マルクス兄弟のおかしな世界

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制作 : 中原 弓彦  永井 淳 
  • 晶文社 (1973年1月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794958228

マルクス兄弟のおかしな世界の感想・レビュー・書評

  • 最初、「ドリフターズのコントの原点はこれか」と思った。
    笑顔の裏にイタリア人ペテン師の性格をもつチコ。しゃべる代わりにゴムのように表情の変化で伝えるハーポ。ヒゲと葉巻がトレードマークで(特に女を口説く時は)速射砲のように早口なグルーチョ。
    兄弟のキャラクターの一貫性と、ドリフメンバーのキャラ固定化が共通してると思ったり、舞台(画面)の端から端を走り回る所が似てるとも思ったり。

    でも、もっとマルクス兄弟に近いのは「マカロニほうれん荘 (鴨川つばめ)」かな。トシちゃん、きんどーさん、そーじの3人が自在に変装するところや、急にショートコントがはじまり、我に返ったそーじが「どーしてこーなるんですかー」と絶叫した途端、ぱっと場面や服装が変わって別のコントが始まってるという展開の早さとか。

    特に共通してると思うのは、モブシーン(たくさんの人が画面いっぱいに集まるシーンのこと)のうまさ。かつて、名映画監督はモブシーンがうまいと何かで読んだことがある。例えば黒沢明監督とか。
    マカロニでは、1つのコマに目一杯、人物が描き込まれている。マルクス兄弟作品にもモブシーンがふんだんで、この本でも多くのスチール写真で見ることができる。

    「オペラは踊る(1935年公開)」の船室シーンは有名。入口から次々と人が入り、洗濯機のようにグルグル室内を動き回る。ハーポはダイブ状態で人々の頭上で寝そべり、そしてグルーチョときたら、ドサクサまぎれで美女の手を取ってダンスを踊り、カメラ目線でニヤケ顔。最高。

    マルクス兄弟作品が製作されたのは、第一次大戦後の不況、大恐慌、第二次大戦、戦後と続く暗い時代。でもこれだけの“意味のない破壊力”あふれる映画が、景気停滞期に世に出て人気を得た。一方で同じドン底不況の今を見ると、自主規制か何か知らないけど、小じんまり作品ばっかりで、ホントに嫌な時代だなって痛感する。
    (2010/4/22)

  • 馬鹿馬鹿しさの王道を紹介した本。映像ソフトが容易に手に入らなかった時代に何度も読み返しました。。。

  • 今から109年前の1901年2月25日にアメリカで生まれたゼッポ・マルクス(五男)は、コメディ俳優。

    私が最初に出会ったマルクスは、幸か不幸か、『共産党宣言』のカールではなく、ましてや『自省録』のアウレリウス・アントニヌスでもなく、『吾輩はカモである』のチコとハーポとグルーチョとゼッポの4人のマルクス兄弟でした。

    1920年代後半に登場して、チャールズ・チャップリンやバスター・キートンと共に後に喜劇王の名をほしいままにする彼らに、何故わたしが目を向けたのか?

    それは、他でもありません、小学校高学年から読み始めた筒井康隆の圧倒的な影響からです。

    それまでも映画を見ない日はないという熱狂ぶりでしたが、筒井康隆の『不良少年の映画史』を読んでからというもの、より加速度を増して映画と読書にのめり込んでいった感じがします。

    それはともかく、この302頁の本は、かのムッソリーニが怒り心頭に発して、あのダリが驚愕の爆笑をしたという、マルクス兄弟の強烈な躍動する深遠な破壊的スラップスティックを伝えるために、それこそギャグの実況中継をするような、それに数多くの写真を駆使して再現しようと懸命で、それは読む者をして思わずその中に没入してしまいそうになる情熱に満ちています。

    思えば本書は、後に振り返ってみると、とんでもなくものすごい出会いがあったのでした。

    それは、永井淳と中原弓彦という2人の翻訳者のうち、後者があの小林信彦の別名であること。彼は本書には中原名義で「マルクス兄弟論を含む解説」を書いていますし、そしてもう一つ、巻頭言として植草甚一が「シュルレアルな喜劇の出発」と題した一文を寄せているのです。

    この本が、後に私が親しむ2つのまったく違った世界へと通じる入口だったのです。

    そして、マルクス兄弟のスラップスティックをよく知るということは、筒井康隆の小説のつぼを心得るということでもあることを。

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マルクス兄弟のおかしな世界はこんな本です

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