ハンナ・アーレント伝

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制作 : 荒川 幾男  本間 直子  原 一子  宮内 寿子 
  • 晶文社 (1999年12月30日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (698ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794964243

ハンナ・アーレント伝の感想・レビュー・書評

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  • ハンナ・アーレントの弟子(?)的な存在の著者による愛のある、そして信頼性も高そうな評伝。

    2段組みで700ページくらいの大著。

    幼少から、学生時代、亡命生活、戦後の文筆活動、アイヒマン問題での大論争と最後の日々まで、「人とその思想」を丁寧に追っている。どちらかというと「人」のフォーカスが多い分、読み易いが、難解なものが多い著書との関係性は若干もやっとするかな?

    難しい本ではないが、しっかり理解するためには、主著、つまり「全体主義の起源」「人間の条件」「イェルサレムのアイヒマン」「革命について」「精神の生活」は、読むか、他の解説書などで概要はおさえておくことが必要かな?

    ここ半年くらいアーレントを集中的に読んでいて、最初は、皮肉ぽくて、難解な思想を繰り広げる気難しい人という印象があったのだが、読み進めるにつれ、そうした表面の下に、内気だけど、友情にあつく、愛を求めるピュアな人が隠れている感じがしてきている。そして、この評伝を読んで、わたしのそうした印象はほぼ当たり!な感じがして、とてもうれしかった。

    「人」という面での下世話な関心となると、やはりハイデッカーとの恋愛関係(不倫?)は実際のところどんな感じで、その後どう展開したのか?みたいなところが気になるが、その辺は、結構、さらっとしていますね。(恋愛関係はさておき、思想的な影響と批判がどのように変化していったのかは、もうちょっと知りたかったかな?これは他の本を読むべきなのだろう)

    さて、今回、この本を読んで、一番の気づきは、「イェルサレムのアイヒマン」論争の激しさかな?ここの部分には、かなりページが割いてあって、この事件がアーレントに与えた影響は大きかったんだろうと思う。

    皮肉は言っているけど、本当はシャイなアーレントが、否応なく、公の場に出る経験であったはずで、その結果として、ユダヤ人コミュニティから総スカンをくらってしまう。それでも、主張は曲げずに自分の考えを述べ続ける。

    そうした意思の強さを感じるとともに、プライベートな場で友人から徹底的に批判受けた後、なにも反論せずにコーヒーを勧めたというエピソードもあって、「真理より友情を大切にする」というアーレントのひとつの思想がまさに生きられているところに深い共感をもった。

    「アイヒマン」は、アーレントにとって「後から来た癒し」でもあった。ユダヤ人として亡命し、「全体主義の起源」で、根本悪として全体主義と対決したアーレントが、アイヒマンがただのおっさんであったことが、なんらかの世界との和解につながったらしい。

    個人的には「アイヒマン」は、普通の人でも巨悪をなしうる、つまり、上から命令されれば、なんでもやってしまうサラリーマンではないかと、恐怖を感じたところだが、アーレントは、アイヒマンの「凡庸さ」を見て、大笑いして、癒しを感じたらしい。

    もちろん、アーレントは、そこから、大悪人の理解できない根本悪ではなく、普通の人がなにも考えずに巨悪をなしてしまうことに問題意識を転換して、それが晩年の哲学への回帰となっていったのだが、そこの「転換点」が明確になったのが、アーレント理解において、大きかったな。

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ハンナ・アーレント伝の作品紹介

革命と戦争、全体主義の嵐が吹き荒れた20世紀。ハンナ・アーレント(1906‐75)は過酷な時代のなかで、公共性と人間の自由を問いつづけた。本書はこの卓越した政治哲学者の全体像を初めて明らかにした決定版評伝である。アーレントはユダヤ人としてドイツに生まれた。ナチスの迫害を逃れフランスに出国、アメリカに亡命する。ハイデッガーとの秘められた恋。スパルタクス団の元闘士との結婚。アイヒマン論争。ベンヤミン、ブレヒト、シューレム、オーデン、メアリー・マッカーシーらとの熱いやりとり。老年について。「誠実こそ真理のしるし」-師ヤスパースの言葉を身をもって生きた生涯。諸著作の根底にあるアーレントの"精神の生活"が、未発表をふくむ膨大な資料、可能なかぎりの関係者へのインタヴューによってよみがえる。本書はアルフレッド・ハーコート賞を受賞、絶賛を博した。

ハンナ・アーレント伝はこんな本です

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