#9(ナンバーナイン) (宝島社文庫) (宝島社文庫 C は 2-3)
- 宝島社 (2009年12月5日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (347ページ)
- / ISBN・EAN: 9784796675185
感想・レビュー・書評
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アート系のお仕事+恋愛ストーリ。
単にシンデレラストーリじゃないところがミソ。
主人公の女性真紅。宝石店で偶然知り合った中国人実業家の王剣。
この二人のシンデレラストーリになるのかと思いましたが、そこは一ひねりされていました。
しかし、こんな男いるのかね?(笑)
お金持ちの世界はよく分かりません。
真紅は王剣のアートコレクションの手伝いをすることに。
なんだかんだ言っても真紅の行動力には脱帽です
そして、二人の関係が深まりますが...
徐々に明らかになる王剣の人物像。ある意味、納得です(笑)
一方で、真紅がマッサージ店で知り合ったマッサージ師。
そして起きた事件..
恋愛ストーリとアートの想いが絡んで、前半の伏線もスッキリ回収されて、楽しめるストーリ展開でした。
あっという間に読み終わっちゃいます。
お勧めです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
魅了された一冊。#9に秘められた極上のラブストーリーに極上の時間を味わえた。
恋愛モノは苦手だけど、大人のしっとり揺れる、時に激しく揺れる恋愛というものに魅了され、錆びついていた自分の恋愛の扉を優しく開かれた気がした。
マハさんの筆致にかかるとアートも恋愛も同じかなと感じる。
情熱的な一瞬も良いけど、やっぱり理屈じゃない、心の奥底が共鳴するような、繋がりを感じる、それが真の恋愛、自分だけのアートなんだろうな。
触れられないせつない、けれどかけがえのない想い。心が還る場所。緑の田園風景は確実に彼女だけのものだ。 -
マハさんの小説にはずれはないと思っていました。
この作品も中国が舞台で、アートをめぐるお話で、「アノニム」のようなかんじかな。と思いワクワクしながら読んでいました。
ストーリーとして、面白くはあったのですが、主人公の深澤真紅(しんく)と中国の青年実業家の王剣(ワンジュンの)恋愛がどうしても好きになれなかったので、すいませんが、星を減らさせていただきます。
まるで夢のようなシンデレラストーリーかと思ったのですが…。
でもさすがは、マハさんです。
脇役のディビッド、江梅(ジャンメイ)などのキャラクターは光っていたと思います。
タイトルの人物#9もキャラクターは素敵だと思ったのですが、ストーリーが少し甘すぎると思いました。ごめんなさい。(これは私の感想であって、また違った感想のも方いらっしゃるとは思います)
真紅のセリフで「私、上海二回目なんだけど、完全に恋しちゃった。上海って、負けん気が強い美人みたい。力があって、輝いていて、怖いもの知らずで、みんな、その魅力に夢中になってしまうと思う」というのがすごく印象的でした。
まだ未読の作品や新作もあるので、マハさんにはまだまだ期待しています。 -
上海の街らしい華やかで派手な大恋愛と、絵画の世界らしい穏やかでうっとりとした、儚げな大恋愛。
切ないけれど、たしかにお互いを愛して、守った。その事実だけがきっと、二人の愛のすべて。
儚いが、素敵な映画を見たような、余韻の残る読後感でした。
#9は私にとっても忘れられない存在になりました。 -
夢中になってしまった
何故だろう
運命とか、人生とか、
恋とか…
様々な事柄や人々が交わって
生きている
懸命に生きている
いつか
またあの場所に
戻ってみようと
考えたりして…いる -
作者の得意である美術関連のお仕事小説であると同時にミステリアスな恋愛小説でもある。日本と上海を往来する2001年~2015年までの14年に渡る物語なので、スケールとしては大きいのだが、数人の登場人物にのみ軸を置いているから、とても壮大な物語というよりは、振幅の大きなミステリアス・ラブ・ストーリーという印象であった。
この作者ならではのストーリー・テリングにページを繰る手が止まらず、読み手の情緒が揺すられる感覚。時と場所をダイナミックにジャンプさせるイントロとラストでサンドイッチされる濃密な時間。そこで湧き上がる大きな状況の変化。それ以上に変化を遂げる人間たち。
主人公の真紅(しんく)という名は、無頼の絵描きであった父が最後に書いた不思議な絵<一面の赤>と呼応するもののように思われる。その絵はどうなったのか? 一方、本書の一方のテーマともなる一幅の農村の絵はなんであるのか?
どちらも作者が得意とする美術家や有名美術作品ではなく、あまり知られることのないままに人から人へと渡って、最後にヒロイン真紅のもとに辿り着く無名作家たちによる現代美術作品である。一面の赤とは? また優しさに満ちた美しい農村の絵とは何ものなのか? これら二つの知られざる作品こそが、本書では物語の重要な軸となり人間たちの縁を形づくってゆくことになる。
しかし、それらのことは振り返ったときに見えてきた構図なのだが、ページを繰っている間は、実は絵に描いたような金持ちの御曹司である中国の王子が、釧路に生まれ育った貧しい田舎娘を見初めて上海でビジネス展開をしてゆくという物語という形でしか作品が見えてこない。そのうちに御曹司のエゴイストが前面に現れ、愛情の真偽も定かではない危うさの空気が立ち昇り始める。
仕事に追われる真紅は、通っているマッサージ店である施術師の指圧術で体の懲りばかりではなく心に貯め込んだ憂鬱までも癒されてゆく。施術師の名前は客には知らされぬシステムなので、真紅は#9(ナンバーナイン)という担当者番号で指名する。次第に心を通わせる二人だが、そこにはこの世での繋がりのようなものはほとんど許されず、代わりに彼の描いているらしい絵画について真紅は好奇心を募らせて行く。
その後、真紅の恋も仕事も<ナンバーナイン>もミステリアス&ドラマティックな運命へと繋がってゆくため、語れない。本書で是非、そのスリルと謎を味わって頂きたい。ただただ原田マハでしか現出しない不思議なアート恋愛小説作品であることだけは請け合いたい。 -
すごく丁寧な作り込み。いくつものバラバラな伏線が、最後に見事なまでにひとつにまとまっていく。
マハさん特有の絶妙なタッチで流れの中にグイグイ引き込まれて、いつの間にか読み終わっていた。
ただひとつ。道東の太平洋側の釧路はそんな、毎日雪掻きしなきゃならない程には雪は降らない。昔何年か住んでたことがあるので。ま、些細なことだけど。 -
美しい話。
原田マハさんの本を初めて手に取ったのは『楽園のカンヴァス』だったのだが、この『#9』も好き。
温度の違うラブストーリー、動と静、陽と陰、対照的な愛の描かれ方が印象的。上海には行ったことがないのに、読んでいると一つひとつの場面が目に浮かぶようで、時には温度さえ感じてしまえるような気がして、映画のような一冊だと思った。
途中まで、ただのシンデレラストーリーならつまらないなと思っていたので、そこから展開があって良かった。 -
原田マハさんの恋愛小説。
ですが、主人公のアートにかける情熱と持ち前の好奇心、上海のアツさなど、引き込まれあっという間に読み終わりました。
最近のアートを前面にした作品とは趣が異なりますが、主人公のひたむきな感じは少し通じるものがある、かも?です。