【映画化】完全なる首長竜の日 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

著者 :
  • 宝島社
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  • Amazon.co.jp ・本 (313ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784796687874

感想・レビュー・書評

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  • 「このミス」が全選考員一致で、ということらしいが、どこが面白いのか分からないままだった。

  • こういう夢と現実と記憶と妄想とがシームレスに繋がってる感じ、すごく好きです。さらに下敷きになってる「サリンジャー」が、なんとも得体の知れない生温い空気を放ち、そして「SCインターフェース」なる言葉が、ある種の無機質でひんやりした気配を漂わせる。行間から立ち上ってくるこのざらざらした空気の手触りが、気持ち悪くてすごく良い。

    ミステリーだからって敬遠してたけど、思ってたのとは良い意味で全然違った。読ます嫌いはだめですね。

  • すごく引き込まれた。まぁ、物語の仕掛けは小説慣れしてる人にはある程度読めるかと・・・。

    ただ、この物語はオチがどうとか、仕掛けがどうという物語じゃない。むしろ、読み終えてからが本番。あの場面はこういう事だったんじゃないか、本当はこういう意味なんじゃないか・・・どこまでが夢なのか、何度も読み返してパズルを解くように咀嚼したくなる。

  • 映画になったし興味持って読んでみた。これは素晴らしい。どんどん引き込まれていって、でも実は読者も半分騙されていて。ラストは種明かしかと思いきや。。サリンジャー的なラストを迎える。


    しかし、どうやら映画は設定を大きく変えているようだ。先に原作を読んで良かった。

  • 夢から覚めたらまた夢、他人との意識共有が好きなんでたまらん。たとえオチが読めたとしてもこの作品は面白かった。たぶん映画版とはかなり違うんだろうな

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「映画版とはかなり違うんだろうな 」
      予告編見たら割と面白そうだったので、映画を観に行こうかな、、、とチョッと思っています。原作は観て面白か...
      「映画版とはかなり違うんだろうな 」
      予告編見たら割と面白そうだったので、映画を観に行こうかな、、、とチョッと思っています。原作は観て面白かったら読みます。
      2013/06/05
  •  2009年に『このミステリーがすごい!』大賞を受賞したと聞いて、え? と思った。先にこの本を読んでいる妻に、確認する。----この本って、ミステリなのか? ----ミステリ? えーと何をもってミステリって言うの? ----えーと犯罪の有無かな。すくなくともアメリカのミステリを毎年選んでいる超有名なアンソロジストであるオットー・ペンズラーはそう言っている。

     正確にはこうだ。「犯罪か犯罪の脅威がテーマかプロットの核をなす作品」。その唯一の条件さえクリアしていれば、どんなに広義の解釈であろうと構わない。仮に時代物だってSFだっていいんだろうな、多分。それなのに、妻はこう答えた。----じゃ、これはミステリじゃないと思う。

     選者を確認。香山二三郎、吉野仁、茶木則雄、大森望。ううむ、大森さんはSF畑として、他はこれぞミステリって布陣であるのに、このミステリかどうかわからない作品をミステリに選んだわけである。うーむ。選ばれた理由は、単純に言うと素人離れしている作風、そして奇妙な心象風景的イメージ、サリンジャーの小説につなげる豪腕、といったところみたいだ。要するに巧い作品、っていうんだろうなあ。

     ちなみに高校から予備校時代にかけてぼくはサリンジャーの大ファンだった。入学まで待てずに大学のサリンジャー・ゼミに出席したくらいのファンだった。短編集『ナイン・ストーリーズ』のみならずサリンジャー文学の核となる作品が実はこの本書のタイトルが参考とした『バナナフィッシュにうってつけの日』(野崎孝訳:原題"The Perfect Day for Bananafish")である。

     荘子の「胡蝶の夢」をテーマに小説を書くと、どちらがリアルでどちらがビジョンなのかわからなくなるから、書き手としては読者を欺くのも自由だし、読み手はなんでもありのこの手の小説に対して正解を先読みしようとする。その謎解き勝負に陥りやすいのがこの手の作品の長所でもあり、短所でもあり、だと思う。

