南瓜とマヨネーズ

著者 :
  • 宝島社
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  • Amazon.co.jp ・マンガ (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784796616348

感想・レビュー・書評

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  • 今で言うと、ソラニンに少し近い雰囲気。
    でも、主人公の性格が全然違うから、内容は全然違う方向に。

    日常。
    時に退屈だけど、それが当たり前になってしまって、
    当たり前の凄さが薄れていく。
    そんな描写が書かれています。

    辞めてしまった会社の先輩から、貰って、
    整理してたら出てきたので読んでみたら、
    思いの外深いお話でした。

  • この1冊を通してせいちゃんと美穂は強くやさしくなっていく。

  • 1999年購入の再読

  • 面白かったです。
    さっぱりと痛さ。

  • http://blog.szk.cc/2010/03/12/two-fool-guys/ より転載)

    ...誰も不幸にしない、みんなを幸せにする、という考えは、社会の問題、政治的決断の問題へとつなげて論じることもできるのだけど、僕が興味を持っているのは、どちらかというとそういうムシのいいことを言い出す人間が、現実にいたらどうだろうってことだ。『生徒会』シリーズの主人公、杉崎健は「ハーレムエンド」を目指すことを公言しているが、一方で、ヒロインたちの好意を感じ取りつつも、誰にも手を出さないというバランスを保とうと必死だ。まあ、アピールだけは女好きな主人公っていうのは少年マンガでは王道の設定だし、『エンジェル・ハート』冒頭の冴羽獠なんかは、それがむしろ痛々しいものになっていたのだけど。

    創作の世界だからこそ可能な主人公は、現実には優柔不断で、その場その場を取り繕って、複数の相手とだらだらつきあいを続けるダメ男にしかならない。要するに「誠死ね」の世界。よく「マンガやアニメのモテモテな主人公像は、読者の願望が投影されたご都合主義」という批判が投げかけられるが、こと『School Days』に関して言う限り、それ、願いが叶うと主人公殺されますけど?という世界観を突きつけていたのではないかと思う。

    じゃあ、殺されもしないけれど、誰も選ばない生き方ってあり得るんだろうか。そう思ったとき頭に浮かんだのは、『南瓜とマヨネーズ』のハギオだった。読み返すたびに「あ」がいくつ並んでも足りないくらいに悶絶するのだけど、この記事を書くために読み返して、その理由が少しだけ分かった気がする。

    主人公・ツチダはブティックで働きながら、ミュージシャンを目指すも挫折し、ニート状態のせいちゃんと同棲をしている。彼との生活を支えるため、夜の仕事、そして愛人契約へと手を出す彼女。それに対し、憤りを感じつつも、それが自分のせいでもあることから、うまく気持ちをぶつけられないせいちゃん。そんな二人の間に割って入るのが、かつてツチダが思いを寄せ、妊娠・中絶まで経験したものの別れることになった遊び人・ハギオだった――。

    この作品そのものは、二人のダメ男の間で揺れる女性の微妙な心理を描いた傑作だと思うけれども、男目線で読むならば、「で、おまえはどっちのダメ男?」と聞かれているような気分にさせられる。これを読んで「どちらも許せない!」と憤ることのできる男は、たぶん善人なのだけれど、きっとモテない人だ。男の人は、生きているだけで女の人を傷つける。これは、そのときに、自分の悪を自覚できないダメ男と、自分の悪に開き直るダメ男のお話なのだ。

    せいちゃんみたいなダメ男には、これまで何人も出会った。「ヒモ」っていうのは、血も涙もない男だと思われがちだけど、実際は違う。ほとんどのヒモは、共依存型の関係を築くのが上手な人で、ナチュラルに「この人は私が支えないとダメになる」と女の人に思わせる魅力を持っている。もちろん、お金を出したり世話を焼いたり、継続的な関係になったりかどうかは、女の人次第でもあるのだけど。で、ごく少数の人が、そのスキルを自覚的に使い出して人間のクズ化することはあるものの、ほとんどの場合、「真実の愛」とやらに目覚めると、改心してまっとうになろうとか決意する。

    彼らは、自分が悪いことをしているという自覚はあるけれど、そもそも自分の存在が悪いとは思いもしない。それに対してハギオのような遊び人は、自分の存在が根本的に悪であると自覚し、それを文字通り悪用することにためらいがない。倫理観が欠如している、と言えば簡単だが、そういう人は、人間から倫理観を取り去るのが、どれだけ難しいかを分かっていない。彼女がいても他の女を何人も部屋に連れ込み、そのことを隠しもせず、それでいて平気な顔で相手に愛やお金や献身を要求できる人は、実際問題としてなかなかいないのだ。

