女盗賊プーラン 下巻

  • 草思社
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  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794207470

作品紹介・あらすじ

ジャングルの中を音もなく移動する盗賊たちと行動をともにするうち、プーランは初めて人間として扱われる喜びを感じていた。だがそれも長くは続かない。愛する首領ヴィクラムが、彼女の目の前で凶弾に倒れてしまったのだ-。深い悲しみと激しい憎悪を胸に、彼女はみずから盗賊団を率い、彼女を辱めた男たちへの復讐に立ち上がった。警察官を含む二十数人の権力者を射殺し、彼女は反逆の象徴として民衆の英雄となってゆくが…。貧困層から圧倒的な支持を得て、国会議員に当選した元女盗賊プーランが、いまはじめて彼女自身の秘められた生い立ちを語る。

感想・レビュー・書評

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  • 1963年にインドの貧しい家庭で生まれたプーランは、幼い頃から常に精神的な暴力と肉体的な暴力にさらされながら成長する。ひとりの女性の、壮絶な半生を描いたノンフィクション。

    想像を絶するカースト制度の実態が描かれています。綴られているのは否応なく行われる容赦のない虐待と凌辱の日々。人間の尊厳など無いどころか圧し折られ、踏みつけられるような所業の数々。読んでいる先から心がえぐられます。
    カーストの低階層に生まれ、非力な女性であること。それゆえプーランは何度も何度も、言葉に表せないほどの凄惨な目に合います。彼女はそれが理不尽だと分かっていました。おかしいと声に出すことができ、自らの尊厳のために立ち上がる強さがありました。さらに彼女の声を、現在私たちは本という形で手にして知ることが出来ます。しかしその影で、声も出せず、悲惨な運命を受け入れ諦めながら一生を終えた多くのか弱い命があったという事実に気付かされ、また胸が苦しくなります。

    本書は1996年に刊行され、同年にプーランは政界に進出したそうです。彼女の今を知りたくて調べたところ、まさか2001年に凶弾に倒れていたなんて。志半ばだったろうに悲し過ぎる一生です。
    宗教、カースト、慣習――集団に根付いた信念や思想を変えるのは簡単ではありません。経済発展が目ざましいインド。2017年現在は果たしてプーランの望んだ「他者に敬意を払い、人を人として扱う」世の中になっているのでしょうか。

  • 読もうと思って30年近く。偶々除籍本として出会う

  • ヴィクラムが再度撃たれて死亡し、自分もその暗殺者に濡れ衣を着せられて追われる身になった。最終的には自分の生まれた州以外の州で投稿して刑務所に入った。さらに汚職がひどいその刑務所を出て他の州の刑務所に入ったところまでの話である。下層カーストがどのような生活の状態であるかがよく理解できる。わずか20年前の話であるが、実際は現在も変わらないであろう。インドが経済大国になったとしてもこうした身分制度は変わらないであろう。
     カーストについて知るにはもっともわかりやすい本である。

  • ふむ

  • すごい女性、こういう国に生まれないでよかった

  • 1

  •  盗賊団に拉致されたプーランは、盗賊団の首領ヴィクラムに心引かれていく。二人は結婚することでプーランに明るい将来を感じさせるのだった。そんな中、ヴィクラムは師と仰ぐカースト上位のシュリ・ラムの陰謀により彼は落命することになる。復讐を誓うプーランだったが、兄弟の争いからシュリ・ラムは殺される。プーランは生きる目的を失ったまま政府からの追跡を逃れる日々を送るのだが、結局、周囲の説得から政府との交換条件をのみ投降することになる。

     驚くのは文末の解説にプーランの所属するカーストの説明書きである。「土くれと同じ」といわれたプーランのカーストは、実は最下層のカーストではなく、その下に遥か下層まで何千というカーストが存在するというのだ。インドの深淵を垣間見て恐ろしくなる。

  • 運命の悪戯ってこわいと思いました。
    親は選べないし、生まれた国や環境でこんなにも生きるのが大変とは平等って存在しないと強く思いました。

  • 無知は哀しい。“愛情”さえも知らない。そんな事があるなんて考えも及ばなかった。
    人権というモノを知らなければ、平気で踏みにじる。
    刑務所では、プーランは珍獣のように扱われ、刑務所長に入場料を払って見物客が押し寄せた。
    ジャーナリスト気取りが嘘を書き立て、最後には政府までもが約束を守らなかったなかった。
    だから、誰も法律を守らないのだと感じる。それは、すべて“無知”からきているように思う。
    廃止されたはずのカースト制が大きく影響しているのも、女性蔑視も、法律を守らないのも知らない事が多すぎるのだと感じる。
    差別の酷さに驚愕を感じると共に教育の大切さも感じる本でした。

  • 彼女の過酷過ぎる人生に読んでいて息苦しくなった。
    インドの実態、カースト制度の闇を本書で知ることができた。

    過酷な運命と戦い、ようやく刑務所を出て、「虐げられた貧しい人々と、社会的な弱者である女性の権利の向上」を目指す為に政治家になった彼女が暗殺されたという現実に胸が詰まる。

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