- Amazon.co.jp ・本 (213ページ)
- / ISBN・EAN: 9784791761609
作品紹介・あらすじ
超国家的"帝国"を担いながら、偏狭なナショナリズムに陥るアメリカ。気鋭の社会学者が、「9・11」前夜の滞米経験をふまえ、その変貌のメカニズムを摘出し、同じ病理を別の形で抱えた日本社会の危機と未来を展望する。
感想・レビュー・書評
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アメリカは歴史上ほとんど唯一成功した政治革命、独立革命の結果として生まれた。政治革命とは新しい権力システムを樹立すること。政治革命においては権力システムに恒常性を付与する権威をいかにして調達するかが課題になる。
ナチスの反ユダヤ主義こそ人種なき人種主義。
ナチスの人種理論の中でユダヤ人は格別な地位を占めている。
現代の世界が帝国と呼ばれるのは、ローマ帝国を理論的に把握したポピュリビオスの帝国論との類比によって現代の世界がとらえられるから。
帝国とはアメリカ的な原理の世界化。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
1084夜
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主に「季刊武蔵野美術」への時評をまとめた1冊。
時評という性格上、論文の対象は時事的なトピックとなっており、執筆当時のオウムの地下鉄サリン事件やオタク系のサブカルチャーを切り口に時代の特質を描き出すといった内容がひとつ。
また、著者がその時期にアメリカに長期滞在していたということもあり、コロンバイン高校の銃乱射事件や、クリントン元大統領の不倫報道などから、アメリカ社会の特質、日本との相同(あるいは相違)について論考されている。
これらの論考に通底するのは「確定性と偶有性」、「ネイション」、「多文化主義」、「ナショナリズム」、「帝国主義と〈帝国〉」といったキーワードであろうか。特に人種主義と多文化主義における構造の同一性にはなるほどと頷いた。
時評という文量の制約の中で書かれていることもあり、論の進め方は明快で、理解しながら読み進むことが出来るが、一番建築の領域に近いと思われる「エアポート論」だけは難解。総じて良質の論文集である。 -
多木氏との共著『エアポート論』は新鮮だった。
「加速資本主義論」も虚構の時代の象徴としての吉見俊哉的なディズニーランドの比喩が援用され、楽しめた。
「人種なき人種主義」、「オウムは何故われわれにとって耐え難いのが」など、大澤真幸の言わんとしたいことが
短い文ながらも凝縮されており、さらに文体も普段よりもさほど難解さは影を落としている気がした。
「帝国的ナショナリズム」は、ネグリ・ハートの『<帝国>』と帝国主義の違いを上手く説明してくれていて、
ありがたかった。