ごん狐はなぜ撃ち殺されたのか――新美南吉の小さな世界

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著者 : 畑中章宏
  • 晶文社 (2013年8月15日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794969101

ごん狐はなぜ撃ち殺されたのか――新美南吉の小さな世界の感想・レビュー・書評

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  • 「北の賢治、南の南吉」として、宮沢賢治と並び称された童話作家の新美南吉。

    これまでは児童文学の範疇でしか語られることのなかった南吉だが、本書では、「ごん狐」や「手袋を買いに」など南吉の作品に描かれたコミュニティの役割、自然との共生、進歩や発達への懐疑、自己犠牲の意味など、日本人が歴史のなかで培ってきた叡智を、民俗学的な視点から解き明かしている。

    新美南吉が創作活動を行った1930~40年代、ちょうど日本は戦時下にあり、南吉の作品もその影響を少なからず受けている。
    その作品群は、南吉の素朴な戦争観を表すものとして批判されるが、「大きくて立派なものではなく、小さくてささやかなもの」を愛した南吉の作品を読み進めていくと、それこそが等身大の現実を表現しているように思えてくる。
    当時の世間の雰囲気や、様々な制約の中で物語を描かなくてはならない現実が、見えてくる。

    児童向けの童話であっても、むしろそうであるからこそ、理想に逃げずに、現実を描いている。

    「ごん狐」は、鈴木三重吉の改変により現代にまで受け継がれる物語となった。しかし、それによって失われてしまったものもある。
    「最も弱いもの」ならではの感情、「なしになってしまう」ことによる儚くも強くあるものが、そこにはあった。

    南吉は結核のため、29歳の若さで亡くなったという。
    ちょうど今の自分と同い年である。
    違う時代に生きた同世代の人間が、何を思い、何を考えていたのか、興味深く読めた。

    狐のフォークロアについての話しも面白い。

    東日本大震災以降、日本の民俗知が見直されてきている。
    新美南吉という、民俗の現場で物語を紡いできた人物が何を見て、何を思い、何を書いてきたか知ることで、日本人が受け継ぐべき叡智を改めて考えることができる。
    柳田国男の民俗学をとおして見ることで、新しい日本社会の在り方が見えてくる気がする。

    「ごん狐」という多くの日本人が小学生の頃に読んだ物語をとおして、日本の民俗知を見直し、新しい日本を創っていくための一冊。

  • 以前記事で畑中氏のインタビューとこの本が紹介されていたので読みたくなった。理由は私が絵本や童話に興味が出ていることと、以前読んだ『新耳袋』(編/木原浩勝、中山市朗)という実話シリーズで狐に騙される話がいくつも出ていたので興味を持ったからというのもある。

    この本のタイトルは、ごん狐だけでなく、新美南吉さんの作品全般に示されることであると思う。
    “なにかをなくしてしまうことでしか、他人とつながれない人びとや動物が出てくる。”
    新しいものの前には、失われたものがあるのだ。

    この本を読むにあたり、『ごん狐』『手袋を買いに』以外の読んだことのない新美南吉さんの作品をいくつか読んだ。
    古い風習、失われていく文化と文明開化、孤独、残酷さなどファンタジックではなくリアルな描写で魅力があり、とても引き込まれる。また、読後に胸がギュッと締め付けられるような何とも言えない気持ちを残す。まだ読んでない作品も多いので読みたい。

    権狐、鈴木三重吉による改変で、ごん狐となり、この部分は全く印象や言いたいことが異なるようになっていると思う。
    “ぐったりなったまま、うれしくなりました。”→“ぐったり目をつぶったまま、うなずきました。”
    私は元のうれしくなりましたの方がいいなと思う。権狐の気持ちがあらわれているから。

    ー目次ー
    狐のフォークロア
    文明開化とノスタルジア
    共同体の記憶
    不確かな世界
    最も弱いもの

  • ごん狐はなぜ撃ち殺されたのか、その答えをこの本(著者)に期待した私が無理な注文でした(^-^) 答えは新美南吉さんしかわからないですね。新美南吉氏が子狐は自らをモデルにしたという説もあるそうですね。言葉が通じ合えなかったからか、時代や状況、共同体の規範に由来したのか、他の理由があったのか・・・。でも、私は、子供の狐が淋しくてちょっといたずらをし、それが悪いことだと気がついて反省し、山の幸を届けていて、銃で撃たれる。可哀想でなりません。私は、狐の物語では「手袋を買いに」が好きです!(^-^)

  • 国語の教科書の中で1番大好きなお話でした。感動!!

  • 新美南吉の作品について民俗学的な視点から考察した一冊。
    なかなか面白かった。

    『ごん狐』と『おじいさんのランプ』ぐらいしか読んだことがないので、他の新美南吉作品も読んでみたくなった。

  • 全体に興味深く読めたが、著者の新見南吉に関する考察が、特に新鮮だった。

  • ごん狐には、権狐という初期稿があった。鈴木三重吉の改変による『ごん狐』が生まれたことで、日本人の多くが小学校の教科書でこの作品に出合い、日本人の懐かしさの源泉の一部として記憶に溶け込んでいる。
    しかし権狐がごん狐になり、普遍性を持った反面、失われた部分もある。実在した語り手と土着の匂いだ。新美南吉自身とその時代背景を知るためには、権狐に立ち戻る必要がある。
    抒情的な童話としてだけでなく、愛知県知多半島にかつてあった風景や思いを再確認するものとして、新美南吉の作品をもう一度読み返してみたい。

  • いくつも、あった。
    何かは言葉にしにくいけれど。

    灯りや共同体や子どもやおじいさんや、私の好きな事柄は随所に紹介されて(そして再発見させて)いたが、権狐とごん狐の違いが一番、知れて良かった。

    "「権狐」(または新美南吉が描き出したものたち)は、何故(時代の中で)撃ち殺されたのか?"
    他の方のレビューを読んではっとしました。
    そもそもはタイトルに煽られて半ば怒りの中で手に取ったのに、童話の世界に夢中になりすぎて全然考えられていなかった。反省。

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ごん狐はなぜ撃ち殺されたのか――新美南吉の小さな世界の作品紹介

若くして才能を発揮しながら、29歳で夭逝した童話作家・新美南吉。代表作「ごん狐」は、50年以上にわたって小学4年生の国語教科書に採用され、読み継がれているが、その今日的な視点については見過ごされてきた。
 コミュニティが果たす役割、生態系の保護や自然との共生、民俗知の継承といった課題が見直されるなか、南吉の描く世界は、現代社会に多くの示唆を与えてくれる。
 遺された童話群を柳田国男、宮本常一ら民俗学者が掘り起こしてきたフォークロアの世界と比較するなど、作品に潜む思想性を読みなおし、今の時代を生き抜くヒントを見出していく画期的な試み。

ごん狐はなぜ撃ち殺されたのか――新美南吉の小さな世界はこんな本です

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