動機の修辞学

  • 晶文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (456ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794923424

作品紹介・あらすじ

「修辞」をキーワードに、アリストテレス、キケロにはじまり、ダンテ、マキアヴェリ、パスカル、シェイクスピア、マルクスらをへて、カフカにいたる、人間の言語によるすべての表現行動を、その根源から解明し、現代思想の源流となった、20世紀を代表する古典。文学だけでなく、言語学、社会学、心理学、文化人類学などを解体再生する姿勢によって、バークオロジー(バーク学)とよぶほかない独創的な体系をきづいたバークの、『動機の文法』とならぶ代表作である。

感想・レビュー・書評

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  • バークの本は『文学形式の哲学』(原著1966年,翻訳1974),『動機の文法』(原著1945年,翻訳1982年),『象徴と社会』(原著1989,翻訳1994)に続いて4冊目。なお,本書の原著は1950年。全て同じ訳者によるものですが,1970年代から10年おきに1冊ずつ訳し続けているってのがすごい。
    なお,書名から分かるように,本書は『動機の文法』に続く動機シリーズの2冊目。どうやら3冊目も企画されていたらしく,『動機の象徴学』というタイトルだったようです。当時けっこう流行っていた「欲望」という概念は動機と近いもので,多木浩二にも『欲望の修辞学』という著書がありますが,「動機motives」という概念へのこだわりがバークらしいというか,他の思想家とは一線を画する存在なのかも知れません。欲望というのはある意味分かりやすいけど,動機というのは面接で聞かれる「志望動機」や刑事事件で問われる「犯人の動機」とか,ともかく人間の行為につきまとうものです。
    と分かったように書きながら,残念ながら本書の読書から得るものはあまり多くありませんでした。とりあえず詳細目次でごまかしておきましょう。

    第一部 修辞の範囲
    1 ミルトンのサムソンの「使用目的」
    2 自殺願望への条件
    3 マシュー・アーノルドにおける自己埋葬
    4 アーノルドのイメージ構造の資質
    5 異化作用のイメージ化
    6 エッセンスを表す,劇的で哲学的な用語
    7 パーソナリティ・タイプと「悲劇的」用語
    8 要目概括
    9 額面価値としてのイメージ
    10 身元確認
    11 身元確認と「同質性」
    12 資産と身元確認
    13 身元確認と「自立性」
    14 科学の自律性
    15 キリスト教期以降における科学と「贖罪」
    16 科学がもつ二重の可能性
    17 巧妙にして抜け目のない身元確認
    18 「(個人向け)呼びかけ」の修辞
    19 修辞と原始的呪術
    20 修辞の現世的機能
    第二部 修辞の伝統的諸原則
    1 説得
    2 相手の身元確認
    3 修辞的動機の変異体論
    4 形式によるアピール
    5 広い意味における修辞形式
    6 想像力
    7 イメージとイデア
    8 ベンサムの修辞分析
    9 マルクスと「神秘化」
    10 用語上の保留(クロムウェルの動機に関連して)
    11 カーライルの神秘論
    12 エンプソンの「牧歌詩論」
    13 ヴェブレンにおける模倣としての「嫉み」
    14 「観念」の優先
    15 階層秩序へのメタファーとしての視線
    16 ディドロの「パントマイム論」
    17 ラ・ロシェフコーにおける包括的,具象的,個別的動機
    18 ド・グルモンの「解離論」
    19 パスカルの「意図の誘導」論
    20 マキアヴェリの「行政的」修辞
    21 ダンテの『俗語論』
    22 中世時代の修辞
    23 「幼児時代」,神秘性,そして説得
    第三部 秩序
    1 実証的,弁証法的,絶対的究極用語
    2 マルクス主義的説得における究極的要素
    3 「知識の社会学」対プラトン的「神話」
    4 「神話的」基礎と「状況の文脈」
    5 求愛の修辞学
    6 『ヴィーナスとアドニス』の「社会神秘論的」解釈
    7 求愛の典型範例 カスティリオーネ
    8 求愛のカリカチャーとしてのカフカの『城』
    9 「弁証法的抒情詩」(キェルケゴールの『恐れと戦き』)
    10 イサク殺しと不条理
    11 秩序,秘密,殺し
    12 純粋な説得
    13 「聖なる存在」の修辞的輝き

    バークは上にも書いたように,戦後間もない頃に著作を発表していたような人物だが,文学研究を中心としながらもアカデミズムに囚われない広い思想で執筆をしている人物であります。なので,ある意味では読みやすく,ある意味では読みにくい。詳細目次からは本書で取り上げられる作家が分かりますが,その時代と分野が幅広く,その博学についていけないところも多々あります。
    本書で私が得たものは「想像力」に関する議論と,特に最近考えていたところとしては「階層秩序」という議論。まあ,ともかく読んでおく本ではあります。

  • 2010.02.21 朝日新聞で紹介されました。

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