文庫 砂漠の女ディリー (草思社文庫)

  • 79人登録
  • 4.18評価
    • (8)
    • (10)
    • (4)
    • (0)
    • (0)
  • 8レビュー
制作 : 武者圭子 
  • 草思社 (2011年4月12日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794218179

文庫 砂漠の女ディリー (草思社文庫)の感想・レビュー・書評

  • ソマリアの砂漠で遊牧民の娘として
    生まれたワリス
    ある日父から、遊牧民の生活に欠かせない
    ラクダと交換という条件で、老人との結婚をするようにと
    父に言われるが、母の手助けもあり砂漠を
    走り親戚を転々とするうちに、イギリスへ駐在する
    ソマリア大使のメイドとして、イギリスへ渡る。

    ひょんなことから、写真家の目に留まり
    モデルになるチャンスが巡ってきた。
    しかしワリスには、パスポート問題、英語の壁など
    様々な問題が立ちはばかる。

    遊牧民から有名ファッション雑誌で活躍する
    スーパーモデルへ転身したワリスには
    モデルとしての問題より、重大で繊細な問題を抱えている。
    アフリカなどで行われている割礼。
    幼い女の子は、割礼をどんなものか知らず
    大人に近づくための儀式として心待ちしている。
    ワリス自身も、姉が割礼したことに憧れ母に
    ねだり幼い頃に割礼を受けている。
    不衛生な環境で、麻酔も無く割礼を何人もの
    女の子にしている女性が行うため
    割礼を受けたことで、命を落とす女の子たちが大勢いる。
    そして受けたことで、排泄や月経の時には激痛が
    出産では苦しみなくなる女性もいる。

    ワリス、割礼という文化廃絶する運動を行っているが
    アフリカ、そして割礼を受けさせた両親を忌み嫌って
    いるわけではなく愛していると言う。
    割礼を受けさせた両親は、ワリスのためを思っての行動であるがその背景には、無知であること、宗教への妄信
    があるとワリスは指摘する。

    割礼は、日本では行われていない上に
    その様な事をまだ行われている知る機会がなく
    ワリスの事を知らない時は、どのように行われているのか知らなかった。
    行うことで、大勢の女性が一生苦しんで生きていることも。
    日本では、できることは無いのかもしれないけれど
    アフリカではこのような文化が今も行われている事が
    知れて良かった。
    それにしても、ワリスは本当に強い女性。

  • 砂漠の真ん中に家族と暮らす少女ワリスが家を抜け出し紆余曲折を経てスーパーモデルにまで登りつめる話。

    冒頭の砂漠のシーンを見て「世界の果ての通学路」を思い出してしまった。
    あの映画を見た時は、砂漠に住む兄弟が朝水を汲みに行き、洗濯をし、学校までの果てしない道のりを・・・走る!
    走って通学するなんて、なんて元気な兄弟なんだろうと思っていたけど、砂漠の女ディリーを読んだらそういう事ではなかったのか、と衝撃を受けた。

    わずかな燃料だけで、恐ろしく逞しく、生きるための活動をしている砂漠の人々の、都会の人々とは比べ物にならないその研ぎ澄まされた強さに圧倒された。
    そんな人たちがいるとは思わなかった。
    TVでも映画でも砂漠で暮らす人達は何度も見たことがあったけれど、切り取られたワンシーン、と思って見ていたので、文章で読み、毎日の暮らしを順を追って自分で追体験するのとは全然違う!
    久しぶりに、本て素敵だ!!と思った。

    砂漠に住む人たちの日常生活や、風俗や、物の考え方がすごく良くわかる。
    それにしてもワリス、強気すぎてハラハラした。
    でも、私は一番強く力もある!と自信を持って言えるのが羨ましいなと思った。強くて、カッコいい。

    みんなに読んでほしいと思うくらい良かった。

  • 映画で見た時より、ソマリアの貧しさがよく伝わりました。
    ただちょっと長いので、映画の方をおすすめします。

  •  女子割礼。FGM(女性器切除)を受けたワリスの物語。
     この主人公のワリスも、スワドとは異なるが、たくましい。

     彼女の場合は……家族の元に居た頃は、スワドよりも人らしく暮らしていたように思う。
     ソマリアで遊牧民に生まれ、自然の中で暮らし、女性であるが故に女子割礼をしなければ結婚も出来ない(もちろん結婚もしない女性は論外)そんな慣習の中で育ち、ごく自然に女子割礼を行う。
     ここでは書かないけれど、女子割礼は本当に恐ろしい。

