臨床真理 (このミス大賞受賞作)

著者 :
  • 宝島社
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  • Amazon.co.jp ・本 (341ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784796667791

感想・レビュー・書評

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  • 冒頭,彩の救急搬送,緊迫感で引込まれる。
    臨床心理士佐久間ミホは,障害者施設の司を担当。司の抱えている問題,彩の死の真相を治療のため調査する。脳死状態が見える司の"共感覚"は凄い。

  • 弟の死から、精神疾患を抱える患者を救いたいとして、臨床心理士となった佐久間美帆。

    勤務先の医療機関で担当となった藤木司は「人の声が色に見える」能力があった。
    人が発した声に色がつき、その人の感情がわかるという。

    赤は嘘を言っているとき。白なら真実。青は悲しみ。橙は生気にあふれている。
    嘘、侮蔑、焦り…。赤、紫、どぶ色…。
    臭いがしてきそうな汚い色、人には言えない重大な事実を隠している証拠が、その人の声に色はのる。

    ———


    人には言えない真実が、病院と障害者更生施設で渦巻いている。

    美帆の司を救いたい気持ちと、彩の死の真実を知りたい司が手を組んで、障害者更生施設の秘密を暴こうと奔走する。

    病院との癒着を知ったとき、美帆は警察官の栗原に伝えようと夜道を走る。
    しかし、真実を知った美帆の首には、すでに犯人の手が回されていたのだった。

    ——-


    ひたひたと背後に忍び寄る不穏な気配に、背筋がゾッとする。
    薄気味悪さと、犯人への嫌悪感に好き嫌いは分かれると思う。

    それでも、物語に散りばめられた伏線と、飽きさせない展開の多さにページをめくる手は止まらなくなっていた。

    誰かにお勧めする話の内容ではなかったけど、
    読みやすいし、このダークな雰囲気は個人的にはすごく好き。

  • 救急車の中で彩が死んだ。彩を妹のように接した司。2人の悲劇は福祉施設で起こった。彩は自殺だったのか?他殺だったのか?司の担当臨床心理士の佐久間美帆。未熟な彼女が悲劇の真相を司と共に手繰り寄せる。美帆を助ける警察官の栗原、いけ好かない奴だが警官としてのセンスは抜群で、最短距離で犯人に迫っていく。柚月さんの性描写はこれまでの作家さんの中で断トツの首位。清純な心を持つ私にもこのエロティシズムはグッときた。美帆が犯人に何故そこまでした?デビュー作としては文句なし、犯人の憎たらしさはもっと攻めるべきだった。

  • 2008年の「このミステリーがすごい!」大賞受賞作、出だしから終盤にかけての緊張感はなかなか面白かったけど、いかんせん弱者虐めの設定が私には受け入れ難い内容。また緊迫感に溢れた終盤もちょっとグロいので読後感が良くなかった。
    選評を読むと賛否真っ二つだったらしいけど さもありなん と思う。

  • このミス大賞受賞作。作者が好きで、いろいろな作品を読んでいるが、誤字脱字は多いし、ストーリーも雑で、初期の作品なんだと実感。

  • <麗>
     僕 はどうして今までこの本の作者 柚木裕子の事を何も知らなかったのだろう。作品が面白いのに加えて何と凄い美人さんではないか! ああもっと早く知りたかった。・・と云う事で いきなり急に僕の贔屓作家さんが一人増えてしまいそうだ。

    ところで先日塵芥賞作品の『彼岸花が咲く島』を読もうとした。が,何ページか読んでも面白くなく何を書いているのか理解できそうになかったのであっさりと読むのをあきらめた。僕は塵芥賞の作品がどうも苦手だ。それらは多分俗にいう純文学という類の本なのでスリルやサスペンスがちっとも無いのだ。

     それらと比べるとこの『臨床真理』はとても面白い。読者が興味を持って読み進められるように書かれている。純文に対してこちらはエンタメと呼ぶ。もしこの先柚木が別の賞を獲るならそれは「チョッキ賞」かあるいは今時なら「本屋大賞」なのだろう。そうエンターテイメントな要素が無くて何が趣味読書だ!と僕は思う。もちろん純文のなかにも面白いものは沢山あって僕もいく冊かは読んだが,どちらかというとそれらはづい分昔から皆が読んでいる歴史的名作だけのような気がする。

