日本人はなぜいつも「申し訳ない」と思うのか

著者 :
  • 草思社
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (261ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794212665

感想・レビュー・書評

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  • 多少偏った本だとしても、彼女の民話知識の広さには驚かされた。欧米と日本の違いってなんだという、分かったようで分からないもやもやした感覚が一刀両断されたようでとても気持ちがよかった。
    いちばん面白かったのは、日本のホラーと欧米のホラーの違い。これにはナルホド!!としかいいようがなかった。でもやはりここまで白黒つけられると、果たしてこの比較は正当なのかどうか不安になってくる。そこまで違うと、最初からその2つは別物だったんでないか?と思われる。例えば日本のキリスト教文化と欧米のキリスト教文化の比較だったら信憑性があったかも。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「彼女の民話知識の広さには驚かされた。」
      ふ~ん、それだけで読む価値がありそう。。。
      「彼女の民話知識の広さには驚かされた。」
      ふ~ん、それだけで読む価値がありそう。。。
      2012/11/14
  • お味噌汁みたいな一冊。
    日本を「恥の文化」としたベネディクトの主張を250ページ以上使って打ち消していく愛国心に溢れた勇気のある1冊。右翼だの左翼だの中堅だの若手だのよく分からんけど、純粋に日本人であることを誇りに思える良書だと思います。20年も前に書かれている本だけど、我々日本人が世界に誇るアイデンティティとはなにか。それを忘れかけた時にちらと見返してほしい。そんな本。

    ベネディクトの主張を覆す上で、筆者が着目したのが「民話」というのがユニーク。お天道様が見ているとか、道徳の教科書の話とか、確かに親や学校から習う内容は「自業自得」に集約される系の話が多いし、スカッとジャパンとかまさにそれでしょ。悪いことした人間は、当然悪いことが起こる。その文化はれっきとした「罪の文化」であり、治安や犯罪件数の差からもそれが欧米ではなく日本に顕著な文化であると、筆者は主張し返しているが、悉く痛快である。

    ・日本の子どもの訓育は、自分のなかにある内面的強制力によって罪を犯せないようにする。日本の親はそのような、しっかりした罪の意識を持った子を育てているといって間違いない

    ・日本の幽霊話では、自分で自分を裁き、裁き手は常に自分の中にいる(内在的)だが、対して欧米では神(外在的)に裁かれる。それゆえ良心の呵責とかそういったことが現れる民話は欧米には例がない。日本のような自罰型の民話は、日本人の良心を研ぎ澄まし、誰も見ていなくても悪いことをさせないように、犯罪を犯させないようにする意識を植え付ける教育効果を持ち、日本を治安の良い国に作り上げている、重要な日本の文化要素こそが民話である。

  • 本書著者は、「菊と刀」でのベネディクトの主張である「日本は恥の文化、西洋は罪の文化」がよほど気入らないと見える。 ベネディクトの定義では、「恥の文化は、誰にも知られなければ、なにをしても良い」、「罪の文化は、誰も知らなくても罪は罪」ということらしい。したがって、ベネディクトは、日本の文化的モラルは、西洋より低いと主張した。「菊と刀」自体が戦中、戦後の代物なので、プロパガンダの香りがプンプンするものに戦いを挑んでも始まらないと思うのだが、この著者は違う。真っ向から挑みかかり、ついには切って捨てる。特に「忠臣蔵」に対する著者の入れ込みようは鬼気迫る迫力があり、ベネディクトの忠臣蔵に対する評である「主人への義理」をこえる日本人の法遵守精神と正義感を見事に表現する。面白い。

  • ルース ベネディクトは、著書『菊と刀』において、欧米人はキリスト教の影響を受けて「罪の文化」であり、日本人はそれに対応して「恥の文化」であるとと規定しました。

    欧米人は、神様がいつでも見ているという意識があるので、人が誰も見ていない場所で悪いことをした場合でも罪の意識に囚われるが、日本人は、「恥」と言う意識はあっても「罪」という意識は無いので、人が見ていないところでは平気で悪さをしそれに対する良心の呵責はないというのです。

    つまり、日本人は、「自分の行動を他人がどう思うだろうか、ということを恐ろしく気にかけていると同時に、他人に自分の不行跡が知られない時には罪の誘惑に負かされる」とベネディクトはまとめました。

    『菊と刀』を読んだ日本人は、「そうかー。やっぱりそんな日本人だから(すばらしい欧米との)戦争にも負けたんだ」と思い込んでしまったのですが、本書は、民俗学の観点からこのベネディクトの呪縛を解き放った本です。

    ★★★

    結論から言うと、ベネディクトの『菊と刀』は敗戦国である日本を文化的に断罪するために巧妙に練り上げられたプロパガンダの書であり、日本が欧米と比較して犯罪が極端に少ないことから分かるように、実は日本人の方が罪の意識が高く、それは民話などを比較することで証明できるという内容でした。

