- Amazon.co.jp ・本 (109ページ)
- / ISBN・EAN: 9784794926647
感想・レビュー・書評
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「むかしむかし」と「おしまい」のたった2行しか書かれていない「ちっちゃなお話」の冒険。
あまりの可愛さに、何度もクスクス笑いながら読んだ。
子ども向けの「本の本」という体裁だが、科学者の小粋なエッセイのようだ。
お話は「ちっちゃなお話」と呼ばれる本を中心に進む。
お父さんはぶ厚い民法の本で、お母さんはとても重要な「科学雑誌」。
なかなか大きくならない「ちっちゃなお話」をいつも心配している。
どうすれば他の子(本)たちのように大きくなれるのか。
悩んだ末に「ちっちゃなお話」が書棚の百科事典に相談に行くと。。
擬人化された本たちの個性が面白い。
「戦術・戦略と作戦」のおじいちゃん。「礼儀作法」のおばあちゃん。
おじいちゃんは思慮深くおばあちゃんは口やかましい。
おバカさんでちょっぴり騒がしい漫画雑誌。
登場人物の数だけ声を持つ戯曲の本。
ぼそぼそと繰り返ししゃべり続ける対数表の本。
何も行動しないのに偉そうに語る法規の本。
声だけは大きなソルフェージュの本(ここはつい吹き出した)。
他にもどんどん本が登場して、まるで本の博覧会のよう。
辞典だから賢いとも限らない。それぞれ専門があるのだ。
著者にそっくりの作家さんまで登場して、もう楽しいったらない。
「ちっちゃなお話」は週2で学校にも行っている。
綴りとデザインと背表紙の閉じ方や著作権。一冊の本になるのは大変だ。
早く大きくなりたいから、学校では優等生。
いつ大きくなるのか、最後には本当にお話になるのか。
そうでなかったら一体なんになるのか。
さて、この疑問に答えはあるのかだろうか。
ようやく元の棚に帰れた「ちっちゃなお話」に語るおじいちゃんの言葉がとても良い。
納得の落としどころで、ほっとひと安心。
成長への不安と憧れを漠然と抱いていた頃を、読み手に思い出させるだろう。
すぐ何かになれなくとも、多種多様で奥深い世の中を痛感できただけでも「ちっちゃなお話」の冒険は意味がある。
著者は母国・スペインの新聞で「ネット25人のリーダー」にも選ばれるほどのコンピューターの達人であるらしい。
そういう方が書いた紙の本だということが、とても大きな贈り物だ。
奇想天外なようでいて考えさせる場面もいくつもあり、むしろ大人に読んでもらいたいかな。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
小さな本がどれくらい小さいかというと、
立派な父親のしおりひもをくるくる丸めるのが
大好きなくらいでした。それでも、学校に行って
習字や綴り方を勉強するくらいの年でもありました。
ある日、小さな本はひとりで百科事典のところへ行ってみることにしました。大人たちが交わす複雑な「なんだかんだ」を調整するために質問してみたかったのです。
小さな本の冒険に付き合ったら、「なんにでもなれる」自分の力を
私達も発見できるかもしれません。