複雑な世界、単純な法則 ネットワーク科学の最前線

  • 草思社
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  • Amazon.co.jp ・本 (357ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794213853

作品紹介・あらすじ

つい最近、科学者たちは歴史上初めて、世界のさまざまな事象をネットワークの視点から論じる方法を手に入れた。単純とも言えるその根本を理解するだけで、自然科学はもとより、経済学、社会学などのあらゆる分野の難問に、重要なヒントが得られる。それも、たちどころに。いままさに科学に革命を起こしつつあるネットワーク科学の最前線を解説する。

感想・レビュー・書評

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  • 私たちは、配線された。

    同じ論点が繰り返される。それだけ本著に取って重要な軸だという事だろう。お陰でよく分かる。「服従の実験」で有名なスタンレー・ミルグラムを引用した解説が何度も登場する。ミルグラムには他にも重要な論文がある。これが本著のポイントとなる「6次の隔たり」だ。

    ー 世界中の人間は、「知り合いの知り合い」といった関係をたどっていくと、5人の仲介者を経て、6人目で全てがつながる。

    こうしたネットワークの効率性は、普遍的な仕組みでもある。コンピューターネットワークや神経系、企業組織、ニューロン等の接続パターンであり、緊密につながっているがゆえの利点がある。また、そこにはコネクターとして機能する存在があるが、こうしたクラスター同士をつなぐためには、弱い絆も重要である。毎日会うような友達、家族のようなクラスターではなく、それら外部と繋げる役割が重要だ。

    面白い!確かに、個々の分業を繋げる仕組みには「最適性」の答えがあるべきで、世の中のネットワーク構造は、既にそれに近い法則が取られている。脳内のニューロンネットワークも例外ではない。この「最適性」を解説するのに分かりやすい例がある。

    ー 1964年のアメリカにおける電話網等の期間通信システムは、中央集中型のシステムであり、電話ネットワークは極めて脆弱。わずか数箇所の重要な制御中数を攻撃するだけで、ネットワーク全体を機能停止状態に追い込むことができた。この問題を回避するために、バランが考えたのは、分散型ネットワークと呼んだ方式。同様に、マサチューセッツ工科大学のコンピュータ科学者、レナードクラインロック、イギリスの国立物理学研究所の物理学者、ドナルドデイビスもそれぞれ独自に同じような仕組みを考えた。アーパネットと呼ばれ、当初はカルフォルニア大学、ユタ大学のコンピューターで構成されたこれがインターネットの起源である。

    リスク回避と即応性、優先的役割の設定と分散。
    拡散律速凝集法、べナール対流、粒子のランダムウォークのような自然界の原理。個として生まれながら、既にその原理の中にいるという事を自覚し、その意味を手掛かりに、人間とは何かを改めて考える。私はニューロン回路をもつ、一つのネットワークの構成要素である。

  • 今年ベスト。2005と古いが複雑系とネットワーク科学の醍醐味を、6次の隔たり、スモールワールド、神経、ウェブ、自然、生態系、行動科学、感染症、社会資本までたっぷり味わえる。おすすめ。

  • ネットワークのスモールワールド性について分かりやすく述べられていた。全体を部分に分けず、全体の性質を知ると言う科学はこれからの課題であると思うので、ネットワーク理論は良い取っ掛かりになると思う。

  •      -2006.07.27記

    長梅雨もやっと明けて、一気に夏本番。
    早朝、近くの公園の樹々の下をそぞろ歩くと、ひととき蝉時雨に包まれ、不意に異空間に滑り込んだかと思われるほどだ。
    蝉たちのさんざめきは夏の一炊の夢にも似て儚いが、それにしてもこの大合唱の同期現象は造化の奥深さに通じているというものだ。

    4月頃に読んだのだが、マーク.ブキャナンの「複雑な世界、単純な法則-ネットワーク科学の最前線」-草思社刊-に出てきた
    <ホタルのファンタジック.スペクタル>