     しかし、ワリスは何を受けても損なわれていないと思った。ロンドンに出てモデルとして脚光を浴び、結婚をする。そんな彼女のしたたかさ、ずるさ、たくましさは、人として育てられたからなのか。写真の笑顔はとても美しい。
     いやほんとにもう、基本的な強さのある人はすごい。

  • キレイな表紙に惹かれ、タイトルも面白そうだったので読んでみた。女子割礼の伝統について初めて知って驚いた。また、この伝統が過去のものでなく、現在でも毎年200万人もこの犠牲になっているという事実にも驚いた。しかもそれは広くアフリカ28カ国で行われており、現在ではヨーロッパやアメリカに移住したアフリカ人が移住先でもこの伝統を守っているため、むしろ広まる傾向にあるらしい。なぜ、命を奪うような恐ろしい伝統が始まり、広がって、そしてそれが現在まで続いているのか?娘に割礼を受けさせようとする親は「宗教上の権利」つまり、イスラム教の教えを盾にするが、コーランにはこのような教えはないとのこと。「世界は狭い」と言われているけど、すごく遠い世界に思えた。
    ワリス・ディリーは強く美しかった。

  • ソマリアの遊牧民の少女が老人と結婚させられそうになり最愛の母親を残して家出し、砂漠をあてもなく必死にさまよい、ひとかたならぬ苦労の末にモデルとして自立しアメリカで生活を始めるまでを描いたワリス・ディリーの自伝。現在は国連の特別大使として、FMG(女性器切除/女子割礼)の廃絶に力を尽くしているワリスは本当に綺麗な女性です。世界的ベストセラーで映画化もされている本。面白かったという表現が適切かどうかわかりませんが、集中してあっという間に読了。すごいのひとこと。

  • 女性器切除(FGM)。それが行われている場面では顔を歪めずにはいられなかった。またこのおぞましい経験をついに語り出したワリスの勇気には尊敬の意を示したい。アフリカにいるまだ小さな子供たちに、このFGMのが本当は何をすることなのか、知られていないのが不思議で、恐ろしく感じる。子供たちは大人の儀式を楽しみに待ち望んでいる。またワリスのシンデレラストーリーに関しては、チャンスを逃さない態度がすごい。きっとこれが人生を成功させる鍵なのだろう。時間を気にしないアフリカの暮らし。想像するとどこか伸び伸びとした気持ちになれる。

  • 「人生の嵐を乗りきって,日の光を楽しみ,暴風雨のなかにあってもたおれずにいられるかどうか。それはひとえに,意志の強さにかかっているのだと,わたしもこれまでの人生で学んできた。」
    「だれかのショーのステージに立つために,脚の形を治していたら,今頃わたしは自分で自分が許せなかったに違いない。だれかのつくった洋服を,少しばかりきれいに見せるために脚の骨を折るなんて。いまでは,自分の脚に誇りがもてる。この脚にはわたしのかこがあるから。過去の生活の遺産だから。わたしはこのO脚で,何千キロもの砂漠をわたってきた。波のように揺れる歩き方も,アフリカの女に特有のもの。これらが,みんな,わたしがどこから来たかを物語っている。」
    「毎年多くの少女に割礼が行われつづけているのは,無知と妄信のため以外のなにものでもない。性器切除にともなう痛みと苦しみ,そしてそれによって奪われる生命を考えたら,この慣習を止めるべきなのはだれの目にも明らかなはずだ。」

