その島のひとたちは、ひとの話をきかない――精神科医、「自殺希少地域」を行く――

  • 青土社
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  • Amazon.co.jp ・本 (193ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784791769315

感想・レビュー・書評

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  • 軽い気持ちで読みはじめたが、すごく学びの多い本だった。「ひとの話を聞かない」というのは確かな自分を持っている、ということ。一本芯を持って生きていこう、相手の都合に構わず人助けしよう、と思わせてくれました。

  • オープンダイアローグで知り、前から読んでみたいと思っていた森川すいめい先生の本。読んでいて優しい気持ちになる心地良い文章。語られる内容も、厳しさや苦しさもあるのだけれど、それでも自分と他人との差が少ないというか、優しさとはまた違う気がする、なんとも言えない包容力、寛容さがある。
    援助者の1人として、ただ困っている人を助ける、でいいんだよなぁと思う。自立できるように、とかタメにならないのではないか、と助けることを躊躇したりためらうことがあるけれど、この本を読んでいたら、そんなことは気にしなくてもいいのかなぁという気持ちになる。ただ、ありのままの姿を受け入れる、認める。簡単だけど難しい。自分のことも相手のことも、ありのままを認めていく。みんながそうできたら、社会はもっと居心地が良くなるにちがいない。

  • 自殺で亡くなる人数が少ない「自殺希少地域」を訪れるドキュメントですが、思っていたほど堅苦しくなく、気軽に読めて、為になりました。

    その地域では、挨拶はもちろん、会った時に何らかの声かけや会話が自然に発生する。声かけは、見知った人のみでなく、観光で来ている等、知らない人にも声をかける。慣れないと、戸惑う人もいるかもしれないが、そこでは、それが当たり前になっている。

    なぜかといっても、特別に変な意味はなく、単に助けになると思って、声かけをしている。これについては、孤独を望んでいる人に対しても、孤立はさせない効果があり、単純なようで侮れない。声かけだけでも続ければ、自然とその人のことも分かり、ありのままを認めてくれていると実感できて、生きやすい環境になる。

    フィンランドで実践されている「オープンダイアローグ」というものがあり、そこの人が言っていた言葉にいたく感銘を受けた。

    「ひとが呼吸をするように、ひとは対話をする」

    私自身、時折、息苦しいと思うことがあり、そういうときは大抵、何かしらのストレスを感じていることが多い。大人になって、呼吸の仕方も忘れたのかと、愕然としたりもしたが、そういえば、色々な人と対話を自然にできているのかと言われれば、それもできていないと思う。習うより慣れろの精神で心掛ければ、周りの人たちも生きやすくなり、それが自分にも還ってくるということに、すごく納得させられた。



  • 自殺希少地域には
    「生きやすさ」のヒントが
    あるのではないか…

    そうした考えのもと、
    著者が行ってきた
    フィールドワークの様子が
    書かれた本です。

    「はじめに」では
    こう述べられています。

    「これが正しいとかこうすべきだとか、そういうことを書きたいわけではない。」
    「本書が何かを考えるきっかけになったらと願っている」(12~13ページ)

    その言葉通り、
    この本には「生きやすさ」の
    ヒントになりそうな出来事は
    かかれていても、

    こうすれば生きやすくなる!
    というような
    こたえそのものがズバリと書かれている本、
    ではありません。

    むしろ
    8割以上がエッセイです。

    そのため
    「今すぐ生きやすさが知りたい」
    「生きやすさとは何かを言いきってほしい」
    「手っ取り早く、自殺を少なくする方法が知りたい」
    という方には、正直オススメできません。

    ここには
    自殺希少地域で暮らす人たちの日常が
    著書の体験を通し、記録されています。

    読みすすめているうち、
    自分にとっての「生きやすさ」とはなにかを
    自然と考えている自分に、
    きっと気づくはずです。

  • 生きる勇気が湧くとか、癒されるとか、そういう本じゃない。直面した現実の、多様で複雑な生きづらさを見つめて、どうしたらより生きやすくなるのかを淡々と、一緒に考えさせてくれる本だ。
    読むと自分を振り返ってつらくなる。けど、つらさがあることに素直になれる。
    共感できなくてもいいから、多くの人に共有してほしいことがたくさん書いてある。押し付けがましい善意の本ではない。

  • 自殺者の少ないといわれる地域を実際に訪問して、そこで得た印象がかかれた本。
    深い付き合いではなく、浅く広く。そして困っている人を助ける、自分にできなければできる人につなぐ、最後まで見捨てない、の気質のある場所が、結局は助け合える地域になる、という内容。

  • おせっかいは、選択肢を提示するのではなくて押し付けちゃった方がいいこともある、らしい。問題が起こるものだと思って、起こった問題を一緒に考えて解決する組織。問題解決する時間は稼ぎがなくなる。の解決としてのNPO。私じゃどうにもならないときに付き合い続ける。相談する。できないときにたらいまわしにしない。弱っているときには入っていいか聞かずに助けに来たよと入っていく。それでも断られたら退散して、出直す!こういうのがいいと思うんだけど、どう?
    自分をしっかり持っていて、周りもその人を受け止めている社会。地域で一つのコンセプトを持つ。

  • ◯ 多様であることを包摂できていたならば、違う意見があってもそれを排除しない。(51p)

    ◯ 何かあるのが当然としてこれを解決しようとする組織は変化に対応できる。(64p)

    ◯ 「どうしますか?」と相手のことばによる返事に答えをゆだねるようにはあまり聞かない。「こういうのがいいと思うんだけど、どう?」と聞く。(135p)

    ◯ 職場の人間関係がよくなる最低限の原則は、目的を同じくすることである。(149p)

    ★精神科医が自殺の少ない地域へ行って、何が違うのか調査した記録。最後の章にまとめがあるが、調査レポートというより旅のエッセイのよう。ただ人間関係とか組織のあり方とか広く参考になりそう。

    ★多様性とかジェンダー平等とか時代の方向性と合ってる。

    ★生きづらさは対話の少なさから生まれる。オープンダイアローグ。

  • 自殺率の低い地域「自殺希少地域」には心地よく生きる知恵があるのではないか。そう考えた精神科医が現地の雰囲気を肌で感じてきたリポートです。
    あくまで外から見た環境なので、根拠があるわけではないのですが、オープンに人の役に立つことを喜べる地域に居る事は、精神衛生上とてもいいと思います。人と関わる事が辛い人にはちょっと受け入れがたいかもしれないけれど、自分ひとりならそういう村にいるのもいいかなあと思いました。
    先日読んだ「つけびの村」も田舎の集落ですが、何が違うんだろうと思って読みました。うわさ話が好きだったり、悪口だって言ったりする。それは共通しているのに何がちがうのか。
    この本を読むと、人への関わりがあまり濃密ではないけれど、誰にでも親切にする事が基本になっている場所なのかなという気がします。ゆるやかな共同体というんでしょうか。
    僕的に思っているのは自殺の原因には孤独以上に「世間の目」というものが作用しているような気がしています。
    世間という概念を改めて突き詰めると、仮想された不特定の人々なんですよね。はっきり面と向かって何か言われない限り無効だと割り切れれば、とっても生きるの楽になると思うのですが、こういう事を考えている事自体そうなれない証拠でもあるんですが・・・。

  • 旅日記。形見の櫛の話は驚いた。

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著者プロフィール

精神科医

「2021年 『オープンダイアローグ 私たちはこうしている』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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