柳沢吉保側室の日記―松蔭日記

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著者 : 正親町町子
制作 : 増淵 勝一 
  • 国研出版 (1999年2月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784795292178

柳沢吉保側室の日記―松蔭日記の感想・レビュー・書評

  •  江戸幕府五代将軍徳川綱吉の側用人柳沢吉保の側室の残した日記。

     ジェットコースターも驚く人生の変転ぶりで、また、その変遷ぶりを割合忠実に描いていたドラマの「大奥」(よしながふみの漫画原作のものではない。)を思い出す。
     一方、将軍の吉保邸訪問の準備の実情、費用のかかり具合の凄まじさに驚嘆。ただし、訪問する側の費用も、それ以上というのも凄まじい。身分・格式社会ここに極まれりの感。

  • 松蔭日記は、江戸時代に活躍した政治家・柳沢吉保の側室の正親町町子が書いた日記です。とはいえ、町子自身のことではなく、柳沢吉保の人生が記されています。

    柳沢吉保といえば、成り上がりの癖に将軍綱吉を惑わして政局を混乱させた、君側の奸の代表例とされているような人物で、悪評には事欠きません。しかしながら、この日記を読むと、柳沢吉保の子煩悩で家族思いな一面や、和歌や風流を好んだり、激務のあまり出家を志す一面など、君側の奸とは程遠い人物像が浮かび上がってきます。
    そんなのを読むと、これは、毒を投げつける日記だと思います。みんな勝手に君側の奸とかいうけど、そいつにも家族はいて、人並みの思いやりがある普通の人間で、激務に苦しんでいて、そういう奴らをあげつらって笑う正義漢ぶるお前らは何者なのだと。
    だいたい、老中の堀田正俊が暗殺されて以降、混乱する政治に困った綱吉が目をつけたのが聡明な側近の柳沢や牧野成貞で、彼らがいなければ政治は円滑にすすみませんでした。そういう功労者を悪者にする世の中…。
    ひょっとしたら、そういう世論に投げかけた、側室の愛の擁護かもしれません。

    文体は、華やかなりし平安の女流文学っぽさを感じます。政治のことは一切書いていません。女性が政治に関われなかった故に知らなかったのか、柳沢吉保しかみてないのかはわかりませんが。しかし、政治のことを書かないということが、尚更この日記の世間に向けた毒つきと、柳沢吉保その人への愛をかんじます。

    正親町町子はけっこうな公家の正親町家出身です。ですが、なかなか難しい生まれで、幼少期は公家の父の元で育ちましたが、少女期はかなり不遇(遊女にされかけたという話も聞きます)だったようです。そんななか、母方の親戚に常磐井と言うのがいて、その常磐井が大奥総取締・右衛門佐になったので江戸にやってきて、その縁で、十代半ばに柳沢保明(若き日の吉保)の妻になったようです。そんなこともあり、不遇で心細かった少女期を癒してくれた吉保に報いたかったのかもしれません。


    しかし、これをみていると、おそらく君側の奸のあまりのセレブ生活に腹立つ人もいるかもしれません。
    その時、藤原道綱母の蜻蛉日記を思い出します。あれは最近、藤原兼家の協力もあって兼家を喧伝するために書かれたという説がでてきているそうです。
    それを考えると、道綱母の喧伝方法は上手だと考えます。兼家の嫌な面、人間らしい面を描き、自分も嫉妬深い汚れ役になって、兼家という人物の身近さや魅力を書き出しています。
    町子は吉保を見て欲しかったから自分を消したような側面があり、めったに日記に自分を出さないことが、逆に吉保を浮いた存在にしているようにも感じました。

    でも、文才を使って夫を救おうとしたのかもしれない町子のことを考えると、とても素敵な気分になれます。また、町子の趣味の文筆活動と吉保の趣味がとてもよく合っていたことから、とても優雅さをかんじました。

    ただ、受け手を選ぶ本かも。ある意味「君側の奸」の華やかな私生活を書いたものだからなぁ。
    でも、常に過労で町子が常に心配してる柳沢吉保さんには同情したくなってきた。綱吉はもう少し休ませてあげてほしい。

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