スウェーデンの小学校社会科の教科書を読む: 日本の大学生は何を感じたのか

制作 : 鈴木賢志+明治大学国際日本学部鈴木ゼミ 
  • 新評論
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  • Amazon.co.jp ・本 (194ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794810564

作品紹介・あらすじ

2016年7月の参議院議員選挙は、投票年齢が18歳に引き下げられた初の国政選挙ということで、若者の政治意識に大きな社会的関心が寄せられました。その結果、10代の投票率は46.8%と、全体の投票率(54.7%)に比べてもまずまずと言えますが、騒がれたわりには低い投票率であったことに危機感を覚えた人も多いことでしょう。
 かたや北欧のスウェーデンの選挙においては、全体の投票率は85.8%、若者(30歳未満)の投票率も81.3%に達しています。この彼我の差はいったい何なのでしょうか。スウェーデンの小学校で使われている社会科の教科書には、それを考えるヒントがたくさん書かれています。
 例えば、「社会には法律や規則があって、私たちはそれに従わなければならない」という当たり前のことに続いて、「しかし、すべての社会は変化するので、法律や規則は変わるものであり、自分がそれを変えたいと思えば、そのように努力すべきである」と書かれているのです。
 また「メディア」の章では、メディアは他人の情報を得るための道具としてよりも、人々が自らの情報を発信するための道具、すなわち「民主制の道具」であると述べます。一例を挙げると、学校のカフェや遊び場が閉鎖されそうになれば、メディアを利用して賛同者を集め、地元新聞に投書し、政治家に会い、デモによって意思表示をするように促しているのです。
 こうした内容について、「それはすごい!」とか「いや、行き過ぎでしょう」と、様々な意見が出てくることでしょう。それでは、日本の若者たちはこれを読んだ時、どのように思うのでしょうか? 本書では、編訳者が所属している明治大学のゼミ生たちの感想も紹介しています。スウェーデンの教科書に対する彼らのコメントから、今を生きる日本の若者の政治や社会に対する意識が垣間見えてきます。さて、あなたは……。

感想・レビュー・書評

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  • 「時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか? 国会議員に聞いてみた。」の参考図書としてリストアップされていたので、気になって読んでみた。

    内容は非常に平易。タイトルの通り、スウェーデンの小学生が利用している教科書を読み解くというもの。大学の教授がゼミ生たちとわいわい言いながら、内容を追っていくスタイル。

    ゼミ生の発言からはとても純粋なものを感じてしまうし、脈絡なく挿入されるゼミ生の写真はどこかシュールだった…笑

    それでも、内容はよかった。当たり前だけど、自分は日本の教科書しか読んだことがない。外国の教科書を、日本語でよむというのは案外貴重な機会だったかもしれない。

    小学校の教科書というのは、社会の鏡でもあると思う。スウェーデンでは、子どもをすでに社会の構成員と捉えており、現実に即した内容を教えているのが印象的だった。SNSの負の面や、税制についてなど、大人が読んでも面白く思える内容だった。

    (書評ブログもよろしくお願いします)
    https://www.everyday-book-reviews.com/entry/2021/11/03/%E3%80%90%E3%83%AC%E3%83%93%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%80%91%E3%82%B9%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%83%BC%E3%83%87%E3%83%B3%E3%81%AE%E5%B0%8F%E5%AD%A6%E6%A0%A1%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E7%A7%91%E3%81%AE%E6%95%99

  • 先日読んだ「時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか?国会議員に聞いてみた」の中で、小川淳也さんが、今の問題は何なのか?それがわかる本だということで課題図書の中にあった本。

     小学校の教科書とは思えないレベルで、社会や政治、経済、法律や権利について、考える基となるものを学ぶことができる。

     スウェーデンでは、子供でも小さな大人として扱う。一人一人が意見を持ち、それを尊重される権利もあるし、相手を尊重することが必要である。という。

     日本では、子供は守られてる、ということと引き換えに、現実を見せてもらえない。隠されることが多いと感じる。全てを知った上で、判断したいという気持ちは大人も子供も同じだろう。もっと子供を信じてもいいんじゃないか、とスウェーデンの子供を羨ましく感じた。

