「昔はよかった」と言うけれど: 戦前のマナー・モラルから考える

著者 :
  • 新評論
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  • Amazon.co.jp ・本 (245ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794809544

作品紹介・あらすじ

戦前の日本では、家庭で厳しいしつけがなされ、学校で修身が教えられ、みんなが高い道徳心を身に付けていた。しかし、戦後そうした美徳が失われ、今や日本人のマナー・モラルは完全に崩壊してしまった」
 今日の日本で、道徳に反するような事件や出来事が起きるたびに、こうした言葉があちこちで聞かれます。ジャーナリスト、作家、政治家など、さまざまな立場の人が、あたかも常識であるかのごとく昔を美化し、今を否定する論理を展開します。これに疑問を呈する声はあまり聞かれません。
 しかし、多くの人が信じているこの言説は、実はまったくの誤解だったと言えます。本書は、こうした「常識」の誤りを明らかにし、戦前の日本人の道徳はいかなる状態だったのか、あまり知られていない歴史の側面を当時の新聞や書籍、統計データなどの資料をひもときながら紹介していきます。
 たとえば、列車の中で高齢者らに席を譲らない若者、車内で化粧をする女性、道路や公園にゴミを捨てていく人、偽造したラベルを貼り付けた食品を売る商人、子どもを虐待する親、老いた親を虐待する子ども……。今日、日本人の道徳低下の事例として取り上げられるこうした振る舞いは、実は戦前の日本にも当たり前のように存在していたのです。
 本書では、上記のような事例を中心に具体的な考察を展開しています。ただし、一概に「昔の日本人は道徳心が欠如していた」ということを主張するものではありません。道徳の問題には、その当時の時代背景や社会システムなどさまざまな要素が絡んでいますので、今日の基準で単純に良し悪しを判断できるものではありません。この点を踏まえたうえで、本書はより客観的な視点から道徳問題の本質に迫っていきます。さらに、今日起きているさまざまな社会問題をどう捉えるべきかについても、一つの視座を提示します。(おおくら・ゆきひろ)

感想・レビュー・書評

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  • 昨今は日本人のモラルが低下したとか道徳心がないとか言うが、本当だろうか?と思いこの本を読んだ
    私も67年の人生経験を持ってしても、今の方が生活しやすいしモラルある人の方が多い、道徳心もある様に思う、乗り物マナーや公共施設の使い方等、現在絶賛放映中ドラマ「不適切にもほどがある」をみていてもわかる、いつの時代もより良くなっていて多少の後退もあるかもしれないが、悲観することはないと思う。

  • 「古き良き大日本帝国」への幻想を打ち砕いてくれる素晴らしい本

  • いつの時代でも
    優れた人物はおり
    哀しいけれども
    馬鹿もいる

    全てが
    すばらしかったり
    全てが
    愚かであったり
    することは
    ありえない

    ちょっと考えれば
    わかりそうなことだけれど
    どうも そう思いたくないのも
    「人」の性なのかもしれない

    それにしても
    よくぞ ここまで 綿密に調べ上げられた
    と 思います
    断片的には いくつかの事例を
    なんとなく知っていましたが
    ここまで しっかり提示してくれたものは
    (私の中で)本書が初めてです

    今に生きる私たちが
    心掛けたいこと
    考えなければならないこと
    そんなヒントを
    たっぷりいただきました

  • 歳をとってくるとついつい「昔は良かった」と考えがちですが、それが本当なのか?ということを真っ正面から問いかけ調べた本。目から鱗という感じで、特に保守系の政治家は一読すべき。

  • 昔は良かったと言いたいものだし、昔も今も変わらず人間は愚かと思わされる本である。昔から日本人はきれい好きで礼儀正しく信義に厚く商売や物作りも誠実で高品位を保っている、と思いたい人には不協和なお話でもある。

    関係ないけれど、よくある異世界転生なろう系で、その社会になかったものを現代日本の知識をもった主人公が持ち込み広めたら現地人にめっちゃ感謝される、みたいなテンプレがあるが、実際にはこの本で描写されているように、理解や受容には時間がかかるだろうし、不快なリアクション(図書館の本を盗む、落書きするとか。公園を荒らすとかのような)が多いのだろうなとは思った。

  • 「昔はよかった」と言うけれど、本当だろうか?
    何となく感じていた自分の感覚は、本書ととても近く思う。
    技術の進歩、情報共有、様々な進歩で、世の中はどんどん暮らしやすくなっている。
    「昔はよかった」という言葉は、どちらかと言うと、今をより良くしていきたい、と言う大勢の思いの裏返しなのではないだろうか。
    「過去に良かった時代があった」と思う事は、「きっと未来を良くできるのだ」と言う確信なのかもしれない。そして、思い通り、未来は良くなっていく。
    「昔はよかった」は、実は希望の言葉なのかもしれない。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/704618

  • いんちきイタリア人社会学者と、主旨はほぼ変わらない。ただ、語り口は数段真面目である。
    自己肯定感の低い日本社会には、論拠が確かなこの手の評論が、一定数必要なんである。

    2019/9/8読了

  • 「衣食足りて礼節を知る」は真実であることを実例で知らされる。過去を美化することは危険である。

  • 暇つぶしに最適。勉強にもなる。最近の電車のマナーは非常にいいと思います(昭和以前比較)

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著者プロフィール

1972年愛知県生まれ。新聞社、広告制作会社等を経て、現在はフリーランスのライター。著書に『「衣食足りて礼節を知る」は誤りか―戦後のマナー・モラルから考える』、『「昔はよかった」と言うけれど―戦前のマナー・モラルから考える』など。

「2019年 『100年前から見た21世紀の日本』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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