狭山事件 ― 石川一雄、四十一年目の真実

著者 :
  • 草思社
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (447ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794213105

作品紹介・あらすじ

狭山事件の真実を白日の下に!一九六三(昭和三十八)年五月一日、埼玉県狭山市で下校途中の女子高校生が誘拐され、その夜、二十万円を要求する脅迫状が自宅に届いた。二日の深夜、四十人態勢で待ち受けていた警察は身代金を受け取りに来た犯人を取り逃がす。四日、被害者の遺体発見。二十三日、石川一雄が別件で逮捕される。このとき彼は二十四歳、被差別部落の出身だった。狭山署では頑強に否認していたが、六月十七日、釈放直後に違法にも再逮捕され、川越署分室に移送、自白に及ぶ。一審、死刑判決。この後一転、二審の第一回公判以降、一貫して無実を主張。ところが、二審では無期懲役。一九七七(昭和五十二)年、最高裁は上告棄却、刑が確定した。一九九四(平成六)年十二月、仮出獄、三十一年七ヵ月ぶりのことだった。石川一雄と同年の鎌田慧は、獄舎の内側にいた石川一雄と、就職し子どもにも恵まれ、ルポライターとして人なみに生きてきた自分とを対比させつつ、深い同情をもって事件の膨大な資料と取り組み、関係者にも長時間取材して、いま、狭山事件の真実を白日の下に曝す。

感想・レビュー・書評

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  • 狭山事件の本2冊目。もう1冊の方が被害者の善枝さん側から事件を検証した本だったのに対し、こちらは被告の石川一雄さん側から事件を綴った一冊。
    石川さんの生い立ちなどにも詳しく触れ、狭山事件だけではなく帝銀事件や下山事件など他の戦後の重大事件のことも載っており、読み応えのある内容でした。
    警察、裁判所、マスコミが一丸となって無知な青年を陥れようとしているのに恐怖を感じた。警察の証拠のでっち上げも杜撰すぎる。自供さえ取っちゃえばそんな適当でいいの…??と愕然とした。これだけ冤罪の証拠がそろっているのにどうして未だに訴えが退けられ続けているのかが謎です。警察とは、裁判所とは、一体何なんだ。そして、石川さんが捕らえられている間にも真犯人は野放しになっていて、のうのうと生きていた…と思うと恐ろしかった。それにしても当事者でもないのに義憤に駆られて暴徒と化す輩はいつの時代にもいるんだなぁ。そういうやつらが一番厄介だと思う。
    事件から月日が経つにつれ関係者はどんどん亡くなっていく。すべてが有耶無耶で終わってしまわないことを願います。

  • (2007.03.02読了)(2006.12.25購入)
    副題「石川一雄、四十一年目の真実」
    250頁ぐらいまでの本は、割と気楽に読み始められるのですが、それ以上の頁数の本を読み始めるには読まざるを得ない理由が必要です。今回の本は、440頁あります。
    読みたいテーマであるとか、読みたい作者であるとか、・・・。今回は作者のほうなのですが、今回は、さらに「狭山事件」下田雄一郎著、と「狭山裁判(上)(下)」野間宏著で助走をつけました。
    同じテーマで既に2種類の本を読んでいるので、概要は既に分かっていますが、鎌田さんの本は、予備知識は必要ありませんでした。他の著作と同様かなり読みやすく、分かりやすい。下田さんの本はちょっと食い足りない感じ、野間さんの本は、裁判記録の引用が多く分かりにくいといったところですが、鎌田さんの本は、読みやすく分かりやすい。

    狭山事件の概要から、石川一雄さんが犯人に仕立て上げられ、嘘の自白をし、一審では死刑の判決を下される。取調官が、自白したら十年で出してやると行った約束を信じて、死刑の判決を意に介していなかった。ところが、刑務所の同僚に、死刑は本当であることを告げられ、一転無罪を主張し始める。
    鎌田さんは、原因を被差別部落民の貧しさと、貧しいがゆえに文字を読み書きする力をつけることが出来なかったことに求めている。
    石川さんは、刑務所で、文字の読み書きを覚えた。それまでは、文字の読み書きはほとんど出来なかった。文字を書く必要があるときは、誰かに書いてもらうか、誰かが書いたものを、意味もよくわからないまま書き写して過ごしてきた。
    従って、狭山事件の脅迫状を書く事は出来なかったわけだが。
    第二審は、石川さんの主張にもかかわらず、同時代の同様の冤罪事件と同様、いったん有罪判決を下したものを無罪になんかしてはくれなかった。判決は、無期懲役となった。野間さんの「狭山裁判」は、この時期に出版されたものです。
    上告したが、1977年に上告を棄却され、「無期懲役」が確定した。
    1994年12月、石川さんは、仮出獄となり、自宅に帰った。逮捕されたのは、1963年5月なので、31年間拘束されていたことになる。けれど、冤罪である事は、認められたわけではない。
    「疑わしきは罰せず」と言われるけれど、1963年ごろまでは、「疑わしきは有罪」と言う形で、済ましてきたようだ。事件がいつまでも解決しないのは、気分が悪いし、警察は何をやっているんだ、と言われるので、さっさと決着をつけてしまいたいのは、分からないわけではないけど、無実の人が罪を着せられて良い訳ではない。
    裁判所は、間違いを認めて、無罪の判決を早急に下すことを望みます。

