【映画化】完全なる首長竜の日 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)
- 宝島社 (2012年1月13日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (313ページ)
- / ISBN・EAN: 9784796687874
作品紹介・あらすじ
第9回『このミス』大賞受賞作品。植物状態になった患者とコミュニケートできる医療器具「SCインターフェース」が開発された。少女漫画家の淳美は、自殺未遂により意識不明の弟の浩市と対話を続ける。「なぜ自殺を図ったのか」という淳美の問いに、浩市は答えることなく月日は過ぎていた。弟の記憶を探るうち、淳美の周囲で不可思議な出来事が起こり-。衝撃の結末と静謐な余韻が胸を打つ。
感想・レビュー・書評
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SFサスペンス。
これにアクションが加わればもうハリウッド映画みたいな設定。
現実と夢の区分は当事者には難しい。
誰もは一度は考えるテーマかもしれません。
びゅんびゅん話は飛び、恐ろしいと思った。
「この世界が現実かどうか試したくなった」
っていうセリフが印象的でした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
少女漫画家の和淳美は、昏睡状態の人間と対話できる「SCインターフェース」を通じて意識不明の弟と対話を続けるが、意識下での自殺を繰り返して淳美を拒絶する彼に傷ついている。
力作の首長竜のイラストを粗暴な祖父に破り捨てられた記憶。幼い弟が溺れそうになった海の記憶。徐々に曖昧になる現実と思い出の境目。
比較的早い段階で推測できる仕掛けですが、暗いのは変わらず・・・
「アザーズ」と「パプリカ」を融合させたような・・・。
映画だとふたりは恋人同士という設定のようですがどんな仕上がりになっているのかな。 -
久しぶりに一気読みしました。気になってほんとに止まらない。色んな布石が繊細でリアルで(でもほんとのrealではなくて)…ナッツのように後引く話でした笑 そして最後がまた…終わり方が良いですコレは大賞とりますね。ぜひ読んでいただきたい作品です。メチャクチャ面白かった。
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理解していくのに必死だった。
夢の世界、記憶の世界、現実の世界。
どこからどこまでがどの世界なのか。
人の脳とリンクできるようになって、それを記録できるようになったなら、それは面白いことかも知れない。
アナグラム、好きです。 -
このミス大賞&映画化作品。
映画化…難しかっただろうなぁ。これをどう表現したのか見てみたい気もする。
センシングと呼ばれる特殊な機械を使って、自殺未遂を起こして昏睡状態となった弟の脳の中へ入り込み対話をしていくという、SFミステリ。
現実と意識の中の世界が交錯し、そのどちらにいるのか分からなくなるような、ふわふわとした雰囲気が魅力。
途中で展開が見えてしまったのと、結末は悲しい。 -
タイトルになんだか引っかかるものを感じると思ったら
「バナナフィッシュにうってつけの日」を引き合いに出した話でした。
なるほど。まあ、ちょっと寂しい解釈だけどなー。
本筋はSF心理ものなんですけど、
情景描写として奄美諸島の貧しい島の様子なんかが恐ろしく緻密に描かれていて、
ちゃんとした重みと湿度のあるお話でした。
ただ、身内に同様の状況がある身としては、
昏睡患者と物理インターフェースを介して
意思の疎通ができるという設定は、
夢はあるものの現実味を感じにくかったな。
自分の感覚としては人間の意識なんて物理現象にすぎないと思うので、
魂みたいな話になるとうーんとなってしまう。
それでもエンターテイメントとして全然楽しめます。
現実が神の見ている夢ならば、
僕たちはみんなフィロソフィカル・ゾンビだろう。 -
不思議な読後感。
ミステリというよりはSF小説だと思う。
SCインターフェースという架空の医療機械を通して夢と現実を行き来する。
日常がいきなりグニャと非現実に変わる場面が何度もあるが村上春樹のような感覚。
もう少し物語のスケールが大きければもっと面白かった気がするのだが、設定やアイデアなどがとても新鮮で新しい読書体験ができた。 -
読み終わった瞬間、「面白かった~」と思わず、呟いた一冊です。数年前に映画化されていて、気にはなっていたのですが、未読のままでした。
少女漫画家の和淳美が植物状態の弟と、ある方法で対話し、夢とも現ともつかない世界を幼いころの記憶を織り交ぜながらさまよい、いつしか自分自身をも信じられなくなっていく・・・といった不思議だけれど、実際にこんなことあるかも、と思ってしまう説得力に満ちた文章が魅力的な一冊です。
図書館スタッフ(学園前):トゥーティッキ
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帝塚山大学図書館OPAC
https://lib.tezukayama-u.ac.jp/opac/volume/763948 -
タイトルに惹かれて購入。
うわぁ、、、というのが読み終わった時の感想。謎?自体は半分も読めば予想できるものなのだが、ラストはちょっと遣り切れない感じ。
サクサク読めたし自分好みの文体だと思うので、作者を覚えておこう。 -
冒頭数十頁の南国の島の描写や、主人公の職業である漫画家の生活などの細部の描写は素晴らしく、かなりのリアリティがある。全体的に文章も読みやすく、夢と現実が交錯するやや気怠い流れでも読ませるだけの筆力は感じた。反面、謎そのものである主人公の立場や編集者との関係はすぐに分かってしまったのが残念。リアリティのある描写だけに、違和感は浮き彫りになりやすく偽装が足りなかった。あとサスペンスではあるものの、主人公の行動理念が非常に薄く、いまいち心証が掴み難かった。現実と夢が交差するからこそ、主人公には明確な立場と動機が求められると思ってしまっただけに、この乖離した感覚は引っかかってしまった。テーマに含まれると言うには少々朧気過ぎるだろう。
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第9回『このミステリーがすごい‼』大賞受賞作
植物状態になった患者とコミュニケーションがとれる医療器具「SCインターフェース」が開発された。少女漫画家の淳美は、自殺未遂により植物状態となった弟の浩一と対話を続けている。
なぜ?弟は自殺を図ったのか?淳美はその答えが聞けぬまま時間だけが過ぎていく。
淳美が15年連載を続けていた漫画が終わることになり、そのタイミングで次から次に不可思議な出来事が起こり始める。夢なのか?現実なのか?そもそも現実も夢の一部なのか?
