壁の中の嘘と秘密 (ガッシュ文庫)

著者 :
  • 海王社
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感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (281ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784796404709

作品紹介・あらすじ

二人の秘密を知るのは、夜空に輝く月と星だけ-。山奥にある全寮制の名門男子校。著名な政治家を父に持つ香司は自他とも認めるチャラ男で、立入禁止の寮の屋根裏部屋に女子と忍び込んだところ、天体観測をしていた学年一の優等生・昴と鉢合わせする。それがきっかけで屋根裏部屋で秘密の時間を共有するようになり、そっけない昴が時折見せる無防備な表情に惹かれていった。優しくしたい、近づきたい-。ある夜、想いのままに告白すると、戸惑いつつも昴は頷いてくれた。けれど、身体を許しても最後の一線を拒む昴は、何か秘密を抱えていて…?

感想・レビュー・書評

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  • 切なくて、懐かしくて胸の奥がきゅ~んとなるお話。
    甘めルックスで要領がよくて人の波間を器用に泳ぎ回っているようなチャラいモテ男の香司。ちょと甘く微笑めば女の子なんて思い通り、何でも簡単に手に入るから何かを真剣に欲しいと思ったこともない。全寮制の名門男子高は息苦しくて窮屈だけど、いつかこの壁の外へ抜け出せたら、自由を謳歌してやると心に決めている。
    誰からも適度に好かれている香司にひとりだけ冷たい顔を見せる優等生の昴。ひょんなことから昴が誰にも言えない事情を抱えていることを知ってしまう。
    最初はほんの好奇心から、でもいつしか昴が自分にしか見せない顔が増えていくにつれ、どんどん昴のことが気になって仕方なくなる香司。
    まさかまさか、いやいやないない、でも同じ男なのにかわいい、もっともっと自分だけに色んな顔を見せて欲しい。
    自分にだけ冷たくて、自分にだけ弱い顔を見せる昴。
    もしかして、こいつ俺のことが好きなんじゃ…香司の中で疑問が確信に変わる。
    ほんの気まぐれみたいに「試しに、付き合ってみない?」と切り出す香司。ただのお試しみたいに言い逃れたのは、逃げ道を残しておきたかったから。
    ふたりだけの秘密の天体観測。星の話になると途端に饒舌になる昴を香司はかわいいと思う。
    もっともっと俺に全部見せて。抱えた秘密ごと全部暴き出して、自分のモノだと確信したい。もっともっと甘やかしてもっともっと優しくしたい。
    初めて本気で誰かを好きになった香司。
    俺を中に入れて、全部教えて、俺をもっと好きになって、
    「ねぇ俺のこと好き?」て女の子みたいじゃんて思いながらも問わずにはいられない不安。
    脅したりすかしたり、甘やかしたり優しくしたり、シーソーゲームみたいに揺れ動く気持ち。
    香司の気持ちは思わぬ形で裏切られる。初めて明かされる昴の嘘と秘密。
    手酷く裏切られて打ちひしがれる香司に好きだと告げる昴。裏切りも憎しみも凌駕する恋心に押し負かされて、気持ちを伝える昴の切実さに涙が出そうになる。大好きなのに、傷ついてそれを信じきれない香司にも。嫌みのない、無理のないエンド。
    壁から解き放たれて自由になったふたり。これからどんな愛を育んでいくのでしょう。楽しみ楽しみ(*´艸`*)

  • 名家の子息ばかりの全寮制男子校、屋根裏部屋、天体観測。このワードでこの作者さん、面白くないわけがない!と、先に読んだ先生同士のスピンオフも面白かったので期待値大で読みましたが、やはりとても良かったです…!

    攻めである花塚視点だし、頑なすぎる昴は単に素直になれないだけだと思って読んでいたので、夏休みに昴の妹が寮に忍び込んでからの展開は衝撃であり、とても辛いものでした。真実を知ってどんどん傷ついてゆく花塚が可哀そうで…。
    「好きだ」と本音を伝える昴に「嘘だ」と信じない花塚の、はじめてふたりが身体を重ねるシーンでは、号泣。切ないベッドシーンランキング1、2位を争うほどの切なさでした。(「SHOOWA先生の「パパ’sアサシン」の3巻と甲乙付け難く…)

    壁の外での再会はわりとあっさり果たされるのだけど、壁のなかでお互いたくさん悩んでたくさん傷ついたんだから、エンディングはあれでよかったんだろうなあ。

    スピンオフで、夏休みの間の先生たちが子供の喧嘩みたいな言い合いを繰り返していて(あちらはあちらで大変だったけど)、端で見ている生徒たちは何とも思わないのかしらと不思議に思っておりましたが、こちらを読んで、子供たちの方も複雑で繊細な悩みを抱えて過ごしていたことを知り、そりゃ先生たちのことになんか気にしてらんないよね!と納得したのでした。

  •  男子高校生が壁の中でいろいろする話(言い方)