    著者 鎌田 慧
    1938年 青森県弘前市生まれ
    早稲田大学文学部卒業
    社会問題を追究するルポライター
    『反骨―鈴木東民の生涯』にて1990年度新田次郎賞を受賞
    『六ケ所村の記録』にて1991年度毎日出版文化賞を受賞
    (2007年3月4日・記)

    (「BOOK」データベースより)amazon
    狭山事件の真実を白日の下に!一九六三(昭和三十八)年五月一日、埼玉県狭山市で下校途中の女子高校生が誘拐され、その夜、二十万円を要求する脅迫状が自宅に届いた。二日の深夜、四十人態勢で待ち受けていた警察は身代金を受け取りに来た犯人を取り逃がす。四日、被害者の遺体発見。二十三日、石川一雄が別件で逮捕される。このとき彼は二十四歳、被差別部落の出身だった。狭山署では頑強に否認していたが、六月十七日、釈放直後に違法にも再逮捕され、川越署分室に移送、自白に及ぶ。一審、死刑判決。この後一転、二審の第一回公判以降、一貫して無実を主張。ところが、二審では無期懲役。一九七七(昭和五十二)年、最高裁は上告棄却、刑が確定した。一九九四(平成六)年十二月、仮出獄、三十一年七ヵ月ぶりのことだった。石川一雄と同年の鎌田慧は、獄舎の内側にいた石川一雄と、就職し子どもにも恵まれ、ルポライターとして人なみに生きてきた自分とを対比させつつ、深い同情をもって事件の膨大な資料と取り組み、関係者にも長時間取材して、いま、狭山事件の真実を白日の下に曝す。

  • 1960年代に起きた狭山事件について、冤罪であるという視点で受刑者の石川一雄を綴った本。被差別部落という問題を絡めつつ問題に迫っており、重く読ませる本となっている。

    ただし、著者は後々になってから狭山事件に興味をもったのであり、当時の状況をつぶさに追ったルポにはなっていない。

    真実はどうか知らぬが、警察と裁判について考えさせられる。現代の私達は過去のものとして魔女裁判を笑うが、数百年後に現代を振りかえって笑われない保証はない。

    というよりも、人間はこれまで自分が生きている時点においては、常に正常だと思い込んで異常の中を生きているのではないだろうか?

  • ふむ

  • 警察も人の子なんで、やっつけ仕事の時もあるだろう。あってはならないことだが、あるだろう。吉展ちゃん事件の流れや、いろんな偶然で石川さんが誤解に落ちて自供してしまったというのもあった。
    しかし、裁判所までが警察のやっつけ仕事をかばい続けるのは何なのか。裁判官はあんなエリートなのに、証拠と法よりも大事なものがあるのか。

  • 改めて、読む、読む

  • 全然知らなかった、この事件のこと。知らないことは哀しい。これだけの矛盾を抱えながら、なぜ未だに放置され続けているのだろうか。おかしい。今も昔も。

  • 狭山事件の犯人とされた石川一雄さんへのインタビューなどをもとにしたドキュメンタリーです。

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著者プロフィール

鎌田 慧(かまた さとし)
1938年青森県生まれ。ルポライター。
県立弘前高校卒業後に東京で機械工見習い、印刷工として働いたあと、早稲田大学文学部露文科で学ぶ。30歳からフリーのルポライターとして、労働、公害、原発、沖縄、教育、冤罪などの社会問題を幅広く取材。「『さよなら原発』一千万署名市民の会」「戦争をさせない1000人委員会」「狭山事件の再審を求める市民の会」などの呼びかけ人として市民運動も続けている。
著書は『自動車絶望工場―ある季節工の日記』『去るも地獄 残るも地獄―三池炭鉱労働者の二十年』『日本の原発地帯』『六ケ所村の記録』(1991年度毎日出版文化賞)『ドキュメント 屠場』『大杉榮―自由への疾走』『狭山事件 石川一雄―四一年目の真実』『戦争はさせない―デモと言論の力』ほか多数。

「2016年 『ドキュメント 水平をもとめて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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