目撃者

  • 23人登録
  • 3.75評価
    • (0)
    • (3)
    • (1)
    • (0)
    • (0)
  • 6レビュー
制作 : Ernst Weiss  瀬野 文教 
  • 草思社 (2013年5月16日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (335ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794219763

目撃者の感想・レビュー・書評

並び替え:

表示形式:

表示件数:

  • エルンスト・ヴァイスは、カフカやシュテファン・ツヴァイクと交流があった作家だそうです。

    草思社のPR
    「第一次世界大戦後のヨーロッパに、すさまじい変動とはかりがたい苦しみをもたらした稀有な人間たち、その中には「あの男」もいた。
    運命は私にその男の人生に一役買うことを命じたのだ。……まずは一九一八年十月末から十一月はじめのあの日までの私の人生を、手短かに述べることにしよう。(本書より)
    第一次大戦に参戦し失明状態に陥っていた若者「A.H.」を治療し、その男の中に眠る全能感を呼び醒ました医師の独白――という形式で綴られた異色の小説。第二次世界大戦へとひた走る危機の時代を、独裁者誕生の瞬間に立ちあった医師の視点で鮮やかに描き出す。 」

  • ユダヤ人亡命作家が1938年に書いた、生のヒトラーを捉えた遺作。

    本書の最大の特徴は、ヒトラーの身に起こった歴史的事実をもとに、ヒトラーが政権にある時に書かれたということに尽きる。
    その事実とは以下の通り。
    第一次大戦中、ヒトラーは戦闘のなかでヒステリー性の失明と不眠を患い野戦病院に搬送された。催眠療法で失明は回復したが、それだけでなく、その時担当した医師は彼を社会復帰させるために「自分はドイツを救うメシアである」という認識をも刷り込んだ。
    そう、独裁者ヒトラー誕生に一役買った医師がいたのである。
    そして本書は、その治療を担当した精神科医が残したカルテをもとに、同じく医者として野戦病院に勤めた経験のある著者が、医師を主人公として書いた小説なのである。
    これだけでも本書はとても興味深い一冊であることは疑いない。

    とはいえ本書の主人公はあくまでもヒトラーではなく、第一次世界大戦からナチスが政権を握り、第二次世界大戦に突入していく時代を生きた、一人のユダヤ人医師の孤独と挫折の書なのである。

    善きものを追求し、良かれと思って行うことのことごとくが裏目に出、孤独を深め、業を背負っていく主人公の姿はなかなかに壮絶である。
    ヒトラーを治療し、独裁者を生み出す一翼を担ってしまった挙句、そのヒトラーから過去の汚点を抹消するために命を狙われる・・・というのが最たるものか。
    ここまで見事に恵まれていない主人公もなかなかない。
    その度に失意に襲われるが、それでもしばらくすると自分に邪心があったから不幸が起ったのだと割り切り、勇気を奮い起こしてまた新たな一歩を刻む主人公の姿は、どうしても最後まで見届けたくなる力を持っている。

    戦争で心に負った傷を、狂信者になることで乗り越えようとしたヒトラーと、愛や家庭での平穏をもって乗り越えようとした主人公の姿は対照的ではあるが、(恐らくは)二人ともどうしてもその傷を乗り越えられない。
    そんな「生きる」ということを探究した本でもあるように思う。

    きらめくようなキャラクターや度肝を抜かれるストーリー展開があるわけではないが、一読の価値ある小説かと。

  • エルンスト・ヴァイス『目撃者』草思社、読了。日本ではなじみが薄いが20世紀ドイツ文学に最重要の位置を占めるヴァイス、待望の邦訳。モラビア出身のユダヤ人精神科医にしてカフカの友人は、ナチズム勃興期の市民生活の息吹を「目撃者」の如くありありと浮かび上がらせる。

     http://www.soshisha.com/book_search/detail/1_1976.html


    著者は19世紀後半からヒトラー政権成立に至るドイツの歴史を、市民生活の実相…それは政治的無関心とその対極の熱狂…として描き出した。本書は小説だが、著者は虚構を借りて真実を伝えようと試みる。40年、ベンヤミンより3カ月早く彼はパリで自殺する。


    ヒトラー政権誕生とレイシズムは切っても切り放すことは不可能だが、熱狂的に待望した民衆は、経済的安定を強いリーダーに求めたことも事実だ。フロイトの手法を熟知した著者ならでは、そのリアルな叙述は、過去のものとは思えない。

     http://soshisha.cocolog-nifty.com/blog/2013/05/post-224d.html 

    「第二次世界大戦へとひた走る危機の時代、その時代の気配を濃密に味わうことのできる一冊」。 読者は読み終えて戦慄するであろう。80年前の危機が現在進行形として伴走することを。

  • 請求記号:943/Wei
    資料ID:50071919
    配架場所:図書館1階東館 め・く~る

  • 日経新聞書評

  • ナチスに追われた亡命作家の遺作……ということで、発売当初から気になってはいたのだが、買ったのは最近だった。
    著者はカフカとも交流があったらしい。

全6件中 1 - 6件を表示

目撃者の作品紹介

第一次世界大戦後のヨーロッパに、すさまじい変動とはかりがたい苦しみをもたらした稀有な人間たち、その中には「あの男」もいた。<br>運命は私にその男の人生に一役買うことを命じたのだ。……まずは一九一八年十月末から十一月はじめのあの日までの私の人生を、手短かに述べることにしよう。(本書より)<br>第一次大戦に参戦し失明状態に陥っていた若者「A.H.」を治療し、その男の中に眠る全能感を呼び醒ました医師の独白――という形式で綴られた異色の小説。第二次世界大戦へとひた走る危機の時代を、独裁者誕生の瞬間に立ちあった医師の視点で鮮やかに描き出す。

ツイートする