ローカル線で地域を元気にする方法: いすみ鉄道公募社長の昭和流ビジネス論

著者 :
  • 晶文社
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感想 : 27
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794969071

作品紹介・あらすじ

廃止寸前の赤字ローカル線に公募でやってきた社長は、筋金入りの鉄道ファンにして、元外資系航空会社の運行部長。陸も空も知り尽くした「よそ者社長」の斬新なアイデアで、お荷物だった赤字路線は活気を取り戻し、またたく間に地域の観光シンボルに。はたしてその秘密とは?<br>「乗らなくてもよいです」「来ていただいても何もありません」など意表をつくキャッチフレーズと、鉄道ファンの心をくすぐる抜群の企画力で、いま全国から注目を浴びる著者の、体験的地域ビジネス論。<br>ローカル線には「商い」の素がたくさん埋もれている! 地域とひとを元気にするヒントがここに!<br>

感想・レビュー・書評

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  •  公共性の強い領域におけるニッチ・マーケティングの実例。

     顧客の成熟度とビジネスモデルとを関連付けたあたりの記述が、出色。MBA的な概念ツールではとらえきれていない領域をうまく取り扱っている。高度経済成長期=物質的豊かさが消費者としての人格を喚起しすぎたという、社会史的とらえ方。

  •  いすみ鉄道で走っているキハ52の「キハ」ですが気動車の「キ」とイロハの「ハ」で「キハ」です。一等「キ」二等「ロ」三等「ハ」の三等車と言うことです。昭和40年代に国鉄の車両から等級制が廃止されました。
     私の高校時代に木次線で走っていた急行「ちどり」(キハ58?)が今なおいすみ鉄道で走っているとしたら懐かしい。ぜひ乗車したいと思う。
     以前から英語のcontingencyの意味がなかなか掴めなかったのだがcontingencyという考えかた(p199)を読んで腑におちた。想定外はないのがcontingency planだ。
    contingencyという言葉が母語にない日本人特有の甘さなのです。

  • <目次>
    まえがき
    第1章 いすみ鉄道は「乗らなくてもよい」鉄道です
    第2章 ローカル線で地域を元気にする方法
    第3章 いすみ鉄道式昭和流ビジネス理論
    第4章 空と陸ではこうもちがう
    第5章 ムーミン谷から世間を見れば
    あとがき

    どんな商売でも、最初にそのお店のお客様になっていただくためには、たいへんな努力が必要です。だから、最初の1回目のハードルをうんと低くして、お客様が簡単に来れるようにすることで、潜在需要を開拓し、次に、リピート需要に繋げていく。これは、どんな商売でも基本中の基本なのですが、私が就任した時点で、日本のローカル鉄道で、この一般的な商売方式をやっているところはなかったのです。(28)
    「車で来てもよいですよ」「乗らなくてよいですよ」「だからいっぺん来てみてください」と言うことで、ハードルをうんと低くして、皆様方にいらしていただくのが需要を開拓することだともうしあげました。(29)
    自分がやる商売のファンになっていただくことで、売る方も買う方も幸せになれると思うのですが、世の中を見渡した場合、鉄道ファンマーケットはどうもこの原則にあっていないのです。JRなどの大手鉄道会社のほとんどは、鉄道ファンを嫌っています。(30)

    ブランド化というのは、自らビジネスの対象となる顧客を絞り込むことです(60)

    これからの日本は少子化で人口がどんどん減っていきますから、自分たちの都合を最優先に商売をすることは、とてもリスクが高くなることなのです。(77)

    さびれた田舎というのは、ずっとそこに住んできた人たちが引き起こした結果であるわけですから、よそ者の力を借りないときっかけがつかめなくなっているわけです。(104)
    廃れてしまった商店街は、そこで30年も40年も商売をやってきた人たちが、何ら有効な対策をとってこなかったから廃れてしまったのだと考えるのが、一番理にかなっているのです。(111)

    「航空会社と鉄道会社の大きな違いって何ですか?」
    「鉄道の運転士さんで、自分が運んでいるお客様がトータルでいくらになっているのかを考えている人はまずいないでしょう。でも、航空会社では、パイロットたちは、自分のフライトがいくらになっているか、会社が儲かっているのか、損失を出しているのかを常に考えていますよ。これが大きな違いだと思います」(191)
    出発前に自分の預かる列車がどのぐらいの金額を会社にもたらすのかを考えることが、どうして安全を切り崩すことに直結するのか、明確な関連性は見つけられないと思うのですが・・・(194)
    パイロットが自分たちのフライトがいくらになっているかを考えることが、イコール、安全性の確保に影響をおよぼすか、なんて議論は、航空会社では20年以上も前に卒業しているのです。でも、鉄道会社では、まだその議論の入り口にも立っていないのではないか?(195-196)

    CONTINGENCYという考え方
    航空会社には「想定外」という言葉を使う人はいないのです。(201)
    電力会社は航空会社が経営する方がずっと安全だと思うのです。(202)

