家のない少女たち 10代家出少女18人の壮絶な性と生 (宝島SUGOI文庫) (宝島SUGOI文庫 A す 2-1)

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  • 宝島社
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  • Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784796679138

感想・レビュー・書評

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  • 家出少女たちの、厳しすぎる人生。
    なぜ家を「棄てた」のかという背景を知ると、やるせなさを覚えます。

    援交。クスリ。借金。リスカ。
    寂しさ。不安。
    「誰か、助けてって言えないあたしを助けてよ…」という言葉が胸に突き刺さりました。

    支援者として何を見落としてきたのか。
    そして、自分たちにできるのは何か。
    そんなことを考えるきっかけを得られる一冊です。

  • 壮絶な虐待やイジメから家出、売春へ。少女たちへのインタビューをまとめた本。

    まさにブルースな内容。みんなほぼ無茶苦茶な家庭と親の元を逃げ出してカラダを売っている。

    MDMAをつぶして粉末にして、ペプシで鼻うがいしておいて鼻から吸引(スニッフィング)するとかなり効くらしい。そんな中毒系なエピソードもある。

    子供には愛情が必要なんだな~と当たり前の事にあらためて気づかされる本だった。愛情がないとおかしくなっちゃうのが良くわかる。

    子を持つ親全員と、女の子を愛するすべての男に読んでほしい傑作です。

  • 今の社会がはらむ問題が書かれている
    と思う

    どうにかしてやりたいと思っても、
    私が単純に目の前の人を救えば犯罪者だ
    現在の社会がつくったセーフティーネットで生きる事が苦痛の人間はどうやっていきればいいのだろう?

    いろいろ考えさせられる。
    これに関してはもっと突っ込んで考えたい。
    実際にも触れてみたい

    今年読んだ本の中でも上位だな

  •  「裏社会・触法少年少女を中心に取材活動を続けるルポライター」(著者略歴の一節)が、いわゆる「プチ家出」ではない「本格家出」のケースばかりを扱った連作ルポ集だ。

     副題の印象から、「どうせ下品なキワモノ本だろう」という先入観を抱いて手にとったのだが、読んでみたら真摯な内容の本格的ルポだった。
     著者の文章は読みやすいのに味わい深く、少女たちのイメージが鮮やかに浮かぶ描写力がある。

     登場する家出少女たちを、著者は「言わば日本のストリートチルドレンであり、現代社会の崩壊していく家庭の墓標である」という。
     なるほど、少女たちの語るこれまでの歩みはどれも壮絶で、「ホントに日本の話なのか?」と目を疑うほどだ。貧困と暴力、親や同居人からの性的虐待、いじめ、レイプ、援交、裏風俗、ドラッグ、児童養護施設や児童自立支援施設でのつらい日々……。

    《夏子は、同居する風俗嬢の部屋で出産。そしてその乳児を、病院の前に遺棄した「子棄ての家出少女」だった。
     中絶経験のある家出少女など、もうありふれた話だ。生活のために売春に身をやつす家出少女たちにとって、最大のリスクは間違いなく「予期せぬ妊娠」だろう。虐待家庭からの逃避や貧困からの脱出等、様々な理由で本来いるべき場所が「危険」な少女らにとって、妊娠を理由に家に戻らざるを得ない状況に陥ることは、最も避けたい事態だ。》

    《少女らの血反吐を吐くような独白は、僕の胸に鋭く突き刺さる。「家に帰れば?」なんてことは、とても言えやしない。かといって、様々な危険を伴う家出生活を続けろと言うことも、またできない。取材を重ねるたびに、無力感に苛まれることも多くなった。》

     そんなふうにいう著者の目線はしかし、「なんてかわいそうな少女たち」という「上から目線」でもなければ、社会派っぽい「告発目線」でもない。
     著者は少女たちのミゼラブルな半生に向き合いながらも、彼女らの“生き抜く力”にどこか敬意を払っている。家出少女たちの生活を全否定するのではなく、どこかで「これもまた一つの生の営みなのだ」と肯定する視線が感じられる。

     じっさい、登場する18人の少女のうち何人かは、家出して援交で生活費を稼ぐような暮らしをしながらも、ピュアな心とたくましい生命力を感じさせる。泥の中から美しい花を咲かせる蓮のように……。
     家出少女のすさんだその日暮らしが、胸躍る冒険譚のように見える瞬間すら、本書にはちりばめられているのだ。

     その点で、本書の読後感は、少し前に読んで感動した石井光太の『絶対貧困』に通ずるものだ。

     その他、印象に残った一節をメモ。

    《裏風俗産業を主として、デリヘルやソープといった一般性風俗、そしてAV業界に至るまで、下半身産業に従事する女性にはかなりの確率で「知的障害を抱える女性」がいる。》

    《幼少期から施設に暮らす子供には、実は顕著な特徴がある。虐待を受け施設で育つという成育歴を持ちながら、予想外かもしれないが、概ね「異常に人懐っこい」のだ。これは不特定多数の大人(施設職員)に育てられたことが理由だろうと思う。彼女らはより多くの大人から、ひとかけらでも優しさを貰おうとするかのように人懐こく、大人に対して警戒心がない。どんな大人に対しても、それこそしがみつくように甘えてくるかと思えば、プイっといなくなってしまったりもする。》

