芸術と脳科学の対話―バルテュスとゼキによる本質的なものの探求

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制作 : Balthus  Semir Zeki  桑田 光平 
  • 青土社 (2007年5月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (187ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784791763399

芸術と脳科学の対話―バルテュスとゼキによる本質的なものの探求の感想・レビュー・書評

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  •  『バルテュスまたは本質的なものの探求』という気取ったタイトルが『芸術と脳科学の対話』という邦題になっているのがちょっと悲しい。売れるタイトルを考えた出版社の思惑もあるのだろうし、私自身この邦題をみて、何だろうと関心を思ったのだけれど。
     もっとも、芸術と脳科学が対話なんかできるもんかと私は思ったのであり、帯にもこんな台詞が引用されている。「あらゆる芸術的な努力とは、脳の巧みな機能の実験なのです──ゼキ。脳だけが動きを表象できるわけではありません──バルテュス」。2001年に亡くなった画家バルテュスと『脳は美をいかに感じるか』の著者ゼキとの対話である。原書の出版は1995年。予測されたように最初から話は噛み合わない。

     「脳」が流行して久しい。例の「脳科学者」の活躍をはじめ、書籍を「脳」で検索してみると「脳の変化でみる女の一生」「脳に効く」「戦争する脳」「脳がすっきり」「脳力アップ」「脳ドリル」……すっかり主体の座は「脳」に奪われてしまったようでもあり、「脳」こそ人間の最大の道具のようでもあり、いったいわれわれ自身が「脳」なのか、脳に騙されたりする対象なのか。正直、私は辟易としている。「あなたは脳のことばかりですね」、バルテュスのいらだちに拍手する。
     とはいえ、私はバルテュスの名前と少女を好んで描いた画家というくらいの世評しか知らなかった。『ニーチェと悪循環』のクロソウスキーの弟だとか、妻が日本人だとか、抽象絵画には批判的だとか、本書を手にしてから知った。分析し、普遍化し、知りたいゼキと、総合し、個別化し、知らずにおいておきたいバルテュス。第1の会話はまったく物別れに終わる。「結局のところ、あなたにとって芸術家とは何なのですか?」というバルテュスの問いに対するゼキの答えもまた評者には要領を得ない。

     しかしゼキも馬鹿ではない。バルテュスも対話を拒むペダンティストではない。なんとか共通の話題を見出そうとする努力が続けられる。ゼキは脳がどのように機能するかの知見を持って切り込もうとするが、バルテュスは絵画は脳で描くものではなく、手で描くものと思っているようである。彼は画家を職人と規定し、自身を十九世紀の人間という。ゼキの質問する態度は性急だが、そこに科学の傲慢を見るのはもっと性急だと訳者はいう。ゼキは敬愛する芸術家を前に無邪気に質問しているのだと。とはいえ、バルテュスの対話者としてゼキの質問の投げかけ方はまったくもって不首尾で、「本質的なもの」が探求されたとは思えない。
     バルテュスの愛好家には興味深い点もあるかと思うが、あに図らんや、『芸術と脳科学の対話(なんかできるもんか)』という本だったと思う。

  • 「芸術と脳科学の対話」読んだ@台北 http://www.seidosha.co.jp/index.php?%B7%DD%BD%D1%A4%C8%C7%BE%B2%CA%B3%D8%A4%CE%C2%D0%CF%C3 … 最後まで全く噛み合わない対談を野次馬的におもしろ可笑しく読んだ。対話とは対立かと思うほど。描画も着色も脳の作用であると画家を納得させたい学者と、創作も作品も感覚的に情緒的に捉えたい作家(つづく


    学者が画家の発言を即座に否定し、自説の受容を強要する様が鬱陶しい。科学至上の割に自分がある作品を好きだと思う感覚は解説しきれていなかったり、画家のツッコみに答えられず話を変えたり。訳文は直訳で酷いが訳者による解説はよかった。解説を読むまではこの対談を失敗だと思っていたな(おわり

  • 先日、心理学会にて訳者の桑田先生の講演を聴き、購入。
    なかなか面白い内容でした。画家バルテュスと、科学者ゼキの対話録。
    ときおり対話なのに堂々とシカトをくらわしたり、突如としてバルテュスの奥さんが対話に乱入してきたり、読み物としても充分に面白かった(笑)
    傍注も詳しくされているので、つっかかることなく読めました。
    ただし、まああくまで対話ですので、二人の思想に関する話というか……突っ込んで脳科学の話をしたりはしません。
    本気で芸術と脳科学の関連を知りたいなら、ゼキの『脳はいかに美を感じるか』の方がいいですね。カラー、図版多でわかりやすい。

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