- Amazon.co.jp ・本 (209ページ)
- / ISBN・EAN: 9784794214690
感想・レビュー・書評
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人生を深く考えさせられる本。この本の中に悟りのヒントがあるとか、仏教思想の説明を試みという狙いはなく、シッダールタその人の人生、ストーリーである。大昔、学研の漫画でブッダを読んだ時と同じストーリーを辿る。懐かしい感じがした。
バラモンは皆、様々な形で人生の意味や宇宙の成り立ちの解読を試みようとしており、科学という概念よりも言語や即物の連関でそれを示そうとした。認知革命の神話、拠り所を探ろうとしたという事だ。各々に体得した思想を披露しながら、切磋琢磨し、世尊を目指す。思想の競争社会、思想至上主義という雰囲気だろう、その中で名を残したのがシッダールタだ。その時代で一番、しっくりくる解説ができる解脱者がいるぞ、と有名になる。
ブラフマンとアートマンを自分の身体の内奥から、想像してみるだけで、この広い宇宙の一部としての自分自身を改めて感じる事ができる。そんな読書体験だった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
釈迦が生きた時代に、釈迦ではないジッダールタという聖人がもう一人存在した、という物語。
主人公はそのもう一人のジッダールタであり、子供の頃はバラモンの子供として異才を放つほどのオーラを放ちながら、ひたすら「知ることを足る」ために沙門に入って辺境の人生をたどる。
ヘッセというヨーロッパ人が書いているからだろうか。修行僧から商人となり金を持って女にハマり、最後は渡し守になるなど、とにかく「本当に真理を追求しているのか?」と思うような人生。ただしその先に、人として生きること、今を生きることが真理である、という叡智にたどりつく。
ガンガーに祈りをこめて答えを求めたり、万物流転の考え方や解脱の意味など、インドの宗教観は非常にうまく書かれていた。
生きることは今を生きることであり、全てを受け入れ、許すことで叡智を得る。厳しい修行をしないとたどり着けないわけではない、というメッセージを、私はこの本から読み取った。 -
内容はとてもいいのに翻訳がすごくわかりづらい。もったいない。
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車輪の下などで有名なヘッセ中期の作。
厳密にはヘッセが仏教に影響を受けた小説で、
主人公は、釈迦と同じ名前のシッダールタ。
彼が司祭である父の元を去り、
悟りに至るまでの生涯を詩的に描いている。
内容は仏教的ではありますが、
古い逸話や昔話に出てきそうな話が散りばめられていて、
それほど難しい小説ではないです。
草思社版は、2005年に新訳されたものですが、
訳が非常に読み易く、おすすめです。
[1922年、ドイツ、209P]