    《親に殴られ棄てられ家を逃げてきた子供たちにとって必要なことは、本書の少女らの言葉が示している。圧倒的に身を苛む寂しさ、人を信じられないことのつらさ、行きずりの売春男にすら優しさを求める哀しさ。親に抱きしめられたことのない子供たちの切なさは、他者の精神的な抱擁によってしか埋めることはできない。》

  • 「ー」

    なぜ家出をするのか、平和な家庭で生活してきた人には分からない。
    もしかすると自分もそのような境遇にいたとは誰も考えない。
    無知のヴェールは現実的でない。

    だからこそ、知ろうとしなければならないと思う。
    たとえその痛みがリアルには感じられなくとも。

  • 風俗業や援交が、家で少女たちの居場所になっていた。
    性産業の規制が厳しくなっても、彼女たちの人数は減少しない。それは、なくなった居場所をまた他の場所、違法行為に求めるだけであり、法の改正は彼女たちを守っていることにならない。

  • 家庭で十分な愛を受けなかった場合に、女子の方がより悲惨な事になるイメージ。

    家出少女が家出をするのは
    ◇居続けるに耐えない家庭が増えた245
    から。また、
    ◇家庭(多くは母子家庭)の貧困245
    だという。
    あとがきにおいて著者は、母子家庭の救済、並びに、児童養護施設及び、よりハードな問題を抱えた児童が入所する児童自立支援施設の充実を訴える。施設については、忍耐や専門的な知見を必要とするにもかかわらず、腰掛けの先生が多いのが実態だそう。

    特に印象的だったのは、売春で稼いだ金で家族をしっかり養っていた第四章「大阪のババ子」。
    ◇「あんな、ウチ、小学校のときのあだ名って『ババ子』やねん。ババゆうて、大阪や、うんちのことやん。でもホンマ、ウチ、ウンチ羨ましいて思った。ウンチ流したらおしまいやん。うち、ノグソやねん。野ざらしやん。」71
    ◇援交でもなんでもええから、金ぎょうさん貯めて、通信で大検とる。大阪でババ子ゆうて、本に書かれたら地元のアホら、見てわかるやろ。あんたら、誰がババかよう考えぇや。心がババ付きなんは誰や82

    そして、泊め男坂ちゃんの背徳感が凄い。
    ◇「やっぱり三十代でインポでもなくて、十代の子が目の前で下着脱いで股開いてるのを見て、我慢するのはキッツイですよ。つらかった。後悔は、その誘惑に一回負けてしまったこと。90-91

    あと豆知識として、MDMAをスニる(鼻腔吸引)する時は、ペプシで鼻うがいをするものらしい。175

  • 日本の貧困問題について思索していたところ、この本に出会った。最初は興味本位だったが、家で少女たちの人生の凄まじさと何とかサバイブしていく力強さと互助に、強い興味を抱いた。結論としては高齢者に予算が行きがちな日本だが、未来を担う児童福祉にこそもっと予算を投じ、虐げられている少女少年たちのセーフティネットを厚くすべきだ、ということなのであるが、そういう難しい制度論はすべてあとがきに廻し、凄まじかったりたくましさに感動する具体的なエピソードにFocusしている構成がよかったと思った。

    先進国なのに凄まじい貧困と差別があること、一方で、これが世界だとどれぐらいもっとすごいことになっているのかと思うと、いろいろ考えずにはいられない。

    社会の一側面を目をそらさず、こういう現状があることをしっかりと認識して、何かしていきたいと思う一冊であった。

  • 家出をする少女と援交の関係がよくわかった。
    親は子供をいじめたり叱ったりストレス解消のためにしてはいけないと強く思った。

  • 「最貧困女子」に比べると、少女達がどのような経緯でその環境に身を置かざるを得ないのかという考察は少ない。
    しかし、その取材内容は普通ではけして知ることのできない凄まじいものである。
    虐待や貧困からの、家出、援助交際など負のスパイラルが続く。彼女達も「普通」の環境で生きていく適応能力、精神面の安定などを持つことができずにもがいていたりする。
    特に虐待は実の親がするだけに、本人に負わす傷の大きさはとても深く根が深い。やりきれない気持ちになることも多々あるが、これも現実なのだ。

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著者プロフィール

1973年千葉県生まれ。文筆業。子どもや女性、若者の貧困問題をテーマにした取材活動をし、代表作として『最貧困女子』(幻冬社新書)などのあるルポライターだったが、2015年、41歳のときに脳梗塞を発症し高次脳機能障害が残る。当事者としての自身を取材した闘病記『脳が壊れた』『脳は回復する』(ともに新潮新書)が話題に。他にも、夫婦での障害受容を描いた『されど愛しきお妻様』(講談社)『発達系女子とモラハラ男』(漫画いのうえさきこ。晶文社)、当事者視点からの実践的な援助ガイドを試みた『「脳コワさん」支援ガイド』(日本医学ジャーナリスト協会賞受賞。医学書院)、当事者と臨床心理士との対話を記録した『不自由な脳』(山口加代子氏との共著。金剛出版)などの著書がある。

「2021年 『壊れた脳と生きる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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