    2013.07.25 HONZで紹介される。
    2014.03.29 読了

  • 3月24日 1988年 いすみ鉄道が開業した日

  • ターゲット戦略や顧客の捉え方、鉄道のあり方など、参考になる考え方がたくさん書かれていた。
    後半は本のタイトルから脱線している感じがしたが。

  • いすみ鉄道の鳥塚社長のブログの再構成
    ブログを読んでいない人に、鉄道単体で採算が取れなくても、大局的に地域を活性化する核として鉄道が使えることを説く。

  • いすみ鉄道の鳥塚社長が書かれているブログ http://isumi.rail.shop-pro.jp/ をもとに構成されています。
    社長に就任されてからの取り組みなどが中心かな?と思いながら読み始めましたが、実に多岐にわたる内容でした。

    取り組みも紹介されていますが、ビジネス書のようであり、自己啓発書のようでもあり、この1冊でお腹一杯です。
    とくに僕と同業の方に薦めたい一冊となりました。

    いちばん印象に残ったのは、「電車は大人の事情で走っている」のそば屋さんの話です。
    「うちはこの地域になくてはならない店だ」と思っていれば、いつか消えてなくなる可能性が高い…。

    そば屋さんでなくても、どの世界にも当てはまる言葉だと思います。
    お客様をお客様と思えなくなっては、地域に生きる資格もないわけで…。

    それから新しい世界に飛び込んでいくときの「よそ者の仁義」の話。
    新しい世界に飛び込んでいこうとするとき、上から目線になってしまうこと、僕にもありました。
    こうすればすぐに良くなるのに…なんて。

    幸か不幸か痛い目を見たのち、上にも下にも礼儀正しくなっていたわけですが、結果としてそれが良かったようです。
    と思っていながら、つい忘れてしまいまた痛い目を見てしまうこともありますが…。
    口はばったく思えば、Twitter上にはそういう人、ちょっと多いように感じます。

    鳥塚社長が航空業界に長くいらっしゃったということで、鉄道業界との比較はとてもためになりました。
    当たり前と思っていることが、実はそうではない…、僕など転職して今の業界に入ったので、そういう気持ちは持ち合わせているつもりでしたが、まだまだ(あるいはすっかり忘れていた)でした。

    僕の小さな心がけとしては、可能な限り顔見知りのお客様には一言添えるようにしています。
    「いつもありがとうございます」「おはようございます、行ってらっしゃいませ」くらいなら、すぐできますしね。
    次はお名前も覚えられれば…、もちろん個人的なものですが。

    いすみ鉄道を訪ねるうちに、嬉しいことに顔を覚えていただけていることが増えてきました。
    とても嬉しいことは、僕も仕事でやりたいものです。

    しかし本文にありましたが、「今日も来てくれたの?奥さんに怒られない?」
    ええまぁ、たまーに、いや、しょっちゅうかな…(笑)。

    こういうプラスアルファ、基本ができていなければ元も子もありません。
    基本を確実に行うのは当たり前、そこは勘違いしないように改めて気合いを入れました。

    締めくくりの「幸せになる方法」。
    僕も仕事中は、みんなが幸せになるように…と内心念じています(本当)。
    そのおかげか、たまに嬉しい言葉をいただいたり、ありがたいことです。

    そのぶん僕も、お客様はじめ周りの人たちに、ラッキーと思えることをしなければと思います。

    さぁ、またいすみ鉄道に行かなくっちゃ!
    もちろん皆様も是非…、その際は東京駅から、特急わかしおに乗ることをお忘れなく(笑)!

  • 千葉県にあるいすみ鉄道。このローカル線は存続が危ぶまれていたなんてうそのように地域を元気にしています。そのきっかけは公募社長としていすみ鉄道にやってきた元航空会社部長。「来ても何もないところです」を売りにして人が集まるようになりました。地域を元気にしたこの方法は捉え方を変えることで見えてくる驚きにあふれたものです。

  • いすみ鉄道公募社長のメルマガ再編集。
    著者曰く、地域の再生には「よそ者」の力が不可欠。
    しかし、「よそ者」にもマナーや節度がある。
    完全なるよそ者の著者はうまく地域に入り込んで街の象徴となった。
    マーケティング的な発想からすべてを考え、実行している。
    ターゲットを鉄道ファンに絞り、戦略を策定する。しかし、電車に乗らなくてもいいですよと地元の人にはハードルを下げ、活性化の参加を促す。
    企画だけではなく実行力・忍耐力もなければ成功することはなかっただろう。

    ■メモ
    ・ブランド化するには生活必需品じゃないものの方が楽。
    ・三丁目の夕日が懐かしいという世代は本当は存在しない。DNAに刷り込まれている。
    ・うちの鉄道は地域になくてはならないと思うのは独りよがり。マーケットインできていない。

  • ずいぶん前に読み終わって未登録だった一冊。乗ったことのない路線には積極的に乗りたがる自分にとっては、ローカル線もアイデア次第でおもしろい取り組みができることにとても可能性を感じました。人が減っていく中で、交通インフラも減らさざるを得なくなる状況はわかるけれど、奥トレも人がいないところに行くからこそ楽しめるところもあって、こういう動きは応援していきたいなぁと思いました。