     民主制ってこうだよね、ということを改めて勉強した気がする。子供にももちろん勉強して欲しいけど、改めて大人が読むのもおもしろい。わかったつもりになっていたことがたくさんあると思った。ここに書かれていることは、とても当たり前なんだけど、同調圧なんかで言い出しにくいことだったりもするかもしれない。

  • 2021年イチバンの1冊。

    子どもは自分で考えられる。
    どう問いかけるかに重点を置いている。

  • スウェーデンの教育と日本の教育の違い。
    子どもをひとりの人とみなすか、保護の対象としてみなすか。
    スウェーデンでも子どもは保護されるべき対象だが、日本では現実的なもの、望ましくないものにはなるべく触れさせないということが保護であるのに対して、スウェーデンではそういったことを直視させながら、自分で自分の身を守る方法を身につけさせることに主眼が置かれている。
    その根底には子どもを大人と同じ一つの人格として信頼している。

    考える力を育てる教育と受験のため暗記させる教育。

    私自身、自分で考える力を育て、社会的責任を果たす子どもに育てることに興味があるので、敏感になっていきたい。

    小学校からの教育を考えさせるものになった。

  • スウェーデンは投票率が高いらしい。若年層でも、なんと80%超え。

    本書の冒頭に興味深いデータが載っている。
    若者に対しての「政治に関心があるかどうか」というアンケート結果は日本と大差がない。どちらかといえば日本の方が関心は高い。…ことになっている。
    けれど、「個人の力が政府の決定に影響を与えると思うかどうか」についてははっきりと違いがでている。

    著者も大学生たちも感じているのは、スェーデンでは子供を「小さなオトナ」として考えているということ。
    スウェーデンの若者が特に意識高い系というわけではないのだと思う。ただ、世の中の仕組みについて小さな頃から深く考える機会があり、自分も社会の一員であるという意識が子供のころから自然と身についているのだ。その結果が投票率につながっているのだろう。

    本書は、スウェーデンの小学校社会科の教科書を抜粋して翻訳したものと、そのことについてゼミで感想を述べあっている大学生の会話を掲載している。

    もしあなたがゼミ生なら、どんな発言をするだろうか。

    図書館スタッフ(学園前):ノビコ

    ----------
    帝塚山大学図書館OPAC
    https://lib.tezukayama-u.ac.jp/opac/volume/848521

  • スウェーデンの教科書の翻訳と訳者あとがきは良かったが、大学生のディスカッションはもっと踏み込んで欲しかったし、大学生の写真はいるか?と思ってしまった。写真を載せるスペースに文字数を増やして欲しかった。

  • EU企画展2023「EUの北と南スウェーデンとマルタにフォーカス!」 で展示していた図書です。

    ▼金沢大学附属図書館の所蔵情報
    https://www1.lib.kanazawa-u.ac.jp/recordID/catalog.bib/BB22721073

  • 外国の教科書は面白いので手に取ってみたものの、副題の日本の大学生~のところを読み落としていたので、読み始めてからの求めていたのはこれじゃない感が激しかった。

  • 税金や労働、法律など社会を回すうえでの構成要素をきっちり説明することで、何を変えれば社会を変えられるのかを教えている。

    全体的な仕組みを教えたうえで、きみならどうしたいかを考えさせる。

    部分をフォーカスして暗記させる日本の教育との大きな違いをそこに感じた。

    自分の意思決定が社会にどう影響を与えるかが想像できるから選挙の投票などにも積極的になるんだろうな。

    日本人に積極性がない、考えられないが問題ではなく、その前提となる知識を与えられていないことが政治に無関心な原因なのではないかと感じた。

  • 子どもは保護する対象だけど、守り方がちがうな~って感じた。
    日本は危険なものには近づけない、触らせない。
    スウェーデンは、どこが危険なのか、どうすれば身を守れるのかを教える。
    小学6年生まで成績をつけないのも大きいと思う。だからこそ、○✕にとらわれない、答えのない自由な議論ができる。自分の意見が世の中に影響を与えることができることが前提になっていて、そのためにまずは自分の意見をもつ、発信することに重きが置かれている印象。
    日本の受動的な国民性は教育方法が大きく関わっていそうだな~。


