複雑な世界、単純な法則 ネットワーク科学の最前線

  • 草思社
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感想 : 71
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  • Amazon.co.jp ・本 (357ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794213853

感想・レビュー・書評

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  • 長く積読にしてしまっていたが読了。
    類書をいろいろ読んだがほとんどここに書いてあった。
    ネットワーク科学はこれから絶対流行るのでもっと良い啓蒙書が出る可能性が高い(SNSを含めたりCOVID-19を含めたり)がかなり良い入門だと思う。

  • 個人的にはネットワーク科学には触れたことが無かったので非常に勉強になった。 スモールワールドの特徴として、裾が広いべき乗則の曲線を表すというのは直感的に当然のような気もするが、無秩序と思われたあらゆるジャンルの複雑系に共通点が見られるとの指摘は非常に斬新。社会・経済・神経系・生化学・生態系などで例が挙げられているが、宇宙の大規模構造やダークマターの分布などにも同様の共通点が見られるような気がし、量子のゆらぎなどに起源があるかもしれないと思うと今後の発見に期待が膨らむ。
    ティッピングポイントの考え方についても興味深い。個々の詳細は全体の結果に大した影響を及ばさないモデルを考えると、相転移や経済、歴史までも共通した何かがあるように思えてしまう。 それこそ物質と反物質の存続の運命を分けた背景や、真空の相転移にも共通しているかもしれない。
    簡単な条件を入れて観察したランダムなプログラムが思いのほか複雑なバリエーションを持つライフゲームの事例は、まさにこのスモールワールドの逆からのアプローチではないかと感じた。最初の生命の誕生も相転移のような要素が絡んでいるからこそ難問なのかもしれない

  • 統計が現実世界を近似する学問であることはよく知られているが、
    本書で語られる範囲のネットワーク科学の目的とするところも同様に、
    現実にある無数の接続からパターンを見出しモデル化し、理論と実在の結合点を探し出す。

    例えばよく聞いた話、6人たどれば世界中の誰にでもたどり着けるというスモールワールド・ネットワーク。
    これを実現するためには、全ノードを互いに接続させる必要はない。

    ハブを必要とする貴族的なネットワークでも、そうでないランダムなネットワークでも、高度にクラスタ化されたネットワークでも、
    遠方へとたどり着くための少数のランダムな長距離リンクさえあれば、スモールワールド・ネットワークは実現できる。

    そしてそのようなネットワークは人の繋がり以外でも自然界に多数存在する。
    脳の細胞で、電力網で、インターネットで、食物連鎖で。
    たとえそうなろうという意図がなくとも、『偶然の科学』により、富めるものはますます富み、多くのノードを従える結節点となり、べき乗則で表現可能なフラクタルなネットワークは自然発生する。

    ではこのネットワークの限界はどこかにあるのだろうか。
    例えば現実の経済においては、富めるものは世代交代するのみで、大多数の貧しいノードはその役割を超えることはできないが、
    貴族的なネットワークモデルにおいては、ハブの接続数に臨界点さえ存在すれば、平等なネットワークへと近づけることはできる。
    例えば感染症の蔓延に対しては、拡大のハブとなる人、場所、移動経路を重点的に検疫できれば、生物災害を未然に防ぐことができる。

    単一の水分子の働きを素粒子レベルで解明したとしても川の流れを理解することはできないように、
    経営者の経験談に感銘し、どれだけその成功の秘訣を聞いたところで、経済を理解することはできない。

    完全には理解不可能な現実の複雑性の中で、わずかでも勝率をあげるため、人は近似というツールを用いて学ぶのだ。

  • まあ、本自体は、悪くないし、ブキャナンの書き口も好きなので良い本。でも、だいたい知ってることなので、今読むと古いかな。

  • カオス・複雑系の理論は単純なエージェントの集まりから現れる新たな性質(創発)についての理解を推し進めてくれるものであった。本書では、さらに一歩進んでエージェントが相互作用をするモデル(スモールワールド)について紹介されている。<BR>
    これらの複雑系ネットワークでもっとも重要なファクターは地域的なネットワーク間を結ぶリンクで、これこそがネットワーク全体の距離を短くし、系全体の振る舞いを規定している。著者は複雑系ネットワークを二種類に分類している。一つはワッツらによる平等主義的なネットワークで、これはエージェント間の結びつきに長距離のランダムリンクを加えた構造になっている。電力の供給網などはこれにあたる。もう一つは貴族主義的なネットワークで、これはハブを中心としたネットワーク構造になっており、勝ち組がより勝つ構造になっている。インターネットのリンクや生体内の酵素などはこうした構造になっており、ハブがダメになるとネットワーク全体も弱くなる。
    ネットワーク全体の強さは、平等主義的か貴族主義的かということに加え、リンクの強さでも規定される。リンクが強い場合はそこが弱点となる(食物連鎖で、一種類の動物しか餌にしない生物は餌が絶滅すると死に絶えてしまうが、何種類も餌にする動物であれば一種類の数が減ると他のものを捕食し、その間に餌も増える)が、弱いリンクが多数張られているネットワークは強く、再構成も迅速だ。

  • 雑誌ネイチャーの編集者が著者だけあって、話のネタは豊富かつ知的好奇心をくすぶるものだった以上に、ところどころに挟まれる著名な科学者、ポワンカレやポッパー、サイモンなどの言葉が秀逸。著者が述べるよう、ネットワーク理論はこれからの可能性をもった学問であり、応用にも期待できる。ただ学者ではないのでは自然界の法則を人間界へと適用する普遍性やネットワーク理論の体系についての説明には欠けていた。高校の時に恩師の先生に自分がすすめて、その恩師が学年にお知らせていたけれども、こんなにいい本だとは思わなかった。

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  • 人、ネット、交通網。
    普段、余り意識しないだけでネットワークというものは身近な所に多く存在している。
    その事をこの本で初めて気付く。そして、自分自身もその中に組み込まれている事も。

    そのネットワークの仕組みを学術的に、そしてエイズや生態系などの実例を通して紹介している。
    ネットワークから創られるスモールワールド。
    ・規則的な世界に何本かのつながりをランダム配置する事で、個々の関係はひどく近いものになる。
    ・ネットワークの中心となる「コネクター」の重要性(このコネクターとつながる事でネットワークの大部分と繋がりをもてる)
    ・すべての要素が同数のリンクをもつ平和的ネットワークとコネクターがリンクの大半を占める貴族的ネットワークの存在
    ・ある一定の数値(ティッピング・ポイント)を超えると凄まじい勢いで広がりを見せる疫病
    ・強い絆と弱い絆の存在によるネットワークの形成とバランス

    今まで全く触れる事のない知識であったのでとても新鮮だった。周辺の情報をまた違う視点で見る事ができそうだ。
    内容的に少し難しい点もあり本も厚い。何度か読み直しが必要になるかもしれない。

  • この本はおもしろいよっ広く感じるこの世界。でも知り合うはずのない有名人もアフリカに住むファーマーも誰だって決して遠い存在ではないことを感じたの。事実ネットワークの世界では24人かいせば誰とでも知り合うことができる☆

  • アトムの演繹では得られない世界の得かたの理論。
    今世紀とくに必要な考え方になるだろう。

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