私の仕事: 国連難民高等弁務官の十年と平和の構築

著者 :
  • 草思社
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  • Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794211705

作品紹介・あらすじ

本書は、著者の六十三歳で国連難民高等弁務官(UNHCR)としてジュネーブに赴任してから十年にわたる難民援助の活動を記録したエッセイ、日記、インタビュー、スピーチを選び、まとめたものである。史上空前の二千二百万人の難民を救済するために、どのような国際協力が行われたのか、そこにはどんな問題が起きたのか、次々と噴出する難問に現場で指揮をとる著者はどう判断し対応したのか。著者の仕事を通じて、本書は国際社会の現実を生き生きと伝えている。

感想・レビュー・書評

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  • 本書は書き下ろしではなく、緒方貞子氏がジュネーブに赴任してから10年にわたる難民援助の活動を記録したエッセイ、日記、インタビュー、スピーチをまとめたものです。なんとBookOffにて$3で売られおり、私はその安さに半ば憤慨するように本書を抱えてレジへ向かいました。

    「女性には男性と違うサイクルがあるの。だから、焦って目標を決めてしまうより、自分のサイクルで生きながら長期戦でかまえたほうがいい。」

    緒方氏のこの言葉にどのようにして触れたのかは忘れてしまいましたが、大いに感動し、長いあいだ、折に触れては思い出してきました。思う存分勉学に勤しみ、非常勤講師と研究生活を続け、フルタイムで働きはじめたのは40歳を過ぎてから。子育てや介護を理由に重職につくチャンスを何度棒に振ったかたちになっても、緒方氏は決して焦らず努力と準備を怠らなかった。目先のチャンスや状況の変化に翻弄されることなく、落ち着いたペースで着実に仕事を続けてこられたそうです。

    そして「2人の子どもは自立し、既に親も看取って、家庭での務めは一段落」した頃に国連難民高等弁務官の打診があり、これを受諾。なんという上品な方でしょう。この泰然自若たる貫禄はいかにして身につけられたのでしょうか。曾祖父に元総理大臣の犬養毅を持ち、外交官や政治家の多い国際的な名門家系に生まれ育った影響が伺える「器」の大きさです。先ほどの、女性の人生を長いスパンで考えるというのは、彼女が国際的にスポットライトを浴びるようになってからご自身の半生を振り返って発したメッセージではなく、その何年も前から大学での教え子の女子学生たちに語っていたものなのです。

    UNHCR在職中に記された「ジュネーブ忙中日記」のめまぐるしさには息を呑むばかりでした。秒刻みのスケジュールに時差を超えた移動が重なり、60代の女性とは思えない身体的なタフさも然ることながら、激動する国際社会の最前線で舞い上がることもひけらかすこともなく、ただ淡々と綴られたこの日記に彼女の人柄をかいま見たような気がいたします。

    巻末には「任せられる裁量の大きさが仕事への動機づけになります。それが自ら問題設定をして取り組む姿勢に繋がります。」と、世界へ出て行く若者たちへの力強いメッセージが綴られています。ぜひご一読下さい。

  • 理想主義に走らず現実を直視し、人道の見地から権力側に要求し、応えてもらい、各国の政府を取り込んで難民を救おうとする姿が見えます。難民を作っているのは人間の悪い本性によるもので、酷いと思うが、同時に難民を救おうとする多くの人たちがいることに慰められます。五千人(当時)のUNHCR職員に感謝。第Ⅱ章が本書の中心だと思います。▼「冷戦後の世界と難民(1992年)」(P118)冷戦の終焉が、新たな国際秩序の樹立をもたらすのではなく、むしろ地域紛争や民族対立が繰り返される不安定な時期を招来させていることを示唆するものと思われる。難民の動向に三つの兆候が見られる。第一は(冷戦の終焉とともに)地域ないし国内紛争が解決に向かい、国外にいた難民の故国への帰還が大幅に進展すること。第二は、長年にわたる米ソ対立によって抑圧されていた民族的対立が国家の崩壊をもたらし、新たな難民の発生を触発すること。第三は、政治不安と貧困から逃れようとする難民や移民が西洋諸国へ大量に移動することである。これらの流れに国際社会がどのように対応できるかが、今後の国際社会の帰趨を制する鍵となろう。・・・しょせん人間の流出の原因となる国々の政治・経済の安定を図る以外の道はないであろう。▼「フツ族の先般難民も保護すべきか」(p172)人間の集団というものはどろどろした恨みを持ち、それは人間の本性から発生するもので、どんなに酷いものか思い知らされた。

  • 田中真紀子外相が更迭されたころ小泉首相が国際政治学者であり国連難民高等弁務官の緒方貞子氏を外務大臣にと推していました(緒方貞子氏はキッパリと断りました)。

    で、その時に初めて緒方貞子氏をTVでみて、このおばあちゃん、なんて気品があって凛とした人なんだろうと思い、ずっと気になっていたのですが、その後、見かけることもなく10年以上が経ちました。
    それで、先日ふとしたことで思い出して何か本を書いていないかなと思って読んだものです。

    結果、なんとすごい逸材が日本にもいたのかと思いました。
    難民救助、人道援助という世界で最も難しい仕事に理想をかかげ、5,000人以上の人を統率して現実の問題をゴリゴリ解決していくリアリストである様子が本日記からうかがえます。

    1927年生まれで、現在87歳ということで、これまでの激務を同じように続けてほしいとはいえませんが、長生きして、色々な言葉を残してほしいです。

    一年前に『共に生きるということ』という本を出版されていることを知り、いま、Amazonでポチりました。

  • 2023年度【国際学部】入学前知トラ「課題図書」推薦作品

    OPAC(附属図書館蔵書検索)リンク
    https://opac.lib.hiroshima-cu.ac.jp/opac/volume/225380?locale=ja&target=l

  • 日本人初の国連難民高等弁務官を務め、その手腕が国際的に高く評価されている緒方貞子。彼女は難民問題にどう取り組んできたのか。当時の日記、インタビュー、スピーチなどをまとめた生の活動記録。【「TRC MARC」の商品解説】

    関西外大図書館OPACのURLはこちら↓
    https://opac1.kansaigaidai.ac.jp/iwjs0015opc/BB40011242

  • カテゴリ:図書館企画展示
    2019年度第5回図書館企画展示
    「追悼展示:緒方貞子氏執筆本等」

    展示中の図書は借りることができますので、どうぞお早めにご来館ください。

    開催期間:2019年11月1日(金) ~ 2019年12月23日(月)
    開催場所:図書館第1ゲート入口すぐ、雑誌閲覧室前の展示スペース

  • 4-7942-1170-8 285p 2002・12・12 3刷

  • 配置場所:摂枚フマニオ
    請求記号:369.38||O
    資料ID:20311487

  • 国連難民高等弁務官事務所の高等弁務官を務めた、緒方貞子さんの日記や、講演内容をまとめた1冊。緒方さんは、まさにグローバルな世界で活躍された代表的な日本人の一人です。また、そのわかりやすく、ノンネイティブのお手本となる英語は尊敬すべきものです。本書は大いに期待した1冊だったのですが、活動記録の寄せ集めという内容で、期待外れでした。緒方さんの日本人に贈るエッセイとかあれば、ぜひ読んでみたいのだけれども。

  • 強い心

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著者プロフィール

国際協力機構(JICA)特別顧問

「2013年 『共に生きるということ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

緒方貞子の作品

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