- Amazon.co.jp ・本 (194ページ)
- / ISBN・EAN: 9784791765294
感想・レビュー・書評
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大西洋に浮かぶ小さな島々―アソーレス諸島で営まれる、それぞれは全くつながりもないエピソード(断片)が淡々と綴られる。ときに詩的に幻想的に、あるいは構築だった論文のように。ばらばらのそれら断片を読み終えたとき、島々を俯瞰するかのように目の前に広がるのは、人間の滑稽さ、愚かしさ、悲しさ。それと悠々と大海を泳ぐクジラへの畏敬の気持ちだ。
一頭のクジラが人間を眺めて思う。
「どうしていつもあんなにせわしないのだろう、長い手足をばたばたさせて。完結した、あるいは充足した形態をもたない彼らは、なんと丸みにとぼしいことか。よく動く小さい頭に、あのわけのわからない生き方のすべてが凝結されているらしい。・・・・・・・・彼らの仲間うちでは、愛することがはてしなく痛々しげだ。彼らの愛の行為は気むずかしくて、ほとんど粗野でさえあり、あわただしく終わる。細長い彼らの体型のおかげで、結合するときの壮大な困難に遭遇することもなく、遂行するときも、かがやかしい、やさしさに満ちた努力を必要とはしない。・・・・・・やっぱり、彼らは悲しいにちがいない」
(P.148 あとがきより)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
タブッキ読みつぶし中。一気に読むものではないな。
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アソーレス諸島(ポルトガル領)を舞台に描かれる、詩的で象徴性の強い短編小説集。
『メイスン&ディクスン』が<饒舌>だとしたら、本書の作品群は<寡黙>だといえるだろう。にもかかわらず、ある掌編を読んでいると、自分が主人公とともに、宵闇迫る小さな港に佇んでいる姿が、はっきりと眼前に浮かんでくる。
「隠喩としての断片を重ねることによって全体像を追う。この手法がわたしには限りなく好もしかった」。そう語る訳者の翻訳がまた、限りなく美しい。 -
ほんとうに断片的な文章が集まって、荒々しい自然にあふれた島々、そこに住む人たち、周りを泳ぐクジラが永久に音楽を奏でているような本。海に持っていって読んだらもっとよさそう。