ワーキングプア いくら働いても報われない時代が来る (宝島社新書)

著者 :
  • 宝島社
3.19
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感想 : 86
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  • Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784796655330

作品紹介・あらすじ

労働人口の4人に1人は生活保護水準で暮らしている!ベストセラーエコノミストが、「働く貧困層」という格差問題に警鐘を鳴らす。

感想・レビュー・書評

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  • 最近矢継ぎ早に著作を出している若手エコノミストが書いた、「ワーキングプア問題入門」という感じの本。たいへん手際よくまとまっていて、問題の全体像を鳥瞰するには手頃な一冊である。

     ただ、各章の終りに掲載されている「ドキュメント『ワーキングプア』」なるインタビュー記事が拙劣。タイトルのとおり、さまざまなタイプの「ワーキングプア」の人へのインタビューをまとめたものなのだが、取材が浅くてまったく読みごたえがない。

     先日読んだ、「NHKスペシャル」をまとめた『ワーキングプア/日本を蝕む病』の場合、一人のワーキングプアに数ヶ月もかけて取材を行なっている。それに対して本書のインタビューは、1時間くらい話を聞いただけで記事をまとめているのが見え見えだ(もちろん、予算潤沢な「NHKスペシャル」だからこそ厚い取材が可能なわけだが)。

     しかも、「あとがき」の謝辞から察するに、インタビューとまとめは編集者もしくはライターが行なったらしく、本文に比べて文章の質が低い。
     ページ数の半分くらいを全10本のインタビュー記事が占めているのだが、このコーナーは全部なくして、門倉の分析をもっと深めたほうがよかった。

     インタビュー部分を飛ばして読むべき本。そうすると1時間で読めて、有益である。

  • 「働いても豊かになれない・どんなに頑張っても報われない」という状態や人々のことで、日本語では「働く貧困層」と訳されているワーキングプア。バブル崩壊後の長期不況において、多くの企業が「規制緩和」という名のもとに、賃金の高い正社員を派遣や非正規社員に置き換える手法のコスト削減によって生まれたワーキングプアは今やこの国を揺るがす社会問題となっている。BRICSや地下経済などが専門で、テレビでもお馴染みのエコノミスト・門倉氏が、豊富なデータとインタビューによってワーキングプアの状況を可視化し、構造改革による自由主義経済と民営化がもたらした日本型雇用システムの崩壊に警鐘を鳴らし、たとえ正社員として活躍している人でも、リストラや倒産などによっていつ陥るか分からない恐怖を煽るのだが、救いになるような処方が述べられていないのが少し残念。まぁ貧乏でも「プア充」とか言って明るく暮らしている人たちも多いのだし、プアにはプアなりの生き方もあっていいのかも?

  • 働けども働けども、なんとか死なない程度の暮らししか送れないことがどれほど辛いか、読んでいて絶望的な気持ちになった。今の日本が、多くのワーキングプアによる働きで回っていることにゾッとする。

  • ワーキングプア入門書と言ったところ。
    自分はワーキングプアの知識は全くなかったので参考になったが、規制緩和や構造改革、少子高齢化社会、移民などに関しての踏み込みはその分浅かった。

  • 人生油断してはならんと思いました。

    各章の終わりにその章のポイントが端的にまとめられていて、
    分かりやすかった。
    参考書を読んでいるようでした。

    20071002

  • 日本での所得格差は広がっているのかどうか、現実自分が見える範囲では分からないが、もしここで述べられていることが事実だとすれば、由々しき問題ではある。
    個々人の生活がどうこうという以上に、国全体の産業・経済への長期的影響が心配である。

    ドキュメントという形のインタビューが生々しく、それ以外の筆者のコメントが勿体ぶって少し余分と感じたりもするが。

  • 366.7||K11||Wa

  • 政府がワーキング・プア救済策を策定しようとしたところ、そもそも「ワーキング・プア」の定義ができない、との理由で先送りにされてしまったことは記憶に新しい。本書によると、その定義は「働いているのに年間収入が200万円に満たない人」であり、実数は546万人に上るそうだが、その中には主婦のパートタイマーから学生アルバイトまでが含まれており、確かにこのレベルの定義では雇用政策の立案は不可能だろうと認めざるを得ない。
    本書のドキュメント・ワーキング・プアを読めば、「ワーキング・プア」に実体が無い、とする議論に組することはできないが、だからこそ、エコノミストである著者にはより精緻な議論により、その存在を浮き彫りにしてほしかった。「統計数字を疑う」の著者にしては期待はずれというほか無い。

  • ワーキングプア(働く貧困層)についての問題提起は、日本では若年層派遣社員のように非正規でフルタイムで働いて主たる家計を支える層がでてきたことから可視化された労働問題。なので、中高年が失業で再就職しにくいなどは、ワーキングプアが問題提起される前からあることだで論点がズレている。また、10代のアルバイトの労働、定年退職後のテンポラリーな労働を年収という共通点をもってワーキングプアとして一括りにして論じるのは無理がある。全体的に総花的。起こっている表面的な事象を掴むのを目的にざっと読むには悪くはないが、問題の本質を突いていない気がする。

  • わりと読みやすかったです。最初に、どのように話を進めていくかを明確に書かれていて、良かったかなと思います。
    この本のポイントは、やはり幾つかに分かれているインタビューだと思います。
    ワーキングプアの方が考えられていることが、わかり易く伝わります。
    2006年にワーキングプアという言葉があったことに驚きました。それから何年も経っているにもかかわらず、現状は負の循環が続いたまま。
    高校生の私には、今読んで良かったと思えました。
    これから、考えていかねばなと思います。

    ホンマでっかの、あの先生だとは…驚きです。

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著者プロフィール

神奈川県立横須賀高等学校出身。慶應義塾大学経済学部卒業。浜銀総合研究所入社。1999年日本経済研究センターへ出向。2000年シンガポールの東南アジア研究所(ISEAS)へ出向。2005年6月まで第一生命経済研究所経済調査部主任エコノミスト。2005年7月からBRICs経済研究所代表。2007年同志社大学大学院非常勤講師。日本で初めて地下経済の研究に取り組み、地下経済に関する著作も多数発表している。またワーキングプアの啓蒙書も多数発表。BRICsに続く経済発展が見込まれる国々として、ベトナム・インドネシア・南アフリカ・トルコ・アルゼンチンを総称したVISTAという造語を提唱した。

「2018年 『日本の「地下経済」最新白書』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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