     おっと純文などの話ではなくこの作品の話だった。この作品のメインストーリーの設定が臨床例として本当に存在する事なのかは知るよしも無いがともかくそこが面白い。しかしそれにしても美人さんだなぁ作者の柚木さん。あ,すまぬ。

    非常に面白く興味が持てる作品なのだが僕が少し疑問に思ったところを書いておく。というかもしかしたらこれらの事は単純な推敲ミスの類なのではなかろうか! まあネタバレにはならないと思うがもし「これじゃばれてるよ」と思われたら教えてください。  本文110ページから引く。「・・・遺品は半年後,食べかすや塵芥と一緒に処分されてしまう・・・」なぜ「食べかす」なのでしょう?   まだある。185ページ。件の少女を唐突に『可奈』と呼んでいる。え,なぜ?その名前はいつ知ったの?

    そしてこれはもう推敲や校正をキチンとやっていない事の決定的証拠もある。決して印刷ミスや誤植のせいではない。 296ページ5行目にある「安藤」は「高城」の間違いである。これは前述したとおり意味を取りながら読み直すと一読者ですらすぐ分かること。つまり編集者他出版社やひいては作家本人も『本を上梓する』ということに真剣になっていないのだ と僕は哀しい想いになった。

    疑問や非難ではないが聞いたことが無い面白い表現もある。本文217ページ「ネコからじりじりと追い詰められている鼠の心境だ」うーむ。僕はそういう鼠に心境を聞いたことがないし会ったこともないが,美人(こだわりますw)の柚木はどうなのだろう。しかも猫も鼠もすばしっこいのであまり「じりじり」と追い詰められたりはしないものだと僕はここであらためて思ったりした。いやあ可笑しな作家さんだ 。本作はもう10年以上前のものだ。その後作者の作家柚木裕子がどうなったのか是非後続の作品達を読んで確かめてみたい。いろいろ高言してしまったな。すまぬ。

    【読者後書き ならぬ後愚痴】巻末には,これでもか! と言わんばかりの小さな小さなホントウに小さな字できっちり2ページ分の ”このミス大賞 その7”の選評が載っている。(その選考委員の筆頭が大森「あほ みくる」望くん であることに少し驚く)なぁんだ”このミス”って新人賞なのね。だからこんな作品でもいいんだぁ道理でなぁー と思ってしまった僕はいけないひとだろうか。すまぬ 。

  • 人の感情が色でわかるかぁ。
    見えなくてもいいものが見えてしまうとやっかいだろうな。
    気分が悪くなることが増えそうで。

  • 先が気になるし読みやすいケド主人公の正義感が強いところとか、他の登場人物が好きになれなかった。
    最後の最後に性的描写もイヤーな感じでどっと疲れた。

  • 施設育ちの司は特殊能力をもち、彩の死に不審を抱く。臨床心理士の美帆は彼の治療の為、事件の調査をする。

  • 第7回このミス大賞受賞作。
    新米臨床心理士が患者と向き合いながら事件を解決していく作品。
    医療ミステリー = 外科のイメージが強かったので、精神(心)系は個人的に斬新に感じました。

    精神系特有の陰鬱さ、仄暗さ、そして狂気。

    全て鮮明細緻に描写されていて
    感嘆すると同時に悪寒に似た薄寒さを覚えました。
    他作品も読書欲を唆られるものばかりなので、これからゆっくりと読破していきたいと思います。

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著者プロフィール

1968年岩手県生まれ。2008年「臨床真理」で第7回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、デビュー。13年『検事の本懐』で第15回大藪春彦賞、16年『孤狼の血』で第69回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)を受賞。同作は白石和彌監督により、18年に役所広司主演で映画化された。18年『盤上の向日葵』で〈2018年本屋大賞〉2位となる。他の著作に『検事の信義』『月下のサクラ』『ミカエルの鼓動』『チョウセンアサガオ咲く夏』など。近著は『教誨』。

「2023年 『合理的にあり得ない2 上水流涼子の究明』 で使われていた紹介文から引用しています。」

柚月裕子の作品

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