    ・スウェーデンと日本が大きく個となる点は、自分の行動が政府の決定に影響を与えることができるという可能性に対する期待感だと言える。
    ・根本的なレベルの認識から違う。端的に言ってしまえば、スウェーデンでは、とくに政治に関心を持っていなくても選挙には行くということ。
    ・日本人は、学校で教わっていることが一般の生活の役立つ知識であるという意識が高くない。学校で教わるのは高校や大学の入試に出る内容であって、勉強する理由は、いい高校や大学に入るためになってしまっている。
    ・スウェーデンの教科書では、今ある決まりは絶対ではない、古い考えに縛られることはない、ということが強調されている。
    ・スウェーデンの教科書のなかで、とくに重視されていることが「メディアは発信するためのもの」という点。ソーシャルメディアが国をより民主的にするのに役立つと説明している。
    ・小学校6年生まで成績表がない。
    ・日本の教育は、危ないことには近寄らせない、触れさせないということが基本的な立場になっている。子どもを保護すべき対象と捉えている。一方、スウェーデンでは、自分で自分の身を守る方法を身につけさせるのとに主眼が置かれているように見える。その根底にあるのは、子どもを大人と同じ一つの人格として信頼しているという姿勢。

  • 最新の所在はOPACを確認してください。

    TEA-OPACへのリンクはこちら↓
    https://opac.tenri-u.ac.jp/opac/opac_details/?bibid=BB00601744

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  • 社会学部 金澤ますみ先生 推薦コメント
    『若者の投票率が高いスウェーデンでは、小学生に何を教えているのか。あなたの感想は?』

    桃山学院大学附属図書館蔵書検索OPAC↓
    https://indus.andrew.ac.jp/opac/book/642477

  • スウェーデンの教科書は私の領域への介入や、公としての役割、そして民主制の維持、個人の権利について踏み込み、分かりやすく問いを立てながら進んでいく内容でした。
    社会とは何か、法律・規則・規範の可変性をはじめ、「原因の分析→結果の想定→比較→代替案の検討→解決策の評価→他の事象との関連性の発見」の一連の思考の流れで考える内容。とても参考になりましたし、日本と比較するにもよい資料でした。

  • スウェーデンの小学校社会科の教科書を読む 
    鈴木賢志 新評論

    ヨーラン・スバネリッド著の教科書を叩き台にしての
    明治大学鈴木ゼミにおける現地調査と議論

    読み始めて気になったのは
    ページごとに現れるゼミ参加者のポートレイト
    その意味を測りかねました
    はっきり言って邪魔です

    他の内容については面白く読みました
    北欧はそれぞれ個性的で面白い国です
    貧乏で無知で粗野だったバイキングの国が
    突然のように国民が目覚め福祉国家を目指して
    民主性を開花させながらしぶとく戦争を回避し
    今は静かに世界に調和を目指そうと発信を続けている
    稀有な存在である

  • 2017.07.15 品川読書会で紹介を受ける。
    http://naokis.doorblog.jp/archives/shinagawa_reading_comm_35.html

    なぜスウェーデンの投票率は85%もあるのか。労働の義務や税金の意味などを教える。

  • タイトル通り、スウェーデンの小学校高学年〜中学校で使う教科書を読み思ったこと感じたことを話していく形式。
    「概論」の次に「メディア」の章が来ており、民主制というシステムの中で話し合ってものごとを決めていくというプロセスの重要性が全体にわたって大切に書かれていたことがとても印象的だった。

    日本との比較がたくさん出てくるが、そこで日本の社会科道徳科の教科書を引用してくれず「〜だったと思う」と話されているところに、北欧礼讃っぽさを感じてしまい少し残念に感じた。自分の10年前の記憶と、目の前の文章を比べることはできないし、スウェーデンの若者だって教科書の内容を一言一句覚えて生きていけるわけではないだろう。
    日本の社会科の教科書を横に並べながらもう一度読んでみたい。

