第二部 開発調査は効果を挙げているのか
第3章 開発調査の目的と効果
特定の案件を実施に結びつけることが目的なら、JICAの調査団だけ(あるいは、必要に応じてNGOの協力)で、十分。開発コンサルが現地に長期滞在する必要なし
FS調査を実施して、妥当性がなかったということは本来あってはならない。F/S調査は実施を前提として、実施の条件を整備するための調査。案件が実施に値するという根本の確認は、マスタープラン調査の役割。
マスタープラン調査の目的は、対象とするセクターや地域につき、中長期的な開発の具体的な指針を示すこと。内容は、計画対象期間内に順次実施すべきプロジェクトやプログラムおよびそれらを補完する制度的施策を形成すること。
マスタープランであれFSであれ、究極的な目的は相手の能力向上。開発調査に応じて、具体的な目的を明らかにし、目的に照らして実施状況や効果を評価する事。調査を通じて整備された体制および向上した能力よって、案件が相手側主体で適切に管理されるかを評価しなければいけない
マスタープラン調査の評価軸は、相手が案件を主体的に推進、実施しているか。
FSの評価軸は、事業化率。これは、実際にはあまり高くない。やや厳しめの基準で、2年以内に一部でも実施されてる事を条件とすると、事業化率は2003年で24%程度。
第4章 参加型計画による開発調査の効果
カラバルソンの地域開発案件。日本のODAの歴史の中で最も議論を呼び、よく批判の対象となる。外国投資を促進するための経済インフラのプロジェクトがことごとく住民反対に遭った。10日間にわたるワークショップを実施。住民参加の先駆け的事例に。現在のJICAの社会環境配慮ガイドラインは、非自発的住民移転を伴う場合、国際基準にならい、ただの一人も移転先で不利益を被らないように計画する、となっている。
第6章 開発調査による能力向上効果
開発調査の最も重要な成果品は報告書。その後、関係者にとって共通のベースとなるから。またその製作過程でカウンターパートのCDにつながるから。
第7章 開発調査の問題点と役割の変化
開発調査に関するメジャーな批判とそれに対する筆者の見解
①実施に結びつかない
開発調査の第一の目的は相手側のCD。結果として、実施に結びつきやすくなる。フォローアップも大事。
②省益推進、コンサルのための開発調査
強みを生かすという意味で、各省が推進する案件を採択するのは一概に悪い事とは言えない。
③相手国の役に立たない
相手国に開発調査は自らのためと思ってもらうことが大事。
④投入が多く時間がかかる
投入が多いのに実施に結びつかない、という発想ではなく、相手のCDを第一義として見れば、ある程度投入が多いのはうなずける。
⑤官主導と連携不足
実態を見誤っている。
⑥アカウンタビリティ
評価が極めて難しいという大前提がある。筆者は、同業者間での相互評価を提案。
日本のODA特徴
第8章 これからの開発調査と開発コンサルタントの役割
JICAは選択と集中の戦略。ニーズと開発効果を開発調査で吟味。
他のドナーはマスタープラン作成をあまりやっていないため、JICAの独壇場。
マスタープラン作成にあたっては、相手側のオーナシップが重要。
マスタープランは大きく分けて、セクターマスタープランと地域マスタープランがある。前者は縦割り行政になじむが、後者も重要。
貧困へのアプローチは、トリクルダウンによるもの(世銀アプローチ)と社会セーフティネットによるもの(国連アプローチ)が主流であったが、どちらもあまり効果を示していない。地域開発が第3のアプローチ。
日本のODAを支えてきた優秀な計画屋が絶滅の危機?