文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの (下)

  • 草思社
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  • Amazon.co.jp ・本 (436ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794214652

作品紹介・あらすじ

江戸時代の日本では、乱伐により荒廃した森林環境が徳川幕府の長期視点に立つ育林政策によって再生し、持続可能な森林管理が実現された。問題解決に成功した社会と失敗した社会の違いはどこにあるか。現代中国やオーストラリアの惨状を分析しつつ、崩壊の危機を乗り越える道の可能性を探る。歴史において個別の社会で発生した勃興・隆盛・崩壊のパターンは、グローバル化した現代ではまさに全地球規模での危機へと拡大しつつある。資源問題、環境問題、人口問題に政治闘争や経済格差の問題も含んで、崩壊への因子はより複雑化している。だが著者は悲観的ではない。観念論ではなく過去の教訓から学んだきわめて現実的かつ建設的な処方箋を提示する。世界を見る眼が変わる力作だ。

感想・レビュー・書評

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  • ジャレドさんの2作目。
    下巻では、過去の社会で長期的な視点で環境の保護が上手く行った事例を紹介している。日本の江戸時代の森林保護もここに含まれている。ただし、後段で、現代の日本は大量に木材を消費していて、さまざまな国から輸入している。そのため、輸入先の国の環境を破壊している首謀者として挙げられている。

    次に、現代の社会における危機と環境破壊の事例を紹介。とくに、ドミニカとハイチの章は印象的。同じ島の東側と西側に位置する国が、それぞれの政策の違いで環境に大きな差が出ることの実験場のよう。

    森林を伐採し、家畜を飼い、外国から小動物を入れると、その土地が破壊される。もともとの環境にも大きく左右されるとは言うものの、早晩同じような結果となってしまうだろう。

    ただし、文明を崩壊させる環境破壊は、破壊するほう、破壊されることで被害を受ける側のどちらにも正しい主張が見られる。ただ、環境が破壊されれば結局のところ、どちらの人も被害を受けることになる。

    では、この事実を知った私たちは何をすれば良いのか。より影響力のある企業へ圧力をかけるのが良い、とジャレドさんは言ってます。購買拒否であったり政府に環境に配慮することを義務付ける法律や規制を実施するよう働きかけることだ、と。

    過去の文明崩壊を紐解くと、環境破壊が原因であった。でも、当時のその人々は、それが環境を壊すことになるとは考えていなかったことが多い。過去に学ぶ機会があった地域では、教訓を活かして存続できたところもある。でも、それはそこに生活する人々が等しくその被害を受けるような地域、もしくは断固として環境破壊をさせない意志を持った指導者がいた地域であって、今の日本には望むべくも無い。

  • 前著「銃病原菌鉄」でピュリッツァー賞を受賞したダイヤモンド博士の警告の書。上巻から続く。
    オーストラリアはイメージとは異なり非常に脆弱な土壌自然環境を持つ。自然環境の回復、維持へのオーストラリア政府と国民の対処の歩みに苦闘の色が滲む。共産党独裁による強権的な政治思想にもともとの中華思想があいまって、民主主義陣営の我々には全く理解できない中国という国家の来し方行く末はしっかり見ていかないといけないだろう。
    間違った施策による、または乏しい自然環境を気づかずに無計画に浪費してしまったことによる致命的な土地の劣化が、社会、共同体の滅亡にまで至ってしまうという過酷な現実。農業に適した肥沃な土壌が大変に貴重で、天然資源と同じく有限であるということ、そして我々日本人がいかに豊かな森林資源、水資源に恵まれているかに身をつまされる。
    2023年現在、環境問題は温暖化をいかに食い止めるかの議論に集中しているが、地域個々の森林資源、土壌の減退や維持にも今一度注目してみるべきとは思う。
    失敗の原因を解明することで将来成功に導けるかもしれないことに筆者は一縷の希望を抱いているが、中国によるアフリカ開発など今後も問題は山積してくるだろう。また、第三世界の歴史を紐解くとどうしてもヨーロッパ列強の侵略、収奪、先住民の奴隷化と滅亡、そして奴隷としてアフリカから連れてこられた黒人の現地人化、と人類史の暗部がこれでもかと出てきて読んでいてとても辛く、ニヒリズム、ペニシズムに陥りそうにもなる。
    第14、15章は企業 消費者 地元住民 政府の複雑な利害関係 力関係の中で、いかにして環境保全が成されてきたのか、そして今後の可能性について詳しく考察されているが、とにかく細かい!長い!くどい!
    本著が書かれて20年、挙げられている課題も解決に向けて進展してるものもあれば全く進んでいないものもあるし悪化しているものもある。新たに発生してきた課題もある。しかしノヴァハラリが称賛しているように人類は多くの飢餓と疫病を克服し戦争の機会も大きく減じてきたことも事実だ。
    自然環境は地域の人々の共有財産であり、現代のグローバル社会においては全世界の共有財産でもある。現時点での一番の障害は、民主主義陣営と全く価値観が異なり話が全く通じない暴虐と収奪を繰り返す超大国中国とロシアだろう。トランプの出現や孤立主義、ナショナリズムの高まり、社会の対立等も国際秩序を大きく乱す巨大勢力に端を発する。いかに国際社会が団結するか、そして中国やロシアに対し忍耐と戦略をもって人類の方向性を形作っていけるかが決定的に重要だろう。
    巻末に一市民がいかにして環境課題に行動を起こすかが書かれておりそれなりに参考とモチベーションになるかな。

