機械より人間らしくなれるか?: AIとの対話が、人間でいることの意味を教えてくれる

  • 草思社
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感想 : 50
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  • Amazon.co.jp ・本 (413ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794219008

感想・レビュー・書評

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  • 「機械には思考ができるか」というテーマで、主にチューリングテストのサクラ役の経験をもとに、チャット・チェス・情報量(圧縮技術)の話題を織り交ぜながら語られている。
    人間らしさを獲得しようとするAI技術から、逆にどのような人間らしさが真似しにくいかを探ることで「人間らしさ」の本質を示そうとしている。
    勿論、これは本当の「人間らしさ」は機械には真似できないなにかであるという前提に基づいた議論である。
    AI技術が発達し人間に近づいていくことで人間の仕事や地球の支配者としてのアイデンティティが失われると危惧する人たちが多くいる中で、著者は逆に、AI技術が発達し限りなく人間に近づいてもなお真似できない「人間らしさ」が残るはずだと考え、そうしたときになってはじめて人間が純粋に「人間らしさ」だけとなると主張する。

    ところで、途中で紹介されていたディベートゲームは非常に面白そうだし教育にも良さそうだ。

  • コンピューターと人間を、それとわからぬよう対話させ、“どちらが人間か”を判断するチューリングテスト。
    そこに人間として参加することになった著者の、「コンピューターに負けないための」作戦立案にいたる諸過程。
    いわば進軍記録です。
    「人間らしい」コンピューターはどう振る舞うのか?
    何故人間はそう振る舞わせるのか?
    突き詰めていけば、コミュニケーションとは自己と様々な他者間の認識と伝達なのだろう。

    いかんせん情報量が多すぎて、一回読んだだけでは頭の中で整理しきれていないのがくやしい。

  • チューリングテスト

  • 2012 10/20読了。筑波大学図書館情報学図書館で借りた。
    テキストベースでの会話(チャット)だけで人かAIかを判定するチューリング・テストのコンテスト、ローブナー賞に、サクラの人間として参加した著者が、もっとも「人間らしい」と判断された「人間」に与えられる賞を獲得すべく、「人間らしさとは何か」を模索した過程と、コンテストの顛末を記した本。
    実際にAIと比べて「人間らしくない」と判断されてしまう人間参加者も毎年いるとのことで、普通はたまたまコンテスト開催時に同時開催されている(というかメインの)学会参加者がやることが多いサクラを、著者は本気で勝ち抜こうと望む。
    そうしていかに「人間らしい」と判断してもらうかを考えていくと、機械でできることの広がりによって人間らしさの捉え方が絶えず変わってきたことが見えてくる・・・。

    筋もテーマも大変おもしろいんだが、面白すぎるせいかしばしば、本筋からどんどん脱線していって、かつそれが主軸に戻っているんだかいないんだかを見失うことがある。いささか冗長気味というか。それが人間らしさか?
    結局、著者がたどり着いた結論は「相手の話に割り込む」とか「同時に(相手の応答を待たずに)文字を入力する」という戦術で、さてそれでどうなるかは・・・読んでのお楽しみか。
    ダイジェスト版があればもっとわかりやすくなったかも。
    最後の方のエントロピーのあたりは、脱線だけどかなり面白かったので、そこはまた別に一本書き上げてもいいのではないだろうか。

  • AIの性能を評価する「チューリングテスト」というものがあります。これは、テスターがAIと、サクラの人間とそれぞれテキストチャットをして、どちらが人間か?と聞き、AIにどれだけ票が入るか?というものです。
    この大会はあくまでAIの性能評価であり、サクラの人間側は「自然に会話すればいいから」と言われるのですが 笑、
    この作者は「何としてでもAIよりも俺との対話のほうが人間らしいと認めさせてやる!」という野望のもとに 笑、
     人間らしい会話とは何か?
     どうすればAIには出せない会話ができるのか?
    を徹底的に調べ、対策を練っていきます。

    人間らしい会話とは何か?今のAI開発の最前線はどうなっているのか?など、興味がある人にはきっと楽しく読めるはず。
    (文系の僕でも楽しく読めました)

  • 内容の本質とは全く関係ないが、気に入った「法則」

    「アンディとビルの法則」 
    アンディが与えしもの、ビルが奪い去れリ
    Office 2007 on Windows Vista vs Office 2000 on Windows 2000   12倍のメモリーと3倍の処理スピードが要求されるが、実行スレッド数は直前のバージョンの二倍足らずである。

    哲学ネタのところがあまり整理されていないのが、少々キズですが、全体的にチューリングテストの話から、これだけ話を広げられるのには感心。 本当はもう少しじっくりと楽しみたかった本ですが、図書館返却のため断念。