  • 赤字ローカル線再生ぬ向けての第一声が「乗らなくてもいいです。車できていただいて、お土産だけ買っていただければ結構です。」目的地までお客様を運ぶという鉄道本来の役割をあえて放棄する奇策に打って出ている。ハードルを低くして顧客が簡単に来れるようにすることで潜在需要を開拓する戦略だ。矢継ぎ早の斬新なアイデアで赤字ローカル線は瞬く間に観光の柱となる。地域再生ひいては日本再生の秘策が随所にちりばめられている。

  • 読むとものすごく元気になります!昨日、地方創生相の任命がありましたがそれぞれの地方で鳥塚さんのやっているようなプロジェクトがどんどん起こる状況をつくってもらえれば、と思ったり…でも、上からの政策に期待するよりミクロなラブをどれだけ大切にするか、がポイントなのかもしれませんね。名言「ハワイに行こうと思わない人はとハワイには行けない。」

  • 140328.杉浦さんからの紹介
    鉄道会社の視野狭窄の話

  • 新着図書コーナー展示は、2週間です。通常の配架場所は、3階開架 請求記号:686.067//To69

  • 千葉県のいすみ鉄道で働く公募社長、鳥塚氏のblogを再編集してまとめた一冊。blogでは季節や時事に応じてかかれていた内容が、再編集によって地域活性化の文脈で意味合いを持ってくるのが面白い。
    http://isumi.rail.shop-pro.jp

    国鉄から第三セクターへと生まれ変わり、地域の足となるも利用者数が低迷して存続が危ぶまれるローカル線は日本全国に存在している。一方で効果的な施策ができているかといえばそうではなく、大半が公務員出身の雇われ天下り社長によって緩やかに存在価値をなくしていくローカル線がほとんどだと思う。

    そのなかで異彩を放つのがいすみ鉄道の取組み。「乗りに来なくて良いです」と逆張り戦略で、コアな鉄道ファンを取り込むような旧国鉄時代の車両を導入し、リピーター客を増やしている。首都圏から日帰りできるエリアだからこそできる、10人に1人のマニアックな人向けのサービスを打ち出しているのだ。

    当然、より過疎地域を走るローカル線では別の戦略が必要となるだろうし、JRやバスなどの交通機関との連携も重要であろう。いずれにしても、第三セクターという存在は地域の個性を打ち出すにはピッタリな立場なのだということが理解できた。

  • ローカル線再生のオタク本かと思いきや、なかなか教訓めいたことも書いてあり、鉄道に関係ない人でもタメになる一冊ではないでしょうか。

    顧客を「内部顧客」や「外部顧客」と分けて、特に日本では自分が仕事で関係する「内部顧客」が軽視されていること、幸せになる方法では「人は幸せになる義務がある」、相手に「運」を感じてもらうことで自分に「運」が入ってくることなど、参考になりました!

    年末は山形のローカル線をのんびり乗りにでも行こうかと思ってます!(正直山形新幹線以外ほとんど乗ってません...)

  • この本を読んで「今乗らなきゃ」と思い立ち、今年の秋にキハ52に乗りに行った。
    鉄道好きだけではなく、中小企業を経営する人、勤めている人にとても響く内容だと思う。自分たちのお客は誰なのか、自分たちの身の程でできることは何なのか。これを真剣に考えることが青い海を見つけることになるんだなと気付かされた。大きな会社やみんながやっていることをやっても競争で疲弊するだけ。かっこいいビジネス本ではないが、本当に役立ちそうな考え方がたくさんあり、元気になれる。

  • いすみ鉄道の公募社長のローカル線立て直しの話。というより、現職に限らず仕事哲学、手法の話か。平易な文体でわかりやすい。よくある経営記ではなく、いろんなビジネスで応用できそう。内部顧客、外部顧客の考え方。自分とこが持つ特徴はなにか。既成の強みだけに頼ろうとしていないか。儲けるために違う強みの活かし方を考えているか。トヨタ式も読んでみよう。

  • 需要の開拓
    乗らなくていいです。お土産だけ買ってください。
    鉄道の客になるためのハードルを下げてまずこさせる。まずは一度おいでよ。

    鉄道ファンの勧誘。
    キハ52の導入。

    乗って残そう運動の成功は皆無。

    ブランド化する。
    何もないから乗らなくていいし期待しなくていい。
    お金も使わないで時間が過ごせるからまたこよう。

    何もないがあります。魅力は自分で探してください

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著者プロフィール

1960年、東京都生まれ。子供の頃からの鉄道ファン。学習塾職員などを経て、27歳のときに大韓航空入社。30歳のときに英国航空(ブリティッシュ・エアウェイズ)に転職。英国航空に勤務しながら、副業として鉄道前面展望ビデオの販売を開始、「パシナ倶楽部」と冠されたビデオ、DVDはシリーズ総計で500本を超える。2009年、いすみ鉄道の社長公募に応募して採用される。社長として、ムーミン列車の運行、物販の拡充、訓練費用自己負担運転士募集などの営業努力で収支を改善し、いすみ鉄道の存続に筋道をつけた。著書に『いすみ鉄道公募社長』(講談社)がある。

「2013年 『ローカル線で地域を元気にする方法』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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