    とてもおもしろく一気に読めたのですが、内容が多岐にわたるため、本書で示されているエピソードのなかで特に心に残ったものを2つ紹介します。

    ひとつは、「カイゼン」に対するものです。デビッド・コール教授の、

     我々は達成した後は休むことができるゴールを求めがち。トヨタやホンダはゴール自体が常に先へと動く。それが継続的なカイゼンだと思うのですが、我々がまねるのは文化的につらい。

    という見解に対して、日高義樹の、

     競争すること、「1番になること」が大事だから、アメリカ人は強烈な目的意識を持つ。
     だが、この目的意識は同時に「何のためかはっきりしないことはやらない」という態度につながっていく。
     実際、アメリカ人は「何のために」という言葉を実によく口にする。「ただなんとなく」という言葉はこの国の辞書にない。
     ともかく「何のために」がはっきりしたら、そこにたどりつけばいいのであって、経過はただの「時間」にすぎない。(後略)

    を挙げ、筆者は、

     目的=結果意識をもちすぎることにも問題があるが、目的=結果意識をもたなすぎることにも問題がある。しかし、目的よりも経過を大切にする過程重視文化をもつ日本人にとっては、“誠意”をもって“努力”することこそ大事なのだ。

    とその違いをまとめています。私には大変腑に落ちる話でした。

    また、「喧嘩両成敗」が世界の常識ではないという話も面白かったです。

     彼ら(欧米人)のいうことを簡単にまとめると、「喧嘩(争い)は善と悪との戦いであって、喧嘩(争い)が起こるのは必ずどちらかが悪いからだ。たとえば、子供の喧嘩を例にとってみよう。Aがお菓子を持っている。Bがそれを取ろうとする。だから、喧嘩が起こる。Aが善、Bが悪に決まっているじゃないか。親の役目は裁判官としてそれを裁き、悪いほうを罰することだ」となる。

    というのです。これは、タイトルの『日本人はなぜいつも「申し訳ない」と思うのか』にもつながる話で、『欧米人はなぜいつも「謝らない」のか』という理由が分かったような気がしました。

    他にも面白い話が多数あり、これからグローバルな世界で活躍して以降と言う若者に特にお勧めです。
    日本人のアイデンティティに誇りを持てるようになるかもしれません。

  • 日本と欧米の民話を比較して、日本人の心の中に深くインプットされた自責の念について論じた本。
    してはいけないことの違いや、民話で語られている内容及び傾向を引用して、とてもわかりやすく書かれている良書。

  • 終戦直後に米国人のルース・ベネディクトが書いた「菊と刀」。それは日本人とはどのようなものかを書いた本であり、罪よりも恥を重視する「恥の文化」だと述べている。これに対して著者は反論。民俗学者としての立場から、日本の文化のすばらしさを説いている。

    日本人の読む昔話や伝記、それに対してキリスト教圏の人々が読んできたもの、そういったものにも日本人とキリスト教圏での考え方の違いが現れている。
    自責の念、周りへの迷惑を考えること、こういった考え方によって先進国の中でずば抜けての犯罪率の低さを保っているという面もある。

    昨日読んだ「日本の安心はなぜ消えたか」とは意見が反対な部分も多く見られるが、今回読んだ本の方が、すっと胸に入る内容だった。
    日本に生まれて良かったと思えると共に、今後もこういった文化を伝えていきたい、と思う本でした。

  • ルース ベネディクト の「菊と刀」に対する反証の形で、日本人の尊法精神や罪の意識などを説明。民話から読み取れる自罰・自責の精神が犯罪率の低下に役立っていると主張。理解できなくはないが、その精神からこぼれるものは、日本人ではない、と言っているようにも思える。

  • 偏見に満ちた意見では??

  • 恥の文化、違うんじゃね?って話。プロカンダで物だ、って言ってる。ただ、「忠臣蔵」というものが出てくるけど、全く分からないです><。
    amazonのレビュー「あと誰が謝らないって?」って奴、本の中に書いてなかったけかなあ・・・

  • すぐ謝る日本人、絶対に謝らない欧米人。この両者の違いを、文化や民話等を挙げて論じた本。 「欧米人はまず個人があって社会があると考える。日本人はまず社会があって個人があると考える」「欧米人は世界を『善と悪との戦場』と見ている」「欧米人には喧嘩両成敗は理解できない」といった指摘には「なるほどなー」と思いました。 日本人なら「普通すぎて」意識していない「倫理観」「自責の理念」「安全」等がキリスト教文化・欧米文化からはいかに変わったこととして取られるか、が実感できて「なぜ欧米人はあんなにとんがっているのか?」というぼんやりとした日本人的疑問に答えてくれる一冊。「あるある」と納得しながらどんどん読み進められます。 「日本人はなぜいつも『申し訳ない』と思うのか」と一度でも考えたことのある方にはお勧め。

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