コトバ・言葉・ことば: 文字と日本語を考える

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  • 青土社
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  • Amazon.co.jp ・本 (299ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784791761135

作品紹介・あらすじ

声は文字といかに格闘したのか。口頭伝承、身ぶり、器音、図像表現…。文字によらない言葉の伝えあい、その響きを追いもとめてアフリカ=ヨーロッパ=日本と文化を横断した思考の軌跡。文化人類学者による豊饒な日本語論。

感想・レビュー・書評

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  • 38142

  • 過去はそのまま歴史ではない。いま生きている者によって想起され、「イマ」との関係で意味づけられるもの

    過去、現在、未来という空間化、視覚化して一線状に配置された「時」の捉え方はフィクション

    古事記は、その成立からして、当時まだ口承の部分もあったであろう皇帝日継、先代旧辞を、天武天皇が28歳の年若い碑田阿礼に「詠み習わせ」、約30年たった三代後の元明天皇が、読む所を記させた。つまり、少なくとも一旦あえて口承化したあとの記録を、文字で記録したとされている。日本における「歴史スル」行為の最も原初的な段階で立ち現れてくる、声で「ヨム」行為と文字に「シルス」行為それぞれの関わり

    声の力で、ときの隔たりを消去して、「ムカシ」を「イマ」によみがえらせる

    文字を用いた学校の言語教育で画一化された規格化されることのなかった、アナーキーなことばの輝きー私はこのサバンナに生きる人たちの音声言語の美しさを、よくこういうことばで表現する。

    ことばが通用するとはどういうことなのか

    文字を必要としなかったと考えるのが正しい

    宣誓、読経、祝詞ーみな、声の力が文字を凌駕している。釈迦も孔子も、キリストもマホメットも、偉大な予言者、教示者は、声の力で聞く者の魂を変えた。声による教えを文字に書きとめたのは弟子たちだ。

    声には理性を超えて、人間の生理の最も奥深い層にまで、じかに届くような力がある。

    文字に書かれたことばを、目で主体的、意志的にたどり、必要があれば途中で読むことをやめ、好きなだけ時間をかけて考えながら、理性によって理解するという行為とは、かなり人間の大脳や神経の生理のメカニズムとしても違った行為なのであろう。私たちは言語というものを媒介として、声で発せられることばと、文字に書かれたことばとを、連続したもののように考えがちだ。そしてそれはアルファベットなど表音性の大きい文字体系については、かなりの程度あてはまる。だが、漢字など表意性、図形記号性の大きい文字については、声で話す、聴くという神経の働きと、文字で書く、読むというはたらきとは、別の系統のものだということが、最近の脳神経生理学の実験的研究でも明らかにされてきている

    文字は、ホモ・サピエンスの、それも人類全体の歴sからみれば、ごく一部分が用いているに過ぎない音声言語は普遍的にあるし、分節の度合いはさまざまであるにせよ、声によるコミュニケーションは、人間以外の動物にのある

    声は、功利性や伝達上の意味などを度外視して、もっと衝動的に生々しく【発せられる】もの

    西洋人には能はわかるまいとか、日本人には所詮バッハは理解でないといったたぐいの議論が私は嫌いだ。

    互いのいうことが完全にわかっているとはいえない。大切なことはわかるはずがないときめつけないこと、自分とは違うものをわかろうとする意志をもちつづけること

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著者プロフィール

(かわだ・じゅんぞう)
1934年生。東京大学教養学部教養学科卒業。現在 東京外国語大学名誉教授・日本常民文化研究所所員。著書『無文字社会の歴史』(岩波現代文庫、2001)『口頭伝承論』I、II(平凡社ライブラリー、2001)ほか。訳書 レヴィ=ストロース『悲しき熱帯』I、II(中公クラシックス、2003)『ブラジルへの郷愁』(中央公論新社、2010)ほか。
*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。

「2023年 『構造人類学 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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