おやすみラフマニノフ (宝島社文庫) (宝島社文庫 C な 6-3)

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  • 宝島社
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  • Amazon.co.jp ・本 (372ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784796685825

感想・レビュー・書評

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  • 岬洋介シリーズの第二弾。
    前作の『さよならドビュッシー』がとても面白く、とても満足感が高かったのでとても楽しみだった。
    前作も音楽の演奏描写が細かく音が聞こえないはずのこちらもその音楽の演奏がダイレクトに聞こえてきた。そしてその時の心情表現もきめ細やかな上、音大生の苦悩やそこで見た一筋の光への渇望など多くの感情が交錯していくところがとても面白かかった。全体の構成として、成功が訪れたその数ページ後にはまた試練が訪れるという構成が成長ストーリーとして面白く、下がってはまた這い上がり、馬鹿にされてもそのたびに起き上がり・・・という展開が章節が進む度に持ち上がる音楽のような物語進行がとても感動した。絶望の中には病気や才能への嫉妬や憧憬などからくる焦燥感など音楽をやっていない人でも感じる負の感情がこれでもかとリアルに描写されておりとても身にしみた。
    またミステリーとしての側面は、どうして犯人が演奏会を中止させようとしたのかというところの理由がとても切なく、またその思いを一番に感じていたはずの柘植彰良がそれを自分のエゴに利用してしまったところが後味の悪いと感じた。そして最後のシーンは柘植彰良が死んでしまったように見える終わり方がとても悲しく、この小説のタイトルである『おやすみラフマニノフ』につながるところが本当に切ないと感じてしまった。前回とはまた違う結末、これからもこのシリーズを読んでいきたいと思いました。

    この作品をアニメ化した際の声優陣を自分なりのキャスティングしてみたので読む際に参考にしてください(敬称略)。
    岬洋介:森川智之
    城戸晶:古川慎
    柘植初音:東山奈央
    麻倉雄大:内田雄馬
    小柳友希:黒沢ともよ
    神尾舞子:佐倉綾音
    須垣谷教授:速水奨
    江副准教授:小山力也
    下諏訪美鈴:早見沙織
    入間裕人:福山潤
    柘植彰良:若本規夫

  • 岬洋介シリーズの音楽小説第二弾。作者の他の作品の様に血生臭い事件は起きないが、それでもミステリーの要素は満タンな作品だった。

    前作以上に作品中で演奏される曲の描写が秀逸だった。今回もiTuneで音楽を聴きながら読んだが、クライマックスの曲であるラフマニノフの協奏曲第二は作者の筆運びに合わせて聞き進め、最後は思わず涙が出た。クラシックと言うのはこう言う風に聞くんだ、と本当に教えて貰えた。

    自分の様にクラシックを普段聴かない人には是非読んで貰いたい。きっと眼から鱗が落ちると思う。

  • 頂点を目指すということは孤独に向かって進むこと。わかっているのに逃れることが出来ない、わかっているのに進んでいく、例え何かを犠牲にしても。そんな音楽の神に選ばれた孤独な演奏家の音をわたしたち聴衆は求めるのでしょう。
    ミステリー小説でありながら音楽小説でもあるこのシリーズ。事件は音楽大学での時価2億円のチェロ、ストラディバリウスが密室から盗まれたことから幕を開けます。次から次へとまるで学園祭の一大イベント定期演奏会を中止においこむように事件が起こります。
    犯人がこの中にいる。演奏会選抜メンバーの仲もギクシャクします。それでも、音楽は彼らをひとつの高嶺に連れて行きます。その演奏曲は大好きなラフマニノフピアノ協奏曲第二番。この曲が奏でられる定期演奏会での描写は圧巻。まるで音楽が聴こえるようで鳥肌ものでした。
    謎は臨時講師のピアニスト岬洋介によって明かされていきます。明かされていく真実は、え、そうなの?!ってものまであります。密室のトリックもあ、あれが伏線だったのー!なんて、もうびっくりでした。
    ラストの学長も孤高の音楽家らしい終わり方だったのではないでしょうか。とにかくもう、岬先生、カッコ良すぎ!

  • クラシックに疎いので、曲名が出て来るとYouT oubeでその曲を聴きながら読み進めた。密室でストラディバリウスのチェロが盗まれるという事件のトリックはもちろん、学長のピアノが水浸しになった事件、学長の殺害予告の犯人が誰なのか考えながら読み進めたがまさかの人物に驚いた。また、よほどの才能と運、そしてコネがなければ音楽で食べていくのは難しいことも改めて思い知った。避難所の体育館での岬先生と晶の演奏シーンと定期演奏会での演奏シーンが臨場感に溢れていていつまでも心に残った。