    ソマリアの遊牧民の少女が,老人との結婚を強いられ,夜の砂漠へ逃げ出す。ライオンに遭遇しながらも,生きながらえた彼女は,やがてロンドンへ行き,スーパーモデルになる。その途上には,ロンドンでのメイド生活,言葉の問題,パスポートの問題,偽装結婚などの問題が山積みだった・・・。
    ただ,それだけならば,「わたしは自分の行く先に,なにかいいことが待っているに違いないと信じていた。その希望をつなぎながら,がんばってきたのだ。なにかすばらしいチャンスが訪れることは確信していたから,毎日,自分に問いかけていた。チャンスはいつ訪れるのだろう?今日だろうか,明日だろうか?どこへ行ったらチャンスに出会えるのかしら?何をしたらいいのかしら?」と考えていた少女のシンデレラストーリーに過ぎない。しかし,この本は自らが,慣習による女性性器切除(FGM)の被害者であること,アフリカだけでなく,欧米のアフリカ人社会でも,現在毎年200万人もの少女がFGMを受けていることを世に知らしめ,その廃絶を訴えるという点により,単なる成功譚とは一線を画する。

    以下の引用は,少しグロテスクな表現を含みます。
    「女性性器切除(FGM)は,アフリカ大陸28カ国で広く行われている。国連の推定では,過去に切除を受けた女性は13億人。毎年,さらにすくなくとも200万人が犠牲になる。日に6000人ということだ。切除は普通,助産婦か村の女性によって,きわめて原始的な方法で行われる。麻酔は使わない。切除器具としてはカミソリ,ナイフ,鋏,割れたガラス,尖った石など,なんでも手近にあるものが用いられる。歯が使われることもあるらしい。損傷の程度はその部族の慣習にのっとって,どの部分が切除されるかによって異なる。もっとも,軽いのは,クリトリスのみ切除される場合で,一生,性的な快感とは無関係に暮らすことになるが,体への負担は軽くてすむ。反対に,もっとも重いのは,外性器をすべてそぎ取ったあと,そこを縫合してしまう方法である。そしてこの方法が,ソマリアでは八十パーセントの女性に行われている。わたしの場合もそうだった。
     その結果,おこる合併症はさまざまだ。ショックを起こす可能性もあるし,感染症の危険もある。尿道や肛門の損傷,破傷風,膀胱炎,敗血症,HIV,B型肝炎で命を落とすかもしれない。長期的には,慢性化したり,再発を繰りかえしたりする泌尿器や骨盤の感染症のために,不妊症になったり,外陰部周辺の嚢腫や膿腫,激しい痛みをともなう神経腫に苦しめられる。放っておけば排尿困難や月経困難は次第にひどくなり,経穴が腹部にたまってしまうこともある。やがては体が麻痺したり,うつ病になったりして,死ぬことにもなるのだ。」「じつは女子割礼は,減るどころか,むしろさかんに行われるようになっている。多くのアフリカ人がアメリカやヨーロッパに移住して,悪しき慣習も一緒に持ち込んでいるからだ。」「アメリカ疾病対策センターの試算によると,ニューヨーク州では約2万7千人の女性たちが性器切除を受けたか,あるいは受ける途上にあると考えられている。」「娘に割礼を受けさせようとする親は,「宗教上の権利」を盾にしてくる。」
    「この慣習がアフリカのイスラム諸国の間で広く行われているために,多くの人は,コーランにそう書いてあるのだと信じている。だがそれは違う。コーランにも聖書にも,神を喜ばせるために女性の体を切りなさいなどとは一言も書かれていない。」

全8件中 1 - 8件を表示

文庫 砂漠の女ディリー (草思社文庫)を本棚に「読み終わった」で登録しているひと

文庫 砂漠の女ディリー (草思社文庫)を本棚に「積読」で登録しているひと

文庫 砂漠の女ディリー (草思社文庫)の作品紹介

遊牧民の少女ワリス・ディリーは、夜の砂漠へ逃げ出した。老人と結婚するなんて嫌。自分の人生を生きるため、砂漠の中をひた走る。やがて運命に導かれるようにロンドンへ。写真家の目に止まり、スーパーモデルへの階段を駆け上がる。だが華やかな成功の裏で、ある秘密が彼女を苦しめていた-。衝撃的な女子割礼の事実を公表し、世界的なベストセラーとなった話題作。映画『デザート・フラワー』の原作。

文庫 砂漠の女ディリー (草思社文庫)はこんな本です

ツイートする