  • スウェーデンと日本の社会の教科書は大きく違う。
    その最大の違いの一つに、スウェーデンのは考えさせるところが多い。社会、メデイア、個人と集団、経済、政治、法律と権利など。
    日本では知識として教わる部分も多いが、スウェーデンは平易な文章で現状を説明したあと、例えば、「今の社会と200年前の社会とくらべてあ、どこがよくなり、どこが悪くなったか考えましょう。」などのような形式が多い。

    この幼い頃から、身近な問題を考えさせるところが、投票率の高さであったり、国や社会の問題を他人事とは考えず、当事者意識をもって考えさせるところにも繋がると思う。
    読んでよかった。

  • 日本の大学生が、スウェーデンの小学校(基礎学校)の社会科の教科書を読み、日本の教育の足りないものを見つめる。
    いじめ問題など小学生に身近なものから、政治、犯罪と刑といった大人になって直面するものまで、内容は多岐だが、どれも共通するものがある。
    簡潔な過程の説明があるのだ。

    スウェーデンの教育の根底には、同じ北欧のフィンランド・メゾットに通じる、「ミクシ(Miksi / 何故)?」という問題提起がある。

    スウェーデンでの家族の形が多様であること――離婚、再婚(ステップアップファミリー)、養子から同性パートナーまで――をイラスト入りで紹介。

    100年前までは、子供が労働力であったり体罰を用いてでも“管理”する存在だった子供が、今では親・教師が子供を個人として尊重し、寄り添って接する存在にかわったこと。

    今と昔では何が違うのかを明記しながら、考えを促す方針が、教科書の文章に書かれている。
    知識の羅列で、読み手(児童・生徒)が受け身になる日本の教科書とは、根本的な部分が違うと思った。

    私は今の小・中学校の教育現場を知らないので何とも言えないが、私が義務教育を受けていた頃は“進学校”と呼ばれる学校が受験対策重視で、議論をすることを学ぶ機会が少なく、大学生になってやっとそれができるような気がする……

    著者は「スウェーデンの教育の全てが良いと手放しで称賛することはできない」とする。
    短期的な知識や成績、技術面では難色がある模様。

    しかし、スウェーデンの教育にはそれとは違うもの……根底にはグローバル化が進む社会の中に在って、柔軟な発想ができる人間になるためのリベラルアーツ的な部分を養うことを目的としているのだろう。

    教科書を読んだ日本の大学生たちは「日本には無い視点」をよく指摘していた。
    この本に明確な答え、主張はない。
    それは読者に委ねられている。

    【併読/再読したいもの】
    北川達夫『図解 フィンランド・メソッド入門』( https://booklog.jp/item/1/4766783476 )
    ペーテル・エクベリ『自分で考えよう: 世界を知るための哲学入門』( https://booklog.jp/item/1/4794969368 )
    ペーテル・エクベリ『おおきく考えよう: 人生に役立つ哲学入門』( https://booklog.jp/item/1/4794969759 )

  • 非常に読みやすい本でした。小学校の教科書が出た後にこの作者のゼミの学生さんの対話が載ってあり、どのように感じて考えたのかを述べてあるので、そんな考え方もあるのかと読みながら感心しました。
    そして日本との違いやまた他の事柄との比較も非常に多く、こんな違いがあるんだなと思いました

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著者プロフィール

ヨーラン・スバネリッド 1987年よりストックホルムで大学講師として教員養成に携わり、多くの教科書を執筆している。スウェーデンの教育界における第一人者であり、2011年におけるスウェーデンの教育指導要領の改訂(LGR11)では、社会科部門を担当した。近年では、基礎学校の教育目標として、分析力・コミュニケーション能力・情報処理能力・概念理解力・メタ認知能力の五つの能力を身に着けるべき必要性を唱え、これを「ビッグ・ファイブ」と名付けている。社会科のみならず、スウェーデンの基礎教育のあり方に大きな影響を与えている。

「2016年 『スウェーデンの小学校社会科の教科書を読む』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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