転がる香港に苔は生えない

著者 :
  • ゆびさし
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本棚登録 : 165
感想 : 37
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  • Amazon.co.jp ・本 (582ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784795832220

作品紹介・あらすじ

バブル・返還・経済危機。激動する香港で丸2年、香港老若男女の生きざまを切り取った長編ノンフィクション。

感想・レビュー・書評

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  • ちょうど私が香港に住んでいたのと同じ時期のことが書かれていると知り、手に取った。
    当時子どもだった私の知らない香港の姿が書かれていた。
    香港島の日本人街で、親たちに守られてのほほんと過ごしていた私にとって、この本に書かれている、ある種血走ったような香港人の生き様は衝撃的だ。
    香港=移民の国、という認識も恥ずかしながら持っておらず、このルポを読んで初めて知ることばかりだった。
    香港返還も、単なるお祭りにしか感じていなかったけれど、その裏で人生を左右される人たちがこんなにいたことを初めて知った。

    20年前に日本に帰国して以来、香港を再訪したことはないけれど、今の香港はどんなだろうか。
    大人になった今、改めて向き合ってみたいと感じた。

  • 筆者のドライで小気味よい文体。「1996年9月4日午後11時9分、彼はすでに私の重要人物になっていた」などは、王家衛の映画のワンシーンのごとき描写。街ガイドのふんわりとした香港本とは一線を画し、生活者ゆえの生の声、土地に触れ合った人しか書けない内容の数々。しかも日本人という立場からの見解は非常にわかりやすい。返還に際し、香港の人々の心情がうかがえる内容もたくさんあった。「50年不変?そんなことあるわけがない。香港は必ず変わるよ」「ちょっと近所へ煙草を買いに行くような顔で、今まで暮らしてきた部屋を捨てること。そうでもして切り捨てない限り、前には進めないのだろう」。そして「香港は祖国に回帰したのではない。祖国に回収されたのだ」。返還前後から垣間見え、文中にも書かれていた中国化、報道の自由への不安。不安がその通りになってしまっていることを、もう我々は知っている。路上を占領する商人に対するかつての緩やかなパトロールに「徹底弾圧に陥りやすい大都会で、指令一辺倒になりがちな公務員が、これだけ独自の価値観と寛容さをもって行動できるというのは、香港という街の成熟度を象徴しているよう」という一文には、とにかく唸った。そんな香港がやっぱり好きだったな。

  • 一気読み。面白い。
    20年以上前の本だが、貴重な歴史的イベントを記録した資料になってる。

  • とにかく面白い。星野さんの文章は面白い。「みんな彗星を見ていた」に出会ってから遡るように著作を拝読しているが、今作も今後何度も読み返すだろう。

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  • 返還前後2年を香港で暮らした著者によるノンフィクション。2020年、香港が変わろうとしている今こそ読まねばと思って手にとった本。
    飲茶おいしい、夜景きれい、だけではないリアルな香港が、軽く重く迫ってきた。
    この本を読んでから香港にいきたかった。

  • 痛快ドラマだな。しかし、度胸があるな。

  • 米原万里にオススメされてはいたものの、その厚さにビビッて手が出ていなかった一冊。たまたま図書館で見掛けて、返却期限をモチベーションに読了。しかし、そのボリュームをまったく感じさせないほどの面白さで、ほとんど一気読みだった。

    文章自体は決っして巧くはないし、香港返還という世界史的大事件をテーマにしているにしては、背景の分析も歴史的事実の評価も甘く、資料的な価値は薄い。しかし、この本には、返還前もその後も、香港に恋して、香港の人々を愛した、率直で素朴な文章が詰められている。特に、喫茶店でたまたま見かけた美男子に対する想いと、ついにその想いを吐露する瞬間の描写は、女性らしいファンタジーと香港らしい風景が交差する素敵なシーンだ。香港で出会ったカップルを撮った表紙写真も素晴しい。

    まあ、本としては贔屓目に見て星 4つくらいではあるのだが、たまたま、今の自分の境遇と、転がり続ける香港の中でたくましく生き続ける人々の描写がマッチしてしまって星 5つ。どんな本にも出会うべき時期というものがあるものだが、もし、この本が自分の背中を押してくれたのだとしたら、自分にとって人生で最も大切な一冊になることだろう。

  • 返還前後の香港に2年ぐらい住んで書いた本。感想としてはとにかくナゲーという感じだが、庶民の中に入りこんで書くような仕事は、一生に何度もできるようなものではないだろう。時折出てくる美少年好きの側面がちょっと怖い感じがしたが、まあ力作だろうとは思う。

  • これも弟がマーケットプレースでわざわざ取り寄せてくれた本。昔の香港好き熱が再び高まって、2晩徹夜で読了した。作者がちょうど私と同じ年代なので、友達の中の一人が書いたような気がした。

    大学を卒業する直前に香港と台湾に家族旅行をし、香港の活気に触発され、香港で就職したいと思った。今のように行動力がなかったので、実現しなかったけれど、香港で就職していたら、私の人生は180度違ったものになっていたはず。でも、この本を読んで、タイのチェンマイには住めるけれど、香港のすさまじい生存競争、厳しい住宅事情の中でやっていくのは無理だなと思う。

    香港は時々出かけて触発されたい所だ。中国文化も素晴らしいと思うし、
    中華料理なんて、日本料理より好きかもしれない、だけれど、私は日本人で本当に良かった。この夏からドラゴンエアーがチェンマイ香港直通を始めたというので、返還前に香港映画を見に足繁く?通った香港久しぶりに日本に帰国する途中で寄りたい。どんな風に変貌しているかとっても楽しみ。

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著者プロフィール

1966年、戸越銀座生まれ。ノンフィクション作家、写真家。著書に『転がる香港に苔は生えない』(2000年、第32回大宅壮一ノンフィクション賞)、『コンニャク屋漂流記』(2011年、第2回いける本大賞、第63回読売文学賞随筆・紀行賞)、『戸越銀座でつかまえて』(2013年)、『みんな彗星を見ていた』(2015年)、『今日はヒョウ柄を着る日』(2017年)、『旅ごころはリュートに乗って』(2020年)など多数。

「2022年 『世界は五反田から始まった』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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