古くならない。
     本書で繰り返し述べられることのひとつに「テロ」とは何か、すなわちテロとカテゴライズすることが多くの問題を覆い隠しているということが挙げられる。
     例えば、シャルリエブド事件は、イスラーム教徒が表現の自由に対する侵害を行ったと挿げ替えられた。「表現の自由=文明、神への信仰=未開といった図式で片付けられるといった単純な思考というか、むしろ「無思考」である」。また「『自由』を振り回すのは、新自由主義者でもそうですけど、たいていはすでに自由に振る舞っている人間であり、人権や財産をすでに保証されている連中ですね。」という。すなわち、身の安全や財産が保障されていない人間を、宗教的な(西洋近代に対して未開なもの)ものとしてテロリスト認定し排除する。テロリスト認定してしまえば何をしても大義になるのだ。これは単純な思考というよりは無思考であるという批判である。
     このように、叩いてもいい対象としてカテゴライズして排除する行為は何よりも残酷なものではないだろうか。一連の中東を中心にした問題を宗教的なものとして片付けている人は多いように思われる。そうではなく、私たちも日常で目にするあるいは経験する、不当なカテゴライズによる残虐行為の正当化が行われているのだ。これは殺人者の擁護といった矮小な問題ではない、論理である。
     このように本書は、まったく古くなることはないであろう内容を持つ。

  • 中田考、廣瀬純、ジジェクの文章が面白かった。

    いろんな文章を読むほどに自分からそう遠い話ではないと思わざるを得ない。しかし同時に大量の文章がテロリズムについて語るほどに、自分の頭で主体的に考える機会も失われていく。研究の指針が失われていくのと、いわゆる最後の人間に自分も近づいていくことを感じる。何かの原理主義者にでもなりたい気分である。その何かは不在であるのだが。

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著者プロフィール

1933年イタリアのパドヴァに生まれる。マルクスやスピノザの研究で世界的に知られる政治哲学者。元パドヴァ大学政治社会科学研究所教授。 早くから労働運動の理論と実践にかかわる。79年、運動に対する弾圧が高まるなか、テロリストという嫌疑をかけられ逮捕・投獄される。83年にフランスに亡命。以後14年間にわたりパリ第8大学などで研究・教育活動に携わったのち、97年7月、イタリアに帰国し、ローマ郊外のレビッビア監獄に収監される。現在、仮釈放中。 邦訳に『構成的権力』『未来への帰還』『転覆の政治学』等がある。

「2003年 『〈帝国〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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