神がつくった究極の素粒子 下

  • 草思社
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  • Amazon.co.jp ・本 (357ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794207791

作品紹介・あらすじ

本書の著者はこれまで加速器を駆使して数々の素粒子を見つけてきた。最も素粒子とのつきあいが深い科学者のひとりである。いまはおそらく最後の素粒子を見つけるため、超伝導スーパーコライダーの建設を待っているところだ。その予算獲得のため、著者はいかにしてレーガン大統領を説得したのか?宇宙最大の謎パリティの破れははたして解消されるのか?究極の素粒子は見つかるのか?思いついたその日にすぐさま装置を作り、試行錯誤の末、結果に一喜一憂する研究者の日々、興奮、挫折、そして栄光、これは科学の醍醐味のすべてをつめこんだ快著である。

感想・レビュー・書評

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  • 著者が実験屋なので、理論よりも実際にあった実験や観測、実験装置などの解説に重きを置いている。
    ユーモラスな語り口調が面白くもあり、やや助長気味でもあり(笑)。

  • 実験屋による素粒子発見の歴史物語。


    前回『不思議な量子をあやつる~量子情報科学への招待 (別冊日経サイエンス)』を読んで、物理の世界が懐かしくなって読んでみた。ヒッグス粒子発見のニュースも流れてることだし。。



    理論屋の雑談は結構至る所に見られるが、実験屋のお話は中々見かけない。そういう意味で貴重かも。抽象的な概念を非常に分かりやすく説明しており、実験屋が書くと、というか、レオン・レーダーマンが書くとこうなるのかと驚かされる。

    素粒子物理学は、最小の粒子を求める学問だが、それは古代ギリシャの時代から哲学者によって投げかけられている問いに答えようとする学問だ。本書で、レオン・レーダーマンが、過去から未来に時間移動するデモクリトスと対話するシーンがあるが、そういったシーンを始め、歴史的に有名な物理学者の紹介もすべて、最小の粒子を求めるという観点で一貫して行われており、まさに素粒子物理学の紹介という感じだ。


    個人的には、実験屋もやはり、数式の美しさをよりどころにするんだな、というところがおもしろかった。

  • 無限と有限の架け橋
    この本の冒頭には
    この本を捧げる者へのくだりがない
    又、協力者としての妻に感謝する文面を後書きとすることに恥じてもいる
    たったこれだけのことでレーダーマンという作者が
    はにかみ屋さんで謙虚な人だとわかってホッとさせられるし
    この中身が信頼に値する嘘くさくないものに見えてくる

    レーダーマンが「神の素粒子」と呼ぶビッグス
    そのビッグスを神の手足として超と名打った新約聖書を書いている
    創世記である
    神が完璧な宇宙を成し
    それをチョッピリ歪めることでエネルギーを動かし
    複雑にすることで未知をつくり
    それを体験して成長する世界を造ったとビッグバンを説明している
    簡潔な宇宙の元を求めたアトムは
    水や土や空気や火を経て原子を見付け出し
    ついに素粒子まで分解してたどり着いたけれど
    それも複雑すぎて元としては認めにくい物になった
    それを一つにまとめる場としてヒッグス理論があるがまだ証明されていない

    抽象的な数字や言葉で表せる対称性や一体性の
    美を隠すのが三次元における自然の姿である

    球体は完全な対称性を持っている
    どう転がしてみてもそのもの自体に違いが起こらない
    無限も零も同じように完全だ
    数学の方程式も同様に不変でなければならない
    時間もまったくスキがなく対称である
    物理学で言う強い相互作用と電磁相互作用は対称だし
    弱い相互作用は対称を無視する

    反物質
    宇宙の創生直後から1兆分の1秒後の粒子の平均エネルギーが
    1ララ電子ボルトまで下がったと言われる
    それはフェルミラボの一つもビームが出すエネルギーに相当するのだそうだ
    つまりこのタイムマシーンは宇宙誕生直後の状態まで遡ったとも言える