     山奥の名門男子校に入学した香司の父親はある有名政治家であるが、本人は自他共に認めるチャラ男。
     以前、同じ学校に通っていたいとこに教えてもらった秘密の部屋に女の子を連れ込んだところ、先客がいた。
     その先客は、学年一の優等生昴で、彼はその部屋で天体観測をしていたという。
     その出会いがきっかけで秘密の時間を共有するようになる二人。
     香司にだけそっけない昴が時々見せる無防備さに惹かれていく……

     という話でした。
     実は、二人には香司の知らないつながりがあるのですが、それは二人にはどうにもならないにも関わらず、二人の関係にマイナスでしかないつながりで、あー……残酷だなあ……って思いました。
     個人的に世の中で一番残酷なのは、自分ではどうにもできない出自だとか、血のつながりに関わることだと思うんですよね。
     こればっかりは自分で断ち切って乗り越えたつもりでも、その事実は消えないから、枷でしかない。
     自分でやったことの責任を取らされる方がよっぽどましだよね、といつも思っています。

     とまあさぞかし「しんどい本」みたいな感想書いてますけど、安心してください。なんのことはないハッピーエンドです。
     まあちょっとハッピーエンドに行くまでにもうひと盛り上がり作れそうなあっけなさだったような気はしますが、それをやると収まりきらないんだろうな……と思うので、致し方ないですね。

     ちょっと切ない寮の中の青春物語を読みたい方にはオススメします。

  • 全寮制男子校が舞台。チャラ男・香司×優等生・昴。舞台もカップリングも王道たる王道なんだけど、あまり生かされていなかったかな… 途中までしっとりと丁寧にお話が進んでいて、二人の初めてのシーンが切なく、昴の思いが溢れているように感じた… だからこそ、ラストがあっさりしすぎてるように思ってしまいました。それでも2人の、自分たちではどうする事もできないもどかしさ、切なさい心情などは高遠さんうまいなぁと思いまいました。同じ舞台でもう一本あるみたいで、先生たちのお話かな? 楽しみです。

  • 学生寮、攻め視点。
    嘘と秘密ということで、半分くらいまで昴の事が
    よくわからないまま進みます。
    昴視点なら、もっと切なくて泣けたかも?

  • 泣くってことじゃないんだけど、切ないってゆーかキュンとしながら読みました。
    男子校の寮での話ですが、他人との関わりがどうと言うものではなく、主人公二人に寄り添った話です。
    学校イチもてる香司は学年イチの優等生昴に女の子を寮に連れ込んでいるところを秘密の部屋で目撃されてしまう。黙っている代わりに夜間外出の手引きをするようになり、だんだんと夜中にバイトしていることに香司は気付く。いいとこのお坊ちゃんばかりの学校で、なんの理由でと昴に聞くが口を割らない。
    痩せて、顔色も悪い昴がだんだんと気になってきた香司は半分勢いで付き合おうと言ってしまう。
    昴にどんどんハマっていく香司とは裏腹に昴は事情を一切話さず、頑なだった。
    一方で昴に頼まれ金を貸し続ける香司はもしや金づるなのかと不安も大きくなり、夏休み好きと言わない昴に夏休み一緒にいられる間に好きと言わなかったら別れようと告げる。
    しかし昴の妹の突然の訪問で香司はやっと昴の抱えていたものの大きさを知り…。
    とゆー話で、守られた世界で力のない高校生が翻弄されるってところでしょうか。
    金もない、親に学校に守られた世界で大事なものを掴めなくて足掻いてるっていう話。
    やるせなーい切なさがキュンキュンくるところが結構好きでした。

  • 父親同士が確執ありの、寮生の話。
    恋に理由はいらないとしても、お互いどこら辺が好きになったのか分からない。
    苦学生の受けと、お金を援助する攻め。所々萎える話だった。

  • 同じ全寮制の高校生同士のお話です。でも屋根裏部屋でのお話がメインなので、あまり学校!とか全寮制!とかそういう感じは少ないです。多分昴メインでのお話だったらもっとグッときたんだろうなぁと思います(^_^;)ラストの香司と昴の初めてのシーンは切なくて良かったです。というか、先生達はできてますよね?そちらがすごい気になりましたw

  • 香司が昴にハマっていく様子が楽しい。
    後半は朝倉と棚橋が気になってしょうがない。
    終わり方がちょっとあっさりでした。

  • 全寮制の男子校もの!ザ・王道設定!
    ボンボンのチャラ男×優等生
    どんな軽薄な男かと思いきやものすごい純愛!
    後半に進めば進むほど切なさは増し…もどかしくいじらしく悲しい。子どもに親は選べませんからね…。
    なにかを変えようと思う意思と行動力はどこにでも必要なものだと思いました。

    この高校でもう一本って高遠先生、間違いなく本作品の脇役教師ものですよね?むしろそうじゃない方がつらい!!待ち遠しいです。

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