夫殺し

著者 :
  • 宝島社
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  • Amazon.co.jp ・本 (206ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784796606363

作品紹介・あらすじ

林市はなぜ夫を殺害し、その死体を切り刻んだのか?飢えのためにいきずりの兵士に身を任せ、一族により川に沈められた母と、少量の豚肉との交換で屠夫のもとに嫁にだされた娘…。嗜虐的な凌辱、獣のようなセックス、飢えと恐怖と絶望の果てに、林市が見たものは?中国社会の暗部を怒りと悲しみで描き、容赦なく人間性の最深部を抉る現代台湾フェミニズム文学の最高傑作。

感想・レビュー・書評

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  • 思わず全身に嫌悪感の走る描写は、伝統的な制度が強いてきた女性への抑圧をこれでもかと読者に知らしめる。けれど主人公の夫であるその男もまた、屠殺を生業にする身分であるが故にしらずしらず抱え込まされてきた負の情念によって、逃れようのない苦しみの輪の中にいる。台湾のフェミニズム作家、李昂の有名作ということで、早く読まねばと思っていたけれどなんだかんだ後回しになっていたのをやっと読んだ。一気に読めてしまった。同じく李昂の『私小説』は、数年前に読んだ時、頻出する性描写に耐えられず途中でやめて積読状態なのだが、ちゃんと読みたいと思った。

  • 読みかけのこの本を何気なくリビングのテーブルの上に置いていたら、息子から「お母さん!なんつー本を読んでるの!」と思わず言われてしまったほどの、ちょっとギョッとするようなタイトルの作品。
    これは1993年の発行で、現在では絶版になっており、早くも古書扱いである。
    当時、なぜこの本を購入したのか、そのあたりの記憶は定かではないが、おそらく何かの書評誌をで紹介されているのを読んで、購入したのだと思う。
    それまで接したことのない台湾文学に惹かれたのと、フェミニズム文学というのに食指を動かされた。
    昨年読んだ「ワイルド・スワン」同様に、ほんの数十年前の社会における女性のポジションのあり方に愕然とさせられる。
    今では雇用機会均等法だのセクシャルハラスメントだのが当たり前に社会になっているが、この作品に描かれているのは、男女平等などという以前の問題。
    もちろん今の台湾ではこんなことはないのだろうが、この作品が台湾社会に投げかけた影響はどんなものであったのかとふと思う。
    タイトルのインパクトが強すぎるせいもあるのかもしれないが、文庫本になって、もっと多くの人に読まれてもいいのではないだろうか。

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著者プロフィール

1952年、台湾彰化県鹿港生まれ。本名は施淑端。中学2年で小説を書き始め、高1の作品「花の季節」が新聞文芸欄に採用され、『1968年短篇小説選』に選ばれ作家デビュー。1970年台北の文化大学哲学部に入学、75年アメリカのオレゴン州立大学演劇学科大学院に留学、78年台湾に帰国後、創作活動を再開。78年、『愛情試験』で聯合報文学賞佳作、81年「誤解」で時報文学賞佳作、「別可憐我,請教育我」で報導文学賞、83年 『殺夫』(邦題『夫殺し』)で聯合報中篇小説賞主席を受賞。2002年第11回台湾頼和文学賞、04年フランス文化部の芸術文化勲章、12年第35回呉三連文学賞受賞。16年台湾中興大学名誉文学博士を取得。現代女性の内面や性、社会の伝統との葛藤をテーマに創作を続ける。邦訳書はほかに、『迷いの園』(国書刊行会)、『自伝の小説』(国書刊行会)いずれも藤井省三訳。作品は日本語のほか、英・独・仏・蘭語など各国語で翻訳刊行されている。

「2018年 『海峡を渡る幽霊 李昂短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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