イノセント・ゲリラの祝祭 (下) (宝島社文庫 C か 1-8)

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  • 宝島社
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  • Amazon.co.jp ・本 (239ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784796673617

感想・レビュー・書評

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  •  フィクションと言いつつもほぼ事実に即して書かれたらしい本書。Aiが導入されたということは、既得権益に固執して現実を見ようとしない面々を押しのけられたということなんだろうか。さて現在の解剖率はどのくらいなんだろう。今作では白鳥がかすむほど彦根が大活躍。ただやはり海堂作品は連続して読むと少し食傷気味になってくる。

  • 本作では、死因究明制度に関する諸々の問題と、医学生の受け入れの変化、医師法二十一条について書かれている。一人の天才が放ち正論を、その他の馬鹿が理解できないがために黙殺されるのはあってはならないことだ。足並みをそろえることを重要視してきた日本的な思考なのだろう。
    海堂さんのすごいところは、考えを言葉にできることだ。小説家というのはそれが仕事なのだろうが、海堂さんの扱うテーマからして、他の小説家より間違いなくすごい。しかも小説家は副業なわけだし。
    バカな私には完全に理解できたとは言えないし、ましてやこの小説が掲げている問題点に関して言葉で説明することなど到底できないが、だからといって他人事としていい問題ではなく、死因究明に関して問題視することが重要なのだろう。
    身近な人が異常な死に方をしない限り、死因究明に関することについてなど関心を示す機会はないだろう。しかし問題は大きくまた早急に対応すべきものである。
    「面白い小説を書く」人がこういった問題をとりあげれば、その分野に興味のない人にも読まれ多くの人に問題提起できる。
    小説は物語なのだから魅力的でカリスマ性のある人物が出てくる。今回は彦根だろう。また気になる人物として西郷や坂田局長、桧山シオンが出てくる。しかし、現実はどうなのだろう。医療問題について小説にしている人は私は海堂さんしか知らず、しかも様々な医療問題について書いているのは海堂さんひとりだ。ひとりでできることはたかが知れているし、海堂さんの専門を見る限り本作についてなのだろう。カリスマ性のある者の、有権者を論破するくだりを書き読者をカリスマ側に引き込むが、それを白鳥を使って現実に戻す。地に足がつく範囲からやっていこうという現実的な話は実際現実にも適用できるのだろう。
    現代医療が小説と同様な問題を抱えているのかはわからないが、これらを問題視し且つ解決に導く努力が必要である。
    それでは私にはいったい何ができるのだろうか。
    起きてしまったことは仕方ないその後を考えよう、というのではなく、起こさないようにするにはどうすればいいのかという彦根の考え方はものすごく好きだ。

  • 久しぶりにとてもおもしろい小説に出会った気がする。

  • ぐっちー先生も素敵♪彦根先生の論破がすごい!何だかすかっとしました。

  • 霞ヶ関にある厚生労働省の検討会を舞台に、彦根先生が牙を剥く。それなのに、最後に白鳥さんが軽々と言いくるめてしまう、爽快さ。極北クレーマーは以前読んでいたので、ほかの書籍の内容がちらほら出てくるのも、状況をシンクできて面白い。

  • グッチー、白鳥の名コンビの結末はミステリーでは無く・・・・。
    「チームバチスタ」から続く一連のミステリー作品は作者のこの主張にあった。納得。

  • 上巻も会議でしたが下巻も会議会議で特に事件が起こるわけではなく淡々としています。ただ後ろからなにか気持ち悪いものが這ってくるような気配を感じ始めます。最後に少し次の伏線が提示されて物語の未来になりそうな話が出てきますが、ここまで進むにはまだまだ相当の巻数を積まないと無理そうです。上巻でも思いましたが、全体的にこれからの伏線を見せるお話でした。色々と予想したくなってきます。

  • 本作は検討会の描写が多く、直接的には現場の病院とは関係ないが、登場人物1人1人のキャラが立っていてまるでただの検討会とは思えないほどの面白さだった。
    特に、下巻では彦根の活躍ぶりが目覚しい。現代の医療行政の問題を鋭く突いている部分にも感銘を受けた。

  • 解剖制度にかわるエーアイ制度。これは日本の医療のあり方を間違いなくいい方向に変えるはずなのに、なぜか法医学会も行政も法律家も、みんな反対するわ妨害するわで、そんなもどかしくぐちゃぐちゃの状況の中に、我らが田口先生と白鳥さんが登場します。

    彦根さんという人も登場して、なぜか主役のような立ち居振る舞いで官僚たちをやりこめるシーンがいいですね。小気味良い。というよりそれがメインで、そこ以外は特に読まなくても楽しめます。

    作者は実際にエーアイの導入のために腐心しており、その苦労と困難と執念が前面に押し出されています。田口先生と白鳥さんは出てくるものの、彼らは背後に退いているというか、添え物のような印象ですね。

    推理小説のような厳密さが求められていないためか、文章がいつにもまして荒っぽいです。

  • この一連のシリーズで一番好きな作品。会話のやり取りでなりたつ本が好きなので。スカラムーシュに完全にもっていかれた。どうしてこうも魅力的なキャラばかりでてくるのだろう。

著者プロフィール

1961年千葉県生まれ。医師、作家。外科医・病理医としての経験を活かした医療現場のリアリティあふれる描写で現実社会に起こっている問題を衝くアクチュアルなフィクション作品を発表し続けている。作家としてのデビュー作『チーム・バチスタの栄光』(宝島社)をはじめ同シリーズは累計1千万部を超え、映像化作品多数。Ai(オートプシー・イメージング=死亡時画像診断)の概念提唱者で関連著作に『死因不明社会2018』(講談社)がある。近刊著に『北里柴三郎 よみがえる天才7』(ちくまプリマー新書) 、『コロナ黙示録』『コロナ狂騒録』(宝島社)、『奏鳴曲 北里と鷗外』(文藝春秋) 。

「2022年 『よみがえる天才8 森鷗外』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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