  • ルーティーンに陥ったときから、その仕事は機械に奪われている・・・・

  •  イギリスの数学者アラン・チューリングが提唱した「チューリングテスト」という実験があります。これはコンピュータに知能があるかどうかを判定するためのテストで,審判役の人間が姿の見えない2人(片方がコンピュータで,片方が本物の人間)とそれぞれ5分ずつ会話し,どちらが人間だと思うかを会話から判断するというもの。このテストを行って,審判役の30%をだませる(=人間だと思い込ませることができる)コンピュータは,人間と同じような知能があると言って差し支えないとチューリングは言っています。
     チューリングがこのテストを考えた1950年には,コンピュータはまだ人間と会話ができるようなものではありませんでしたが,今では人間とチャットで会話するプログラムはさほど珍しくありません(精度はともかくとして)。コンピュータにチューリングテストを受けさせて,最も「人間らしい」とされた機械に賞金を出す「ローブナー賞」という大会が毎年開催されるようにもなりました。本書は,このローブナー賞に挑戦した著者ブライアン・クリスチャンの記録なのですが,面白いのは,この人はコンピュータを開発して挑戦したのではなく,コンピュータと同じく姿を隠して審判役と会話する本物の人間の方(「サクラ」と呼ばれます)として参加し,会話だけで自分を人間だと信じさせ,コンピュータを負かして「最も人間らしい人間賞」を獲得しようとするのです。
     本書の面白さは,チャットだけで自分が人間であると信じさせるためにどんなテクニックを使ったかということではなく,「人間らしい」とはどういうことなのかということを真剣に考察していることです。著者が参加した大会の前年に「最も人間らしい人間賞」を受賞した人は,常にイライラして怒りっぽい態度で会話していたそうですが,それが人間らしさだとしたらあまりに悲しいことです。
     本書で著者が繰り返し述べているのは,機械が人間に近づいているということよりも,人間が機械に近づいてしまっているということです。仕事はルーチン化し,カスタマーサービスの電話応対は完全にマニュアル化され,チェスは定跡から出られなくなり,ナンパのような話術でさえマニュアルができる始末。このような状況を「メソッド化」と呼んでいますが,このメソッド化こそが人間を機械と同様にしている,と著者は言います。そして,メソッド化された仕事を得意としているのがまさにコンピュータであって,人間の仕事はコンピュータにとって変わられています。
     したがって,この逆をいくのが「人間らしい」ということにならないか,というのが著者の意見です。その時,その場所で,その相手としかできない会話こそが,「人間らしい会話」ということになるのです。これは会話に限ったことではなく,人生全般について言えることで,自分の人生をルーチンワークに落とし込むのではなく,いつも何か違うことを求めて活動し続けることが「人間らしい生き方」と言える,というのが著者が最も訴えたかったことのようです。
     途中,冗長に感じる所があったり(終盤の圧縮の話は正直退屈でした),ローブナー賞の大会当日のことはほとんど書いていなかったりと,ちょっと残念に感じる点もありましたが,著者の主張には大いに共感しました。著者は哲学と詩とコンピュータサイエンスの専門家なので,コンピュータを過大にも過小にも評価していないところに好感を持ちました。

  • P377
    ローブナー賞とは、コンピュータがどれだけ知的であるかを測定するために、審判員がコンピュータと人間(サクラ役)の両方とチャットをして、どちらが本物の人間であるかを判定するチューリングテストを利用して、どのコンピュータ(チャットボット)が最も人間らしいかを審査するコンテストだ。最も人間らしいと判断されたチャットボットには《最も人間らしいコンピュータ》賞が贈られる。ところが、このコンテストには別の賞が用意されている。それがサクラ役を務める人間のなかで最も人間らしいと判断された人間に贈られる《最も人間らしい人間》賞である。ほとんどだれにも見向きもされない、ニュースで取り上げることもまずないこの賞に目を付けたのが本書の著者ブライアン・クリスチャンである。四人いるサクラ役のなかで《最も人間らしい人間》賞を勝ち取るには、さらにはコンピュータよりも人間らしいと判断されるためにはどうすればいいのか。それが本書のテーマとなっている。

    目次
    プロローグ
    第1章 《最も人間らしい人間》賞への挑戦
    第2章 ボットにアイデンティティはあるのか
    第3章 「自分」とは魂のこと?
    第4章 ロボットは人間の仕事をどう奪う?
    第5章 定跡が人をボットにする?
    第6章 エキスパートは人間らしくない?
    第7章 言葉を発する一瞬のタイミング
    第8章 会話を盛り上げる理論と実践
    第9章 人間は相手の影響を受けずにいられない
    第10章 独創性を定量化する方法
    第11章 最も人間らしい人間
    エピローグ ガラスの食器の得も言われぬ美しさ

  • チューリングテストで人間と分かってもらうにはどうすれば良いか?というテーマを軸に様々な分野の話がつながって行くのが面白い(ごちゃごちゃした感じはあるけど)

著者プロフィール

ブライアン・クリスチャン(Brian Christian)
ブラウン大学でコンピュータサイエンスと哲学の二重学位を、ワシントン大学で詩の美術学修士を取得。文学作品と科学ジャーナリズム作品を執筆している。

「2014年 『文庫 機械より人間らしくなれるか?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ブライアン・クリスチャンの作品

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