アマゾン・ドット・コムの光と影

著者 :
  • 情報センター出版局
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  • Amazon.co.jp ・本 (295ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784795843424

作品紹介・あらすじ

出版業界のタブーをものともせず、急成長した要因は何か。徹底した秘密主義の裏側では何が行われているのか。元・物流業界紙編集長が覗いたネットビジネス、その裏側に広がるのは…。

感想・レビュー・書評

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  • 企業イメージが現場とは随分違うというのはよくあること。じゃあ、アマゾンならどうだろう。本書は、本の流通革命を起こした黒船アマゾンの作業現場を生々しく語った一冊だ。

    90年代の出版不況から抜け出せず、出版産業は小売、流通、卸しいずれもが厳しい体相。その中でアマゾンが頭一つ抜け出たのはなぜか。こうした点で出版流通に関心のある方なら非常に勉強になるルポの一冊だろう。しかしながら、読み進めていくと著者にとってアマゾン潜入はあくまで話のネタでしかないようだ。

    むしろ著者が伝えたいのは、ある種の閉塞感、キツさだ。当時既に社会に蔓延していた生きることのキツさみたいなものを著者は後半一気にまくしたてて伝えている。

    ローレンス・レッシグの Code 2.0 で言われているレイヤーとアクセサビリティについての現実の声と僕は捉えた。格差社会や派遣問題についての本、雨宮処凛さんの著作などを読んでる方は読んでみるのもありかも。

  • アマゾンに関する本は何冊かでているが、これが元祖というべき「潜入レポ」
    実際に著者横田増生氏がアマゾンの物流センターにアルバイトとして半年働いて書いているため、生の現場のにおいがリアルに伝わってくる。

    アマゾンの売り上げなどに関する情報は古いかもしれない。
    これが書かれた当初よりアマゾンはシェアを増やしているだろうし、電子書籍化に向けて何を目指そうとしているかにも大いに興味を惹かれる。
    だが、著者が最もここで書きたかったのは、サブタイにもある「階層化する社会」の現実についてだろう。

    アマゾンでポチする裏側には、今現在問題となっている格差社会の姿がある。

    あの素晴らしいアマゾンの利便性は、ひとえに人的労力の賜物だという。
    ワンクリックの影にはその商品を探して広い物流倉庫内を走り回るアルバイトが存在する。

    このアルバイトについているのは、学生や家事の合間の短いパートの主婦ばかりではない。
    これで生計を立てている人もいる。
    しかし「これではまともな生活設計を立てることはできない」と著者はいう。

    このような職場に長く身を置いたところで、能力向上の機会も得難く、それゆえ賃金の上昇も見込めない。
    そのうえ、誰にでもできる単純作業なので、雇用側にしてみれば誰が辞めたところでかまわない。

    何年働こうが能力を身につけることができないから、そこを辞めてもまた同様な単純作業労働にしか就くことができない。

    現代日本が直面している格差問題がここにはある。

    我々は熾烈な国際競争を勝ち抜くアマゾンのようなニューエコノミーの恩恵を受けているが、一歩立ち止まってその裏側で進行している階層化社会に思いを巡らす必要があるのではないかと締めくくる。

  • 鎌田慧の自動車絶望工場のようなものであるかと思っていたら、一部は潜入体験であるが、一部はアマゾンの説明であった。もっと潜入体験に絡めて説明してあればよかったのかもしれない。新書版になったのであろうか。

  • 16年前の著作とは思えないほど、面白い。

    アメリカでは既にネット書籍販売で頭角を現していたアマゾン。日本に進出して 5年というタイミングで、潜入ルポを決行した著者。これが最高のタイミングで、アマゾンジャパン勃興期、拡大の様子をありのままに写し出している。

    現場に潜入した事から見えるありのままの現実とそこに潜む問題点、さらに著者ならではのロジスティック、物流から見える外側からの視点を組み合わせたこの書籍は、外からは伺えないアマゾン内部を照らし出す一級の書籍である。

