あしたから出版社 (就職しないで生きるには21)

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著者 : 島田潤一郎
  • 晶文社 (2014年6月27日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (282ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794968517

あしたから出版社 (就職しないで生きるには21)の感想・レビュー・書評

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  • 今や「生きた伝説」の趣さえある夏葉社「ひとり出版社」島田潤一郎氏の初の著作「あしたから出版社」は明日から出版社を起業するためのハウツー本では一切なく、ある種の自伝とも信仰告白とも読める随筆ですが、氏のパーソナリティに追うところの腰の低い位置からポツポツと語られる島田氏=夏葉社のここまで歩みは、自己叱責と含羞の間くらいのスタンスで柔らかな声で語られつつ、開けっぴろげで実直です。またその足跡は不思議と大勢の魅力的な登場人物で彩られています。

    当たり前のことながら「ひとり」であることは「孤立」ではなく、様々な人に恵まれ、また様々な人に返答するかのように恵んでいける「力」を持っていない限り成り立たないわけですが、一見「弱さ」を語り続けているかに映る島田氏の「力」はけして表に出てくる分かりやすい「強さ」ではなく「不屈さ」「折れなさ」であり、勝手ながら本作読書中に名画「ロッキー」のテーマが頭の中に流れ、咬ませ犬の三流チンピラボクサーが世界チャンピオンの前でただただノックアウトされないことだけを恋人に誓って試合に臨んだロッキー・バルボアの姿を思い、一人目頭が熱くなったりした次第です。

    島田氏は体が許す限り人に会うため全国津々浦々を旅し続けていますが、これは営業であり社交ですが、ビジネスマン風のブラフとポジショントークのチャラついたものとは違い、己が信じるところで誠実に人に対し誠実に言葉を選んで誠実に物事を進めていく。単にそれだけのことが、この世で最も難しい部類あることは一般社会人になればよくわかるところで、それゆえに人が力強く島田氏を支え助けるのだろうということも分かります。

    また、その誠実さを実行していくためた頑強な身体以上にタフな精神が必要であろうと思われますが、その精神的タフネスは島田氏の倫理に深く根差しており、その倫理は身近な人の死をその背骨としているのだろうということも分かります。

    おそらく氏が埃を払いのけて復刊し編纂し編集してきた本の数々は「聖典」に等しいものであり、その「聖典」を家宝のように大事に抱えて全国の町の書店を旅する氏の姿を思うと、はたして自分はそれに敵う仕事が出来ているのかと猛省し、氏がこれから何十年先までも自らが信ずるところの道を歩み続け、夏葉社の本を全国の読者に届けていただけることを願ってやみません。

    終章で触れる「かなしみ」について、そして「その場所でのもの作り」について「間違わないだろう」という確信は島田氏だけにとどまらず読者にまでちゃんと共有されたに違いないと思います。

  • 晶文社のこのシリーズが好きだ。自分はいわゆるサラリーマンだけれども、どんな仕事もその原点、原型は個人で頑張っている人たちの仕事なのだと思う。会社はそれを大人数で徒党を組んでやっているだけのことだ。会社という傘の下に集まっているひとりすぎないことを強く意識させられた。以前から夏葉社とその刊行物には興味があったので、とても面白く読むことができた。

  • 2016.05.30

    p109
    ぼくは、かつては、自分ひとりですべてができる、と思っていた。ひとりで考え、ひとりで実行することにプライドを持ち、だれの世話にもなりたくない、と思っていた。
    けれど、ひとりでやっている、なんていうのは、単に、ふくれあがった自意識のようなもので、記憶をすこし掘り返せば、ぼくは、ぼくのことを気にかけてくれている、たくさんの人たちに支えてもらっている、ということがわかるのである。

    p240
    ある日、子どもは、マンガを一冊買えるお金で、文庫本の小説を買う。
    それは、とてもわかりやすい、大人への階段である。

  • こんなにも素直で、真っ直ぐな本に出会ったことは今までなかった。
    正直今の就活が辛くて、苦しくて、どうしようもなくて「就職しないで生きていくには」という言葉に飛びつき逃げ場所を求め手を伸ばした本だった。
    でも、読めば読むほどに逃げてこんな情けない私を受け止めてくれる気がする。心に寄り添ってくれているような、包まれているような、そんな感覚に陥るのだ。
    この先何度も立ち還り読みたいと思った。また辛くなったら「どうしたの、また逃げてきたの、仕方ないなぁ」と言われんばかりの真っ直ぐな言葉に包まれ、胸に刻んで行きたい。そう思える本だった。

  • 何にもできないけどベストセラーだけがいい本じゃなくて読まれるのを待ってる本があるはずっていう根拠のない自信にはぐっと来た。

  • ポエムのような本は苦手だと、ずっと思ってきた。青臭い思いが芸術に昇華していなくて、深夜に突発的に書いた日記みたいな、そういう他者の垂れ流しが、ほんとうに恥ずかしいのだ。ああ、またこの手の本か、と少し思ったのだが、読んでいるうちに気持ちが変わってきた。一冊の本を作り上げた時の喜びの確かさを、感じたからだ。
    わたしはそのうち、ベルトコンベア式に本を作っていくだろう。なんとなく所属し、なんとなく作業をし、おそろしく高度にシステム化された分業体制の中で、的確な業務を行うことで、一冊の本を生み出すかもしれない。その未来の一冊の本に対する思いと、この本の中に出てくる一冊の本に対する思い、そのあまりの落差に眩暈がしたのだ。全てをゼロから構築し、一番いいと思うものを追求し、人に助けを求めながらも一人ぼっちで作り上げたその本の気高さは、確かに、それを必要とする人の心を打つだろう。そもそもわたしは、そういうのが好きだったのだ。本のそういうところが好きだったのだ。今のわたし、これからのわたしを見て、前のわたしは何と言うだろう。システムにのっとって行う型通りの仕事にプライドを持ち始めたら、それは多分感性が死ぬ時であるとおもう。周囲に合わせながら、資本主義原理を呑み込みつつも、わたしはこの感覚を忘れてはいけないのだと強く思う。バランスを保ちながらも、絶対に忘れてはいけないものがあるのだ。