    この作品でのハギオの言動は、どの角度から見ても「悪い男」の見本のようだ。「おまえオレのこと好きだったもんなー」「オレ そんなにおまえのこと好きじゃなかったし」「そーゆーのわかってたけどでもさー」「おまえ好きばっかおしつけてきて」「昔 オレ おまえといてもおもしろくなかったもん」「けど なんかおまえ変わったな」「今日とかおまえといんのたのしい」「昔も今みたいだったらオレも好きんなったかもよー?」あたりのやりとりには、押し売りの才能すら感じる。別れ際に「オレ おまえのこと好きかも」「わかんないけど」とかナチュラルに言える人が、悪人じゃなくてなんだというのか。

    ハギオの行動原理は、未来を約束しない、束縛されない、ウザくない、そういうことを求めるだけのシンプルなものだ。だけれども、それだけに貫き通すのが難しいものでもある。いつも感動するのは、ハギオの「オレも『彼氏いる女』ってことでおまえに興味持ったのかも」の台詞だ。別れ話を持ち出されて返す言葉として、これほどひどい言葉もないけれど、別れ際までハギオは嘘をつかない。普通の男は、最後だけは格好つけようとして、いい思い出だっただの好きだった気持ちは本当だのと、しょうもない嘘をつく。だから女の人はそこで、相手への思い出を折りたたんで、別名保存して終了できる。ハギオみたいな人は、女の人が別れを切り出さない限り、冷たくすることはあっても別れたりはしないから、結局は、恋の終わりの理由が女の人の背中だけにのしかかってしまう。そのことが、彼女たちの中に未練を生んでいくのだ。

    ハギオはきっと全部分かってやっている、という僕の解釈は、多分に僕のハギオへのあこがれというバイアスを含んでいるけれども、そう考えると、セカイ系の延長としてのハッピーエンド症候群、というフレームに対して、いい感じの補助線になる。僕の好きな作品群に共通するパターンというのは、セカイに関われずに無力な僕が慟哭するよ、という、よく語られるエヴァ的なお話ではなくて、ブギーポップや戯言に見られるような「セカイの余り物」としての自分語りだった。余り物の自分は、存在を消去した方が完全な形のセカイを取り戻せるのに、それができないのは、ぼくと彼女がセカイの中心だから、というのが、僕の好きなセカイ系の構図だ。

    入間人間の描く「みーくん」は、その意味で「余り物の想像力」の極北にありながら、ぎりぎりのところでハギオになり損ねた「まともな人」だ。もはやセカイを維持することを自己目的化したように、心の中で「嘘だけど」と繰り返しながらまーちゃんとの関係に内閉していく彼は、根本的なところで優しい嘘をつこうとしているし、だからこそ誰も不幸にできない。ハギオは、誰にも嘘を言わないことによって、誰も幸福にしないという道を選ぶ。そして現実の世界であり得るのは、複数の女の子にうまいこと嘘を言ってみんなを幸せにしようと奮闘した結果、全員から責められて破綻する嘘つきか、自らの悪に正直になって、みんなを不幸にする余り物になるかなのだ。

  • 僕たちの生きる日常はいつも綱渡り、危ぶむ。そろりそろりと歩いていても突然闇の恐怖が襲いかかる。曖昧で輪郭が薄い。煙がゆらゆら揺れている。魚喃キリコさんの絵がそれらの言葉にはできない感覚を表している。綺麗ではかない、男女の依存。

  • 天才。いつだったか記憶のある、うざったい世界。女、男、男、どいつもこいつもうざい。でも愛おしい。

  • 何度読んでも、ハギオはゆるせない

  • 魚喃キリコさんの作品の中でいちばん好き。

  • あのキーホルダーがほしい、な

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著者プロフィール

1993年『HOLE』(月刊漫画『ガロ』)でデビュー。主に『COMICアレ!』『DAISUKI』『CUTiE comic』『FEEL YOUNG』などで執筆、代表作に『blue』『南瓜とマヨネーズ』『strawberry shortcakes』がある。いずれも映画化され、話題を呼んだ。2007年に出版した『キャンディーの色は赤。』を最後に漫画作品の単行本は出版していない。

「2020年 『魚喃キリコ 未収録作品集 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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