    「パプア.ニューギニアの熱帯雨林の黄昏時、10メートルほどの高さのマングローブの樹々が150mほどにわたって川沿いに伸びるのをタブローにするかのように、何百万匹ものホタルが樹々の葉の一枚一枚に止まり、2秒に3回のリズムでいっせいに光を明滅させて、そのきらめきの合間には完全な漆黒の闇に包まれる」という。
    なぜホタルたちは同時に光を放つことができるのか。この驚くべき壮観な光景も、造化の不可思議、蝉時雨と同様、同期現象のなせるわざだが、これは我々人間における心臓のペースメーカーにも通じることだそうだ。
    人工ではない心臓のペースメーカーは大静脈と右心房の境目にある洞結節と呼ばれる部分の働きによるらしい。
    この心筋細胞の集まりは、心臓の他の部分にパルスを発信し、これが心臓の収縮を引き起こすもととなる。蝉時雨やホタルのファンタジック.スペクタルと同様、厳密に同期した信号を発生させ、それらの信号が各部位の細胞に伝えられるたびに、心臓の鼓動が生じているということだ。心臓のぺースメーカーたる洞結節に不調が起これば、心拍は乱れ、たちまちに死が訪れることにもなる、という。

    先に紹介した「海馬-脳は疲れない」でも触れられていたが、最近の脳科学の知見においても、知覚の基本的な働きでは、脳内の何百万もの細胞が同期してパルスを発信させることが不可欠であることが明らかとなっているように、これもまた同様の同期現象と捉えうる訳だが、どうやら、自然界には組織化へと向かうなにか一般的な傾向があるようだと、「スモールワールド」をキーワードに最近のネットワーク科学を読み解き、さまざまな視点から紹介してくれているのが、本書「複雑な世界、単純な法則」だ。

  • 小さな傾向が集めると結局は大きなトレンドになったりすることは驚いた。自分が少数派になりたくないをみんながやると、結局は白と黒とが混ざり合わず別々の塊になるという

  • 長く積読にしてしまっていたが読了。
    類書をいろいろ読んだがほとんどここに書いてあった。
    ネットワーク科学はこれから絶対流行るのでもっと良い啓蒙書が出る可能性が高い(SNSを含めたりCOVID-19を含めたり)がかなり良い入門だと思う。

  • 15年前の本なのに色褪せることなく、むしろ、Covid-19やテレワークなどの体験を通じて、さまざまな思いを巡らせることができ、2020年の最後に読んでよかった。
    グラフ理論、また、勉強し直そうかな。

  • 複雑な世界、単純な法則 ネットワーク科学の最前線
    (和書)2010年12月09日 15:32
    2005 草思社 マーク・ブキャナン, 阪本 芳久


    柄谷行人さんの朝日新聞の書評でチェックしていた本です。

    面白い見方だなって思いました。

    様々な領域でそれを見ることができて、物理学の世界観も変わるかもしれないというのも面白かった。

  • 弱い繋がりが世界を繋ぐ、まぁ、さもありなん。という感じ。閉じた濃密な世界だけでなく、物事を解決するには外に出ていかなくては、というのは納得。人は知らないことを知らないのだから。

  • 個人的にはネットワーク科学には触れたことが無かったので非常に勉強になった。 スモールワールドの特徴として、裾が広いべき乗則の曲線を表すというのは直感的に当然のような気もするが、無秩序と思われたあらゆるジャンルの複雑系に共通点が見られるとの指摘は非常に斬新。社会・経済・神経系・生化学・生態系などで例が挙げられているが、宇宙の大規模構造やダークマターの分布などにも同様の共通点が見られるような気がし、量子のゆらぎなどに起源があるかもしれないと思うと今後の発見に期待が膨らむ。
    ティッピングポイントの考え方についても興味深い。個々の詳細は全体の結果に大した影響を及ばさないモデルを考えると、相転移や経済、歴史までも共通した何かがあるように思えてしまう。 それこそ物質と反物質の存続の運命を分けた背景や、真空の相転移にも共通しているかもしれない。
    簡単な条件を入れて観察したランダムなプログラムが思いのほか複雑なバリエーションを持つライフゲームの事例は、まさにこのスモールワールドの逆からのアプローチではないかと感じた。最初の生命の誕生も相転移のような要素が絡んでいるからこそ難問なのかもしれない

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