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- Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
- / ISBN・EAN: 9784794808240
作品紹介・あらすじ
悪魔学論文、医学思想史、社会政策史、メランコリー解釈史の渉猟をつうじて魔女裁判論争の要諦を抽出し、「魔女像」に付託された西欧的人間観の核心に迫る。西欧中・近世史の視座から「西欧近代」を読解する意欲作。
感想・レビュー・書評
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16世紀後半から17世紀にかけての西欧社会において、様々な社会的周縁者の中でなぜ魔女だけが激しい迫害の対象となったのか。古来の体液病理説に従えば、魔女とは黒胆汁が優勢になることで「メランコリーに冒された老女」という医学的人間類型であった。そして16世紀以降の貧民人口の増加に伴い、「メランコリーに冒された貧しい老女」とのイメージが一般化する。また、そこに新大陸で発見された「食人種としてのインディオ」像も追加され、かくして魔女は貧者や食人種など社会的周縁者を代表するに至る。著者は、その過程を明らかにするために、当時魔女裁判が猖獗を極めたドイツではなく、新大陸でインディオと接触したイングランドとフランスに注目する。そして、上記のような魔女像をある程度共有しながら、魔女裁判をめぐって賛否入り乱れる知識人たちを渉猟していくのである。そして「科学革命」によって、貧困は社会政策に、食人種は白人の奴隷に、最後にメランコリーは精神医学へと解消されていく。メランコリー概念を中核として魔女裁判の生成、発展、解消を追う論旨は明快だが、本書で割愛されているドイツの状況については上山安敏『魔女とキリスト教』や牟田和男「魔女狩り積極派と批判派の抗争」(上山安敏/牟田和男『魔女狩りと悪魔学』所収)で補う必要があるだろう。
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