衝撃の結末と静謐な余韻が心に響く・・・
あとから知ったのですが、本書は綾瀬はるか、佐藤健で映画化されてました。予告編を見ると、設定が少し違いますが、是非この世界観を見てみたい♪ -
この本も東京の景色とともに記憶されている本。2013年に読んだ本は、やけにどれも鮮明に覚えている。
佐藤健・綾瀬はるか主演で映画化されたときにあわせて読んだ本。乾緑郎の本ははじめてだったが、海外文学を意識している?ような文体に惹き込まれた。
途中から鮮やかにひっくり返る衝撃。こんな風なミステリの見せ方もあるのかと驚いた。よくわからないまま展開が進み、突然日常が破壊される感覚はホラーとどちらかというと近い。
作中に出てくるサリンジャーの本を読みたいなと思っていたら、あっという間に5年経ってしまった。胡蝶の夢のごとく夢と現実の境目は実は曖昧なので、その境目がぼやけてくる前に、やりたいことはやらねばもったいないと思う。 -
話の核心というかトリック自体は序盤で薄々察せられてしまって(この題材ながら伏線は割と丁寧に張ってあるのだ)、終盤の展開自体は特段驚きもなく受け入れられた。
言及しておきたいのはむしろ文章構成の方で、主人公が現実と虚構を行き来するうちに、読者もまた今自分が読んでいる場面が作中における現実なのか虚構なのかが主人公同様混乱するように、複雑に各節が編まれている。それでいて話の筋自体は矛盾なくすっきりと通っているので、根本の着想自体は真新しくもないように感じられるのに、何故か飽きない文章となっていた。著者の構成力。 -
いわゆる推理物というよりは、確かに物語は謎めいているんだけど、ホラーとかサスペンスみたいな雰囲気。そんなに人が死にまくったりするわけでも無いのにね。
面白かった…ちょっとわくわくしちゃうような不思議さが、そのまんま薄気味悪さにすり替わっていって、なあんだと思わせてからの、この読後感!!
「夢からから醒めてもまた夢」「胡蝶の夢」といったテーマから、なによりもそのクラクラする舞台の見事さから映画インセプションを連想したけど、あれから単純娯楽をぬいて、空虚なホラーのようなうすら怖さを漂わせたような…、いやあもう、本当に、「このミステリーがすごい! 満場一致!」って感じだわ。珍しくまるでエッセイしていない、読書感想文していない解説(まさに解説)の通りだわ。素直に浸って楽しめた。
いやーーすごいものをよんだーー。
ラストシーンはどう説明すると説明つくのかなぁ、つかないものかもしれないけれど、偽物のサイン掴まされた人がどうなるか予想ついて仕込んでたとか…いや無理があるかな。 -
漫画家の淳美は、「SCインターフェース」を使用し、自殺未遂を起こした弟と対話を続けている。そんな淳美の周囲で不可思議な出来事が起こりはじめ、真相が徐々に明かされていくという物語。「胡蝶の夢」の話が出たあたりで、物語の展開やオチまで予想がついてしまいましたし、今までにもこんな話あったよなーみたいな感じでした。映画のインセプションより前に作られていたようですが、結局のところ「胡蝶の夢」にストーリーを付けただけのような内容。それほど面白いとは思いませんでした。
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こういうサイコサスペンスみたいな...と言うか
「夢とうつつを行ったり来たり」的な本は
実はあまり得意ではない(^ ^;
私自身がそんなに安定してる人でもないので、
読んでてもの凄く不安になってくる(^ ^;
そういう意味では、良くできているのでしょう(^ ^;
このミス大賞の審査員が全員一致で推したと言うし。
かなり複雑な構成ではあるが、
モチーフが何度も提示されているうちに
「あ、これはもしや」と読者が気づくようになってる。
そして「その通り」の結末が来るのだが、
これは「ネタバレ」ではなく「誘導」であろう。
そして、きちんと「正しい結末」に誘導された、
その後でまだ人を不安にさせるという
何ともいけずな作者やわ〜(^ ^;
内容はよくできているのですが、
個人的に苦手なジャンルなので★三つで(^ ^; -
第9回「このミス」大賞受賞作品。
休みの日にゆっくり1日で読めてよかった。通勤バスの中で読むには適していない作品です。
現実と夢の世界、過去と現在を、南の島の遠い記憶、蒼い海、首長竜がますますあいまいにしていきます。
段々と明かされていく現実、と思ったことも夢?本当に本の中に迷い込んだような気分になった一冊。 -
情景描写は巧みで、南の島の回想に限らず爺さんに会った井荻、西湘の砂浜など、鮮明というよりは漠然と、かつて自分も見た曖昧な記憶を呼び起こすように浮かんでくる。会話も自然で、余計な虚飾がないぶん、それぞれの人物像を読み手が創造する余地がある。