  • 自分で自分を「あしたから●●だ」と決めてしまえば、何にでもなれる。どんなことでもできる。
    本を「人に寄り添う存在」と位置づけて、心からそんな存在を必要としている人に届けるためだけに「あしたから出版社」だと自分を決め、編集・製作・営業・販売を一人で始めた青年の実話である。
    自分がいいと思った本を、丁寧に、誠実に、真摯に、一冊ずつ売っていく。もちろん様々な苦労や障壁が待ち受けているのだけれど、「想いの力」ほぼ一つだけで、彼はそれらを乗り越えていく。

    「……本が読まれなくなったという人たちは、もう本を読んでいない人たちであり、本屋さんが面白くなくなった、本屋さんが危機だ、と話す人は、もう本屋さんに行かなくなった人たちなのである。」(引用)

    同感だ。
    おそらくほとんどすべての本は、著者や編集者の並々ならぬ想いを背負って世に生まれてくる。面白い本はまだまだ世の中にあふれているし、こういう気概あふれる人によって生み出された本を一冊でも多く見つけ、読んでいきたい。

  • 「あしたから出版社」というタイトルに惹かれて手に取ってみました。
    著者は本屋図鑑でおなじみ吉祥寺の1人でやっている出版社として有名な夏葉社の社長である島田さん。

    ライトな小さな出版社の奮闘記と思いきや、それとは真逆な出版社を始めた理由が描かれており、しょっぱなから頭を殴られたような感じになります。

    本書では、島田さんの半生や本に対する思いがたくさん書かれており、知り合いが「これは文学である」と評していたのですが、まさにその通りだとおもいます。

    また本書で島田さんが、本、出版という行為が社会に影響を与えるべきものだということを書いていた気がしましたが、本書の最後には究極的には1人の個人に寄り添うものなんだということを感じました。
    出版業界という大変な時代ではありながら、小さいサイズで数千冊という本を世に出し、1人1人に人生に影響を与えることができるものに挑戦する島田さんの、のっりくらりとした姿がとても好感が持てて、レーベル名にもある「就職しないで生きる」について考えさせられる一冊でした。

  • 苦しくて、切ない。
    誰かのため、本のため、自分のため。
    繋がってゆく縁と歩みに奇跡と軌跡と奇蹟と輝石を感じ、波紋のような大きな波のような、島田さんという人の魅力が詰まった一冊。
    これから、なにをしよう。
    これから、なにをどうしよう。
    仕事に人生に悩む、そして本を愛する人に読んで欲しい一冊。

  •  夏葉社の本に出会ったのは、行きつけの町の本屋。その本屋は独立系の、いわゆる「町の本屋」であるけれども、いつもキラリと光る選書をしている。その本屋の文芸書新刊台の目立つ位置に、夏葉社の新刊はいつもとっておきという感じに並べられているのだ。
     本書はその夏葉社の創業者にしてたった一人の社員である編集者、島田潤一郎さんの自伝的書籍。「就職しないで」というより「就職できなかった」と語る島田さんと、島田さんの起こした夏葉社。その今日までの道のりは決して穏やかではないけれども、厳しさばかりではない。それは島田さんが、人との出逢いと、なにより本作りという仕事を心から愛しているからだろう。読んでいると島田さんがなんだか宮沢賢治の童話か何かの主人公のように思えてくるのだ。純粋一途で、感激屋。思い込んだら一直線。少し周りをハラハラさせ(想像です)、素直で、どこかとぼけている。そんな島田さんの人柄や想いが、手がけた本にはにじみ出ているから、本屋はその想いを、誰かに届いて欲しいと願わずにはいられないのではないだろうか。
     数多ある起業本や前向き自己啓発系本とはおよそ遠いところにあるこの本だけれど、迷える青年達にはとても身近に思える本だと思う。何度女性にフラれても、何度不採用通知をくらっても、今、好きなもののために動く、働く。その姿に勇気をもらった。

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あしたから出版社 (就職しないで生きるには21)の作品紹介

みんなと同じ働き方はあきらめた。

30歳まで自分のためだけに生きてきたぼくは、

大切な人のために全力で本をつくってみようと思った――


「夏葉社」設立から5年。一冊一冊こだわりぬいた本づくりで多くの読書人に支持されるひとり出版社は、どのように生まれ、歩んできたのか。



アルバイトや派遣社員をしながら小説家をめざした20代。挫折し、失恋し、ヨーロッパとアフリカを旅した設立前の日々。編集未経験からの単身起業、ドタバタの本の編集と営業活動、忘れがたい人たちとの出会い……。

これまでのエピソードと発見を、心地よい筆致でユーモラスに綴る。

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