  • 私は昔クラリネットを吹いていたけど、もっとがむしゃらにやっていればよかった、そして辞めずにずっと続けていれば良かったと、読んでいてそんな気持ちが湧いてきました。
    音楽の描写がものすごくて、ステージに立つ緊張感や、みんなとハーモニーを合わせ、指揮者と呼吸を合わせる瞬間、そんなことを鮮明に思い出させられました。
    ミステリーなんだけど、それ以上に音楽家を目指す人たちの葛藤や成長がとても素晴らしく描かれていました。

  • 先日、「有川浩」改め「有川ひろ」さんのサイン会に行き、たっぷり有川さんの作品を購入したにも書かわらず、中山七里さんにハマってみた。

    「さよならドビュッシー」の続編がこちら。異色のピアニスト、岬洋介が指揮を務める物語。音楽のシーンは相変わらずの迫力。クラッシックはほぼ聴いたこともないのに前作と同様、不思議と音の波が目の前に迫ってくる様子が思い浮かぶ。時系列的には前作のコンクール後になる。

    構成としては前作と同じで、音楽青春物語にミステリ要素が加わっている。そして最後に意表を突く新事実が明らかにされるのも同じ。だからといって飽きたわけではない。岬先生の言葉が素晴らしい。勇気と希望を与えてくれるが、悪魔的な魅力も感じる。タイトルがまた、最後で胸に刺さる。

  • 岬洋介氏が活躍する音楽ミステリー、第2弾。
    他のシリーズも、音楽シーン満載ですが、本作もピアノやオーケストラなどの音楽シーンが満載です。

    第一バイオリンのコンマスである晶(あきら)と、学長の孫でもあるチェロ担当の初音(はつね)は、秋の定期演奏会のメンバーに選ばれ、プロへの道を進むべく、猛練習に励む。

    しかし、ある日、時価2億円と言われるチェロ、ストラディバリウスが忽然と盗まれた。完全なる密室の中、なぜ?、どの様に?

    続く学長のピアノの破損事件や、学長への脅迫状など、次々と事件が起こる。果たして、無事に定期演奏会は、開催されるのか?

    前作の『さよならドビュッシー』とのリンクも、数々の場面で登場し、嬉しくなります。

    最後のどんでん返しもピリッと効いて、物語は、静かに幕を閉じます。

  •  中山七里さんとの最初の出会い?は「御子柴礼司シリーズ」で3冊読んでから、原点に返って最初から読もう!という気になり、「さよならドビュッシー」を読んだのが今年の2月で、それからもう5ヶ月も経過してしまいました。
     「おやすみラフマニノフ」は「岬洋介シリーズ」の2作目ですね。
     今回もまた音楽に関する知識や演奏の表現が凄かったです。中山七里さんをWikipediaで検索すると『中山本人は音楽に関して素人であり、楽器も何も演奏できない』と書いてあります。ちょっと信じられませんね。読んでいるだけで音楽に関して全く素人の私でさえ演奏時の情景が浮かぶくらいなのに。
     私にとって一番印象に残ったのは、大雨で避難した体育館で、多くの避難者を前に2人で演奏したシーンです。こんな状況でも聴衆を引き付ける演奏はどんなに素晴らしかったのでしょうね。是非聴いてみたかったです。
     岬洋介シリーズ3作目を手にするのはいつになるのかな?今から楽しみです。

  • 終盤の怒涛の展開が面白かった。家庭環境の違いや才能の有無などが複雑に絡み合っており、様々な人間模様が見てとれた。トンカツ屋の店主さんの言葉が良かったです。

  • 岬洋介シリーズ第2弾。
    今回も凄く面白かったです。
    ミステリーとしての面白さはもちろん、音大の様子や音楽家を目指す誰もが抱える葛藤や悩みが本当にリアルで共感してしまう部分が沢山ありました。
    この作品の中に出てくる曲も大好きなものばかりで
    読んでいて本当に楽しかったです。
    最後に畳み掛ける真実の数々、ページをめくる手が止まらなかったです。
    次も楽しみです。

著者プロフィール

1961年岐阜県生まれ。『さよならドビュッシー』で第8回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、2010年にデビュー。2011年刊行の『贖罪の奏鳴曲(ルビ:ソナタ)』が各誌紙で話題になる。本作は『贖罪の奏鳴曲(ソナタ)』『追憶の夜想曲(ノクターン)』『恩讐の鎮魂曲(レクイエム)』『悪徳の輪舞曲(ロンド)』から続く「御子柴弁護士」シリーズの第5作目。本シリーズは「悪魔の弁護人・御子柴礼司~贖罪の奏鳴曲~(ソナタ)」としてドラマ化。他著に『銀齢探偵社 静おばあちゃんと要介護探偵2』『能面検事の奮迅』『鑑定人 氏家京太郎』『人面島』『棘の家』『ヒポクラテスの悔恨』『嗤う淑女二人』『作家刑事毒島の嘲笑』『護られなかった者たちへ』など多数ある。


「2023年 『復讐の協奏曲』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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