    今は当たり前になったネットショッピングの裏側が伺える、貴重な書籍である。

  • 1分で3冊のピッキング
    時給900円

  • <本の紹介>
    出版業界のタブーをものともせず、急成長した要因は何か。徹底した秘密主義の裏側では何が行われているのか。元・物流業界紙編集長が覗いたネットビジネス、その裏側に広がるのは…。

  • これは最高に面白いドキュメント。

    物流センターで社会の縮図がみえる。
    ネット書店が個人の好みを読み、その結果、嗜好を分かってくれることは、昔の街の書店で普通あったこと、というのは目から鱗でした。

    2005年の執筆。今のアマゾンも知りたい!
    潜入レポ、もっと読んでみようかな

  • ★愚直な倉庫管理★著者の潜入記を時期を遡りながら読む。2005年に書かれた本だけに古さは否めないが、アマゾンが日本に上陸してさほど間もないころの驚きはよく伝わってくる。

    当時の扱いは書籍が中心。大量の本をどうやって物流センターで管理するのかを半年の体験から語る。個人の作業内容が逐一チェックされ、作業効率が一目で分かる。目標はピッキングが1分に3冊、検品は4冊、棚入れは5冊。単純作業の繰り返しなので、アルバイトが次々と変わってもだれも気にしない。歯車のように使われる様子を記す。著者は倉庫でピッキングしかしていないので、のちの運送やユニクロでの体験と比べると幅が狭い。その後に着実に潜入ノウハウをつかんでいったのはよく分かる。

    反対から見れば、物流センターでは通常、作業内容をここまでシステマティックに分けられず、誰がどれだけ働いているか分からなかっただけでもある。トヨタの工場などは多能工としてスキルを上げるという違いはあるだろうが、それくらいの精度はあるはずだ。ただ、いまのように人手不足となればアルバイトを次々切って捨てることは難しいだろうし、成果を上げた人は厚く処遇することもしているだろう。いくら外国人を入れても間に合わないだろうから。

    AWSという違う分野の成長もあり、著者が想像した以上にアマゾンの存在感は高まった。ロングテールという概念はここには出てこないが、めったに売れない本はどの程度アマゾンで管理しているのだろう。単に卸に仲介しやすくなっただけなのか。もうひとつ、ブックオフからの仕入れは結局、なんだったのか。

  • 2017年に読んだが、12年前に出版されたこの本に描かれるアマゾンの姿と今のアマゾンの違いに愕然とした。そういえばアマゾンは元々本のネット販売会社だったね。この本の出版後は、本以外のありとあらゆる物品の販売、kindle、本の読み放題、アマゾンプライムビデオと進化が進んでいる。アマゾンジャパンの売上等が秘密にされてるのは、消費税や法人税対策なのでは?

  • 今読むと、すっかりAmazon的サービスに麻痺している事に気付く。
    もはやレコメンドがつく事も、翌日に商品が届く事も当たり前で、商品が無事に届く事なんて心配もしていない。

    この時点で売り上げがこんなにあったのか…という事は今は…。
    これだけのサービスを顧客至上主義として提供するために、分析力などエンジニアの力には注目する事は多いけど、流通側に着目した事はありませんでした。

    便利だから失いたくないと思いつつ、それを維持するために酷使されている人がいる事には是とは言いがたい。

    あと、こういうルポはなるべく発売すぐに読まなきゃなーと思いましたw
    ユニクロの方も早く読みたい。

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著者プロフィール

横田増生

一九六五年、福岡県生まれ。関西学院大学を卒業後、予備校講師を経て、アメリカ・アイオワ大学ジャーナリズム学部で修士号を取得。九三年に帰国後、物流業界紙『輸送経済』の記者、編集長を務める。九九年よりフリーランスとして活躍。二〇二〇年、『潜入ルポ amazon帝国』で第一九回新潮ドキュメント賞を受賞。著書に『ユニクロ潜入一年』『「トランプ信者」潜入一年』など。

「2022年 『評伝 ナンシー関』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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