木のいのち木のこころ 天

著者 :
  • 草思社
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  • Amazon.co.jp ・本 (167ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794205322

感想・レビュー・書評

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  • 木は人間と同じで一本ずつが全部違う。
    それぞれの木の癖を見抜いてそれにあった使い方をしなければ…
    一生を桧と古代建築ですごしてきた著者が、語り口調で木をいかに生かすか、技や勘、人をいかに育てるかについて書かれた本です。
    心にジンワリしみわたる書。

  • 「経験に学ぶのが愚者、歴史に学ぶのが賢者」と言う格言があるが、「経験のみに学ぶのが愚者、歴史のみに学ぶのも愚者、賢者は経験と歴史双方から学ぶ」が正しいのでは。
    もっとも、格言が出来たころは経験に学ぶのはアタリマエだった、という前提がある気がする。
    経験がすっぽり抜けて歴史だけに学ぶ人にならないよう、戒めを与えられた一冊でした。

  • 最後の宮大工と呼ばれ
    法隆寺の修理や薬師寺金堂の再建などを行った
    西岡常一の「ことば」が掲載されている。

    ものの考え方
    「学ぶ」「教える」ということ
    根本に関わる部分を

    何度か、折に触れて読み返しています。

  • 印象に残った言葉
    癖のある木も捨てずに使いきる
    木を買わず山を買え

  • 言葉が悪い言い方ですが、儲け仕事に走りましたら心が汚れるというようなことでした。

    教える弟子のほうも大変やし忍耐いるでしょうが、教える側も大変なでっせ。よっぽどの慈悲心、親切心がなければやれませんわ。本当に芽が出てくるまで辛坊せなあきませんからな。

    木を育てるというの大変なことなんでっせ。自分のことだけを考えていたらできません。

    丸暗記した方が早く、世話はないんですが、なぜと考える人を育てる方が大工としてはいいんです。

    癖を見抜いてその人のいいところをのばそうとしてやらなあきません。

    褒められてもうれしゅうないですな。自分がした仕事ですから、どこかに欠点がないか、あそこは大丈夫か、そう思いまっせ。

    それと人間というやつは褒められると、こんどは褒められたくて仕事をするようになる。人の目を気にして、「こんなもんでどうや」「いっちょう俺の腕を見せた路」と思って造るんですな。ところがそういうふうにして造られた建物にろくなものはない。

    職人は思いあがったら、終わりです。ですから弟子を育てるろときに褒めんのでしょうな。

    木の癖組みは工人たちの心組み。

    気に入らんから使わん、というわけにはいかんのです。自分の気に入る者だけで造るんでは、木の癖を見抜いてその癖を生かせという口伝に反します。

  • 頭じゃなく、身体。
    魂込めて、ともかく場数。
    棟梁はやってみせれるか。

  • 西岡さんが語った言葉そのままの本。
    本当に目の前で西岡さんが語っているかのような、息や世界観を感じられた。
    宮大工らしい木への向き方。棟梁としての人の育て方。

    ●木を生かす。無駄にしない。癖をいいほうに使いさえすれば建物が長持ちし、丈夫になるんです。
    ●その木の生きてきた環境、その木の持っている特質を生かしてやらな、たとえ名材といえども無駄になってしまいますわ。ちょっとした気配りのなさが、これまで生きてきた木の命を無駄にしてしまうことになるんやから、われわれは十分に考えななりませんわ。
    ●大工というのは仕事ですが、その前に人間なんです。大工という仕事を持った人間なんです。すべてにいいかげんではいかんのです。どこかがいいかげんなら、それが仕事に出ますからな。
    ●木の使い方と同じように、癖を見抜いてその人のいいところを伸ばそうとしてやらななりませんわな。育てるということは型に押し込むのやなく、個性を伸ばしてやることでしょう。それには急いだらあきませんな。
    ●早く習得した人は先に進みますわ。だが、遅くったって構わんのです。覚えることが大事なんです。覚えな、前に進みません。覚えないまま進んでもしょうがないんです。そういう人はじっくりやるんですな。早く覚えて先にいったほうがいいということはないんです。

    クリさんがオススメしてた本だけど、読んで本当によかったと思う。

  • 伝説の宮大工、西岡常一のことば。

    ものを「創る」こととはどういうものか、教えてもらったような気がした。

    以下印象に残った個所を抜粋。

    「癖と言うのは悪いものではない、使い方なんです」
    木の癖をしっかりと生かした建物は、長くしっかりとした建物になる。人間の性格も一緒だと、西岡はいう。

    「これは飛鳥人が本当に深く自分の風土を理解した上での創造でっせ」
    湿気の強い日本の風土に合わせて、軒を長くして雨を防ぎ、建物を乗せる土台を高く設定しながら、旧来の掘立式ではなく、大陸から伝わった建築様式を使用する。ある技術を環境に合わせて、最適化し、新たなものを創造する。そして何千年後にも残り、芸術性も高いものを生み出す。
    これこそが職人の仕事であるなと感じた。マーケティングも同様。マーケットイン、プロダクトアウト、の二項対立ではなく、両者の融合、止揚した点に存在するのだろう。創造性=新しいもの、ではない。


