技術者たちの敗戦

著者 :
  • 草思社
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本棚登録 : 58
感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (269ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794213365

作品紹介・あらすじ

日本の戦後復興の原動力となった20代〜30代の技術者たちはどのように敗戦を迎え、廃墟から立ち直ったのか。

感想・レビュー・書評

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  • [評価]
    ★★★★☆ 星4つ

    [感想]
    太平洋戦争中に技術開発を行っていた人々の戦後の活躍と苦難を本人と周辺の多くの人へインタビューを重ね、それぞれの実像と虚像が明らかにされている。
    それらから戦後日本の高度成長を支えた要員には戦前、戦中の技術開発が一つの要員であることがよくわかった。
    本の内容は5章6人が紹介されており、航空機、鉄道、造船、電子機器、自動車と多くの分野の技術者とその軌跡が紹介されている。その活躍は今の日本ではほとんど見かけることができない判断力と決断力を備えていることが印象的だった。いわゆる紋切り型の技術者ではない今の日本に不足している技術者を知ることができるのではないだろうか。

  • 技術者たちが、戦時中、そして戦後に何をしていたのかをまとめたノンフィクションです。

    ・三菱零戦設計チームの敗戦 ― 堀越二郎・曾根嘉年の敗戦
    ・新幹線のスタートは爆撃下の疎開先から ― 島秀雄の敗戦
    ・戦犯工場の「ドクター合理化」 ― 真藤恒の敗戦
    ・なぜ日本の「電探」開発は遅れたのか ― 緒形研二の敗戦
    ・翼をもぎとられた戦後 ― 中村良夫の敗戦

    登場する技術者たちは、親や上司の影響もあってか非凡な方々ですが、驚異的なはたらきをみせます。戦時下で資材が手に入りにくく、上層部からはまともな支持を得られない中、目的を達成するために、必死に試行錯誤する姿が書かれます。戦況が悪化する中、そして多くの人命がかかっている中、安全で正確な動作が求められるのは相当なプレッシャーでしょう。

    戦争が技術を急激に進化させるのは何ともやるせない思いですが、技術そのものの進化の仕方は大変興味深かったです。

    著者は他にもノンフィクションを書いているようですので、機会を見つけて読んでみたいと思います。

  • 戦時中からの技術者は、現代の技術者には無い特異な経験を持っている。それは自分が携わったもので人の生死が決まるという、想像を絶する精神状態の中でのものづくりをしてきた、ということ。だから細かいことにもこだわる。妥協を許さない。でもそれが本来の技術者の姿ではなかろうか。その足跡だけは決して途切れさせてはならない。

  • 戦前、戦後を生きた技術者たちの話を綴った一冊。

    個人的には敗戦の中において、彼らがどういう社会背景のもと生き、どういう人生を歩んだかを知ることができる内容ではないかと思う。

  • 性能の僅かな差が勝敗すなわち生死に直結するだけに、兵器開発に関わった技術者達には、徹底した姿勢が備わっていたという。また、敗戦によって何が間違っていたのか、何が問題だったのかを検証した(であろう)事が、戦後の技術大国日本の礎になったところに感銘を受ける。

  • ジブリの映画「風立ちぬ」を観て、戦時下に技術の研究の焦点が殺人・防衛になってしまうことを、技術者たちはどのように捉えていたのだろうか、ということが気になった
    図書館で本書を見かけたので、借りてみた

    石川島播磨重工でジェットエンジンの設計に従事ていた著者による、戦中・戦後の技術者たちのノンフィクション
    【目次】
    第一章 三菱零戦設計チームの敗戦ーー堀越二郎・曾根嘉年の敗戦
    第二章 新幹線のスタートは爆撃下の疎開先からーー島秀雄の敗戦
    第三章 戦犯工場の「ドクター合理化」ーー真藤恒の敗戦
    第四章 なぜ日本の「電探」開発は遅れたのかーー緒方研二の敗戦
    第五章 翼をもぎとられた戦後ーー中村良夫の敗戦
    あとがき
    主要参考文献

    私が知りたかったことはわからなかったし、内容が点の集合で、私にはわかりづらかった
    それでも、考えることはあった
    玉音放送で敗戦を知ること、日本国内にいた一般市民とも、戦線で戦っていた兵隊とも、技術者は異なる感覚だった
    発破をかけられて、殺るか殺られるかを意識して試行錯誤して、懸命に兵器を研究して製造していたのに、一瞬にしてもうやらなくていいし、その仕事の資料は全て処分しろ、以後研究は行ってはいけない、なんて言われたら、現代人なら燃え尽き症候群になってしまう
    それがあっても、技術者たちが、逆に力を蓄えて新たな活路を見出したことが、戦後の高度成長に繋がったのだ
    戦争体験の有無は、人間・社会形成に多大な影響を与えたのだと再確認できる
    零戦が敗戦時には時代遅れのものであったことや、坂井三郎というエースパイロットがいたことを、今回初めて知った
    リニアモーターカーのニュースが先日あったけれど、島秀雄さんは賛成するだろうか
    いちばん身近?なのは、やはり第五章のホンダの話だと思う、中村良夫さんのおばあさんのエピソードが印象に残った
    本編は点の集合で、あとがきになって初めて、線分になった気がした
    今度読むなら、個人伝記のほうが良さそうだ

  • きっかけ: 偉い人の机にあった。
    目的: 偉い人は何読んでんだろう?

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著者プロフィール

前間 孝則(まえま・たかのり)
ノンフィクション作家。1946年生まれ。石川島播磨重工の航空宇宙事業本部技術開発事業部でジェットエンジンの設計に20余年従事。退職後、日本の近現代の産業・技術・文化史の執筆に取り組む。主な著書に『技術者たちの敗戦』『悲劇の発動機「誉」』『戦艦大和誕生』『日本のピアノ100年』(岩野裕一との共著)『満州航空の全貌』(いずれも草思社)、『YS-11』『マン・マシンの昭和伝説』(いずれも講談社)、『弾丸列車』(実業之日本社)、『新幹線を航空機に変えた男たち』『日本の名機をつくったサムライたち』(いずれもさくら舎)、『飛翔への挑戦』『ホンダジェット』(いずれも新潮社)など。

「2020年 『文庫 富嶽 下 幻の超大型米本土爆撃機』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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