     語り口の巧さしか褒めるところがなかったのも、わかる気がする。なぜって、内容はなんでもあり、だからだ。サリンジャーへのオマージュあり、作中人物の一人称語りあり、作中人物の錯乱あり、どれがリアルかわからない物語の多重入れ子構造あり、だからだ。もしやこういう小説を読んだ人が、こうしたテーマで一斉に小説を書き始めたら、これに似た構造体でありながら、より面白い小説に辿り着けてしまうのではないか、という気もする。

     ゆえにジャッジしにくいジャンルである。せめてミステリとでも言い切れる犯罪らしき何かの痕跡でもあるのだったら、と思うのだが、この物語はどこの海底にも錨泊していない幽霊船のように夢遊を繰り返すと思う。たとえページの全巻を読み終えた後になっても、終わらない夢遊を。

  • 映画の予告にちょっと惹かれて気になっていたので、
    原作読んでみた。

    映像にするとしっくりいくかも、と思う場面もあったけど、
    おそらく原作と映画化されたものが別物になってるパターンなんだろうな・・・
    設定が違う感じ。

    出演している俳優陣が気になる人ばかりなだけに、
    ちょっと様子見しようと思う。

  • 第9回『このミステリーがすごい!』大賞受賞。選考委員が満場一致で即決した作品です。

    自殺未遂を起こし意識不明になった弟と、『SCインターフェース』を使って弟と対話を続ける姉の淳美。SCインターフェースとは、植物状態の患者とコミュニケートできる医療器具のことだ。

    弟が淳美に自殺の原因を話そうとしないまま月日は流れる。弟の記憶を探り続けていた淳美は、次第に現実と夢の区別がつかなくなっていく……。

    作品のタイトルが好きで前々から気になっていたのですが、文庫化されたと知り早速読んでみました!

    “このミス”の選考委員が満場一致した作品!と期待していたせいか、『そんなに面白いか?』というのが僕の正直な感想。

    著者の筆力は凄いと思います。ただ、読後感がモヤモヤしていてあまり好きではない。この読後感のせいで、マイナスイメージが拭いきれないのかもしれません。

    ミステリというよりはSF要素がかなり強いので、『さぁミステリ読むぞ!』って方には向いていないので要注意。

    作品を読んでいる時の不安定感というか、酩酊感というか、そういった"物語の迷宮に迷い込む"感覚は結構好きです♪

  • 夢が現実なのか、現実が夢なのか。
    それを判断する方法を私は知らない。
    ゆえに普通に暮らしていても、見慣れた風景の中でも、たまに「あれ、これは夢?」という考えが頭をよぎる瞬間がある。

    この本はまさにそれがテーマだ。
    浩市の意識に翻弄される淳美。胡蝶の夢。マグリット。夢と現実の境界が解らなくなっていく。
    そうしてそこから目覚めた先で、また。

    夢から覚めても夢にいて絶望したならば……誰しも人は浩市、そして淳美と同じやり方で脱出しようとするのではないか。
    本当に「静謐」なラストにぞっとさせられる。
    ミステリーではないかもしれないが、大変興味深い一冊だった。

  • 独特の空気感というか湿度感はけっこう好き。

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著者プロフィール

1971年東京生まれ。小説家・劇作家。2010年『完全なる首長竜の日』(宝島社)で第9回「このミステリーがすごい!大賞」を、『忍び外伝』(朝日新聞出版)で第2回朝日時代小説大賞を受賞しデビュー。2013年『忍び秘伝』(文庫化タイトル『塞ノ巫女』)で第15回大藪春彦賞候補。近年は作品の英訳版が発売され、中国のSF雑誌にも掲載されるなど、海外での評価も高い。『機巧のイヴ』シリーズ(新潮社)、『見返り検校』(新潮社)、『僕たちのアラル』(KADOKAWA)、『ツキノネ』(祥伝社)、『ねなしぐさ 平賀源内の殺人』(宝島社)など、著書多数。

「2020年 『ドライドックNo.8 乾船渠八號』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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