    「学校みたいに『そんなん聞いてません』というて逃げられませんわな。知らんことでも解決せなならんのです。解決せな家が建たんですからな」
    与えられることを欲してはだめ。ではそのためにはどうすればいいのか。
    家を建てればいい。すなわち、何か目的を持って取り組むことが重要だと言うことだ。ただ給料をもらうため、怒られないため、に作業をしていると、この大事な点がなくなってしまう。自分が目指すものに対する通り道として全てを捉えること、そうすれば能動的な姿勢にならざるをえない。

  • 西岡さんは法隆寺の昭和大修理や、薬師寺金堂を復興をされた方で
    体験から極められた建築や木や道具の話は素晴らしく、大工と言う
    より哲学者か宗教者の教えのような深い悟りと知慧を感じます。
    知識を知ることよりも、道理に気がつくことの大事さを教えてくれます。

  • かなりオススメ!

  • 1993年に発行された160ページほどの本だけど、内容は考えさせられるものが多い。技術の伝承あたりは、1300年の歴史から学び、それを時間をかけてじっくりと伝えていくと言うのだから、現代では到底及ばないことだ。人は褒めてはいけない、にはなるほどと頷いてしまった。

  • 宮大工になりたいと思った。(一瞬)

  • 帯には「木をいかに生かすか
        性質をどう見抜くか
        後継者をいかに育てるか」
    とあります。

  • ・宮大工としての誇り、職人のプライドなどの思いが詰まった本でした。
    ・機械作業では、単一作業することでスピードはupするが、癖のある木は使える部分以外は捨てることになる。
    ・他方で、極めた職人は、時間はかかるが、癖ある木の適材適所の活用を見極めて強度・耐久年数のupに繋げ、更には資源の無駄遣いも減少する。
    ・今の時代は、スピーディに結果が求められることが多い。
    ・ビッグモーター、ダイハツの問題でも同じような気がする。
    ・「生計を立てる為、時代の変化」といわれれば、言い返す言葉はないが、仕事に対する心構えの原点回帰ができたような気がした。
    ・「存在するものに命・心があり、それを見極める力を養い、全てのものに感謝して生きる。」
    ・やるのみ。

  • 職人としての生き様、宮大工棟梁の自然観、知恵と知識、伝統建築と新建築、大工と学者、いろんな対比で読み進む。遺言にも似た自叙伝。(ちいさな帆)

  • 懐かしい。憧れた人のひとり

  • 1300年も残るという先人達の知恵。法隆寺も建物を見に行かなければ。

  • 著者は法隆寺の宮大工。1000年の時を越えて伝承されてきたものを、後世に伝えていくのだという著者の矜持が伝わります。日本のものづくりはどのように継承されてきたのか、そして今何が忘れられようとしているのか、ということを考えさせられる本です。聞き書きなので、話が重複する部分もありますが、読みやすい本です。

  • 宮大工のこと、日本の建築のことが良く分かった。大工というものを全然知らなかったと反省。

    現代人に欠けている大切なことが詰まっていて、今の自分と世の中を見直すことができた。
    木も人も同じなんだなあ…と。

  • 日本最後の宮大工が書いた本。人材論として読んでも、理論一辺倒で人の感覚から離れてしまいがちな現代へのアンチテーゼとしても読めたを

    読了後、体験の重要さを再認識した。やはり文字だけ、言葉だけに頼るのは限界があると再認識しました。

    ただこの考え方を教育法としてそのまますべてのやり方に適用できるとは思えませんでした。

    大本営参謀の情報戦記で堀英三が『陸軍の陸大の参謀教育は高度な教育で仕上げたエリートだけが担うだけでなく、戦時に必要なアメリカ式のマニュアル式即成参謀も必要ではなかったか?』と日本陸軍の中間層の厚みの点について書いていたことを思い出した。

    この本にあるように少数が少数へ伝えて行く教育も大事だが、少数から多数への教育もまた大事だと思います。ようはバランスと思います。

    次はこの方の弟子の本を読んで見ます。

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著者プロフィール

西岡 常一(にしおか・つねかず)
1908年奈良県に生まれる。1995年没。西岡家は、鎌倉時代にはじまる法隆寺四大工の一人、多聞棟梁家につながる宮大工の家柄。明治のはじめ祖父常吉氏の代に法隆寺大工棟梁を預かる。常一氏は幼少より祖父常吉氏から宮大工の伝統技術を教え込まれ、1934年に法隆寺棟梁となる。20年間にわたった法隆寺昭和大修理で、古代の工人の技量の深さ、工法の巧みさに驚嘆したという。法隆寺金堂、法隆寺三重塔、薬師寺金堂、薬師寺西塔などの復興の棟梁として手腕をふるった。文化財保存技術者、文化功労者、斑鳩町名誉町民。著書に『木のいのち木のこころ(天)』(草思社)『蘇る薬師寺西塔』(共著、草思社)『木に学べ』(小学館)『法隆寺を支えた木』(共著、日本放送出版協会)『斑鳩の匠・宮大工三代』(共著、徳間書店)ほか。

「2010年 『新装版 法隆寺 世界最古の木造建築』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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