中世奇人列伝

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  • 草思社
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  • Amazon.co.jp ・本 (229ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794210944

感想・レビュー・書評

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  • 小説ではありません。史料に基づき、あまり一般に知られていない歴史上の人物が紹介されています。
    出版年を見るとけっこう前(2001年)。この後も史学はどんどん発展しているので、考え方も変わってきているとは思いますが、それはともかく、とても面白かった。

    源頼朝の甥でありながら承久の乱を画策した法印尊長。
    才のある歌人で、且つ天皇(のち上皇)の寵愛を受け政治に深入りした京極為兼。
    元時代の中国に留学し、幽閉されながら現地で絶大な評価を得た雪村友梅。
    南北朝動乱期に"国王"的な存在になった広義門院。
    社会事業家、願阿弥。
    そして「流れ公方」足利義稙。

    約20年の時を経ても、あまり知られていない人ばかりです。
    あの時代に、文化的には先進国であった筈の中国で、大きく評価されている(現代にはあまり残っていないようですが)雪村友梅の生き様と、「もし中世日本から天皇がいなくなったら」というif世界を地で行った広義門院のお話が、特に印象に残りました。

  • 挑発的なタイトルだけど、中身は中世に生きた人の紹介。教科書には載っていない、エネルギッシュな人が居たことを知れて良かった。

  • 先年に新書のヒットこそあったが、そう聞いて下手するとヨーロッパが連想されるほど、地味な(日本)中世史。本書は、その時代に生きた人たちを、かの時代の専門家が取り上げたものである。
    これがなかなか読みやすく、わかりやすく、元の掲載誌では原文を引用していたところを「読者の便をはかるため、一部は思いきって意訳した」という親切設計。マイナージャンル(失礼)の一般書は、こうでなければ。
    主人公たちは以下のとおり。
    法印尊長:後鳥羽上皇側近。承久の乱のブレーン。
    京極為兼:伏見天皇の腹心。持明院統の浮沈に翻弄された名歌人。
    雪村友梅:紆余曲折の末に来日した元朝の高僧の薫陶を受けてかの地への憧憬を募らせ、弱冠十八歳で海を渡るが…ここまでで、起承転結の「起」にすぎないのが凄い。
    広義門院:後伏見上皇(譲位後の婚姻)の女御。当時六十を超えた女院が、「治天の君」となった経緯とは。
    願阿弥:著者いわく「室町のマザー・テレサ」(でも男)。
    足利義植:第10代将軍。私は初名しか記憶していなかった。その後、ここまでいろいろとあったとは。
    歴史好きなら、日本中世史に暗くとも楽しく読めるだろう。おすすめ。

    2018/10/29~11/1読了

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著者プロフィール

今谷 明(いまたに・あきら)
1942年京都生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程単位取得。文学博士。日本中世史専攻。横浜市立大学教授、国際日本文化研究センター教授を経て都留文科大学学長、現在、国際日本文化研究センター名誉教授。主著『室町の王権』(中公新書)、『武家と天皇』(岩波新書)、『象徴天皇の源流』(新人物往来社)、『近江から日本史を読み直す』(講談社現代新書)、『戦国期の室町幕府』(講談社学術文庫)、『日本中世の謎に挑む』(NTT出版)、『象徴天皇の発見』(文春新書)ほか多数。

「2019年 『文庫 中世奇人列伝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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