    クオークの相互作用 グルオン ゲージ理論
    クオークどうしが近付くほど相対的エネルギーは高くなって
    強い相互作用が弱くなる
    つまり互いに自由になるので接触することはない
    反対に離れるほど強くなって分離することができない
    これは電気力とまったく逆の作用となる
    また電荷は一次元で一つの軸を持ち正と負の二つのタイプがあり
    クオークは三次元で三つの軸を持つ
    赤で例えれば赤いクオークは補色の反赤クオークと結び付くと色のない中間子となる
    陽子中にある赤青緑のクオークは混じって無色になる

    物質に対して反物質がある
    マイナス電子とプラス電子がぶつかると相殺されて消えるように
    物質と反物質が出会うと消えてしまう
    もし完全に対称ならばすべて消えてしまうわけだけれど
    幾分物質の方が多かったので我々の宇宙が存在している
    この世は完璧な対称性を少しずらしあった完璧によって姿を現している
    それは完璧をやぶったあるいは隠した弱い相互作用の力による
    「何か」が鏡の対称性(パリティー)を隠したことに沿って
    「反何か」も連鎖して同じように隠れ完璧を保つと言う繰り返しをすることで
    長生きできるようになると言う
    もしそうだとすれば黄金比もこの破れとか隠れに関係しているのかもしれないし
    美もこの隠れん坊によって生まれ出るのだろう
    無秩序を大きな視野で見れば完璧な秩序となるのだろう
    歪みは見掛けだけのことで
    一部分が隠されて消えて見えるだけなのかもしれない
    神がこの偽装工作を期待してつくったのがヒッグス場だとレーダーマンはいう
    ヒッグス場は素粒子に質量を持たせることで光速より遅くさせ
    早さにばらつきを起こさせる
    すると追い越されると同時に左回りに見えたスピンが右回りに変わる

    美は完璧なゼロに近いシンプルなものに対して起こる意識だけれど
    もしもゼロになってしまうと美も隠れてしまう
    ゼロという完璧は無限という舞台裏に控えていることなのだろうか

    ヒッグス場は限定したことによって現れるこの世というステージなのだろうか
    完璧な無限から俳優を引っ張り出して質料をあてがい
    スポットライトを当てるスカウトのことのようだ
    ヒッグス場における粒子は方向性となるスピンを持たずに質料を持っている

    この宇宙が出来て時間の始まる前
    ビッグバン後10―13乗秒までは物理ではなく哲学の世界観でしか語れないらしい
    その後時間と一緒に有限世界が現れてくると
    いよいよ素粒子の量子物理学の出番になる
    この間に神の領域と人間の領域の分かれ目があると考えているようだ
    私流に描くと「無限なる神から人間の領域が包まれるようにして独立する」
    「更に人間は自律へ向かって冒険を始め着々と困難を乗り越えている」となる
    人間の領域も神の領域の中だと言うことをつい忘れてしまいがちだが
    その都度原点に立ち戻る必要がある
    さもないと人間は自分の冒険談に酔ってのぼせ上がってしまう
    解らないことは調べ解るまで答えを保留しておくしかない
    神を知ったかぶりして語るべきではないし根拠もなしに否定もできない
    可能性を確かめながら近付いていく以外にないと思う

    球体はあらゆる方向に対称でバランス状態だからゼロ
    透明になって隠れていてもあらゆる対立する双方を内包している
    少しずらせばたちまち形をなして推進力ともなる
    物であって物でない状態

    ビッグバンがどうして発生したかに付いてインフレーションという答えがある
    ビッグバン以前の宇宙には神の手足であるヒッグス場(エーテル)が満ちている
    ヒッグス場は質量を秘めていて
    そのバランスを少し崩すことでビッグバンを起こした
    その瞬間、質量が爆発的に吹き出したわけだ
    インフレによって素粒子と放射線をつくりだした
    そして膨張と冷却によって安定を迎え三次元宇宙が生まれ出たという筋書きだ

    膨張が止まったままで三次元宇宙を安定させるフラットネスは
    まさにバランスのことだ
    臨界質量を保ち分水嶺の頂に留まることを意味している
    この二度と抜けられない完全な球体に入り込むことは神業でしかない
    又、ビッグバンを繰り返すことも無の点を保つことだから
    やはり神のみぞ可能なこととしか私には思えない

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