  • 2010初読。
    2020/4再読。
    原書の刊行が’05年なので、本書で度々述べられていた、世界が持続可能な社会への道筋を見つけるか、資源を消費し尽して社会崩壊へ至るかの分かれ目の数十年の、下手すりゃ半分が経過してしまった事になる。中国は形振り構わぬ大量消費社会となり、アメリカを始めとする自国第一主義の風潮が、新型コロナウイルス肺炎のパンデミックの影響で更に広がっているような時期での再読であった。

  • 金大生のための読書案内で展示していた図書です。
    ▼先生の推薦文はこちら
    https://library.kanazawa-u.ac.jp/?page_id=18348

    ▼金沢大学附属図書館の所蔵情報
    http://www1.lib.kanazawa-u.ac.jp/recordID/catalog.bib/BA74867096

  • 現代世界が直面する深刻な環境問題として12の問題が挙げられている。天然資源の破壊、大気の汚染、エネルギー問題、生物の多様性、土壌の汚染など

  • 下巻では、ニューギニア高地とティコピア島のボトムアップ方式と江戸時代のトップダウン方式を上げ、どのように崩壊を回避したかを探る。そして、現代のルワンダ、ドミニカ共和国とハイチ、中国、オーストラリアから今なお進行する崩壊の予兆について。最後は、過去と現在から見えてきた四つの失敗、予期できない、感知出来ない、試みない、成功しないがある。主には環境についてだが、文明に限らず、自分たち個人にも当てはまると思う。色々な要因が絡み合い、早期解決は困難だが、未来の、子供たちのために出来ることをすべきだと感じた。

  • 内容は衝撃的だった。環境経済学を勉強し始めたのもこの本が影響している。

  • 前半は滅亡した文明史であり、退屈。
    後半は現代史であり、興味深い。人口圧力が環境破壊、ひいては、虐殺を招く要因のひとつなど。

    ジャニス 集団思考 ケネディ大統領が学んだもの

  • 歴史
    社会

  • 上巻では主に過去文明の崩壊を解説していたが、下巻では過去の成功した環境対策と近現代の環境破壊の結果として生まれた悲劇や国家、企業の環境対策について多く触れていた。
    特に国家、企業の環境対策に関しては自分も無関係ではないから、特に関心をもって読めた。
    [more]
    人間は楽観的に捉えやすく、長期的な視点で考える事が難しいという事がよくわかる内容だった。
    特に日本では漁業に関しては多く影響を受けるだろうから、当事者出あると思うので今後も注目しておきたいと思う。

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著者プロフィール

1937年生まれ。カリフォルニア大学ロサンゼルス校。専門は進化生物学、生理学、生物地理学。1961年にケンブリッジ大学でPh.D.取得。著書に『銃・病原菌・鉄:一万三〇〇〇年にわたる人類史の謎』でピュリッツァー賞。『文明崩壊:滅亡と存続の命運をわけるもの』(以上、草思社)など著書多数。

「2018年 『歴史は実験できるのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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