パウル・ツェラン全詩集 第Ⅰ巻

  • 青土社
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  • Amazon.co.jp ・本 (516ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784791791767

作品紹介・あらすじ

象徴主義やシュルレアリスムの流れに立ち、ユダヤ人としてナチズムの惨禍、スターリニズムの傷痕を心の奥深くに宿しながら、現代詩人の命運を生き、自死した、パウル・ツェラン、本邦初の個人完訳全詩集。

感想・レビュー・書評

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  • 吐息の結晶を、息をつめて見つめる。


    (※読んだ本とは違うのですが、取り扱いがないようなので…、改訂新版で仮登録しておきます。※)
    (『息のめぐらし』 パウル・ツェラン / 静地社)


     パウル・ツェランはドイツの詩人。この詩集を発表した前後から、精神に異常をきたしたとか。
     すこし息苦しいイメージのある詩集です。息苦しいような、気持ちがいいような、時々うっとりもしてしまったりするような感覚に、心ひかれてしまいました。実は私、憂鬱でちょっぴり病的なイメージの表現も好みなのです……★ 表現の世界は自由ですから、必ずしも健全なものだけが認められるわけではない、そこがまた面白いのです。

     呼吸運動は、3つの作業が1セット。①吸う。②吐く。③吸うと吐くの間に、切替がある。
     わずかな間とは言え、③で息の旅は止められ、うまくスイッチできなければ息果ててしまいます。そのポイントを通過してこそ、息はめぐらされるのです★
     なにげなくも猛スピードで通過するその瞬間を、感度の高いパウル・ツェランは緊張感を持って捉え、詩という形に表すことで永遠につなぎとめた! と感じました。
     息をつめて見つめたくなる、吐息の結晶です。

     こんな風に呼吸という行為を意識し、作品に刻みつけた者が、その後も何十回、何百回と「息のめぐらし」を続けなければならないのは、とてつもない苦行のような気もしました。実際、ツェランはある瞬間、めぐらさずに止めてしまったのです……。

    「頭蓋骨」「血液の凝固」「死への跳躍」と、苦痛の影を連想させる言葉がかなり使われているのですが、ぱっと読んでの感想は綺麗だな、ということでした☆ すりつぶされた骨片も、膿もただれも、不気味さだけではなく、時として明るい狂気のなかで透明に歌われています。


    「かつて、
     そのころわたしは聞いた、その者が世界を洗うのを、
     誰にも見られず、夜もすがら、
     まぎれもなく。

     一にして無限なるものが、なからしめられる、
     られる。

     光が生じた、救いが。」


     ひとたびは希望を思わせる言葉「光」が選ばれて、詩集を締めています。

  • 「誰のものでもない薔薇」のみ読了。ドイツ人にとってさえ難解で、ツェラン自身が「何度も読んでください。そうすればわかります」と言ってるほどなのだとか。確かに、難解。ユダヤ人としての迫害の側面からだけ読んでは一面的なのだろうが。/かれらのなかに 土があった、そして/かれらは掘った(Iより)/堂々と ひとつの太陽が泳いで来た、明るく/魂また魂が それに向き合っていた、はっきりと、/尊大に 沈黙したまま それらは太陽に/その軌道を示した(p.366)/お前が讃えられるように、誰でもない者よ。/お前のために/ぼくたちは花咲こう。/お前に/向かって。(詩篇 p.374より)/そして ぼくたちは/ぼくたちのうちの誰も下に向かわせはしない/お前に向かって、/バベルよ。(p.468)/接吻は、夜/ひとつの言葉に意味を焼き付ける、その言葉に向かってかれらは目覚める、かれらは----(p.514)/

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