- Amazon.co.jp ・本 (351ページ)
- / ISBN・EAN: 9784796702034
作品紹介・あらすじ
ロシアの大地に根ざし、近代科学技術に触発されて登場したロシア・コスミズムは、人間の不死復活、生命の謎、宇宙の生成からロケットによる宇宙開発など驚異的な思考と破天荒な想像力に満ち溢れている。本書はその代表的な六人の人物紹介と、彼らの主要な哲学・思想論文(本邦初訳)を収録する。
感想・レビュー・書評
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ロシアの宇宙精神
意識をもつ生物が宇宙の深く関わっているという感覚や人間はミクロコスモスであって自らのなかに自然と宇宙のあらゆる力とエネルギーを凝縮させているという思考は洋の東西を問わず世界中の文化に見られる(からである)。古代の宗教や神話的な思考において、人間はすでに自分の存在と宇宙の存在との間に相関関係があり、互いに結びついていることを洞察し、その直感をさまざまな形、とりわけイメージによって表現してきた。
<抜粋>
この100年間のロシアの宇宙論的、能動、進化的な哲学と科学には、この潮流全体に共通するいくつかの特徴がある。第一にそれは、進化に上昇しようという性質があり、進化の過程で理性が発達していくという考えであり、新しい意識的・能動的な進化段階が不可欠であるという認識である。
この段階は「自然の統御」、「精神圏」、あるいは「霊圏」などと名づけられた。宗教的なコスミニストたちにとっては、進化運動の至高の目的は変容された存在の時代であり、それは「神の国」、あるいは「天の国」と呼ばれている。
人間の本性は現在のところ不完全であり、「過渡的な」段階、すなわらさらなる発展が必要な危機的な段階にあると考えられているが、同時に人間の高い尊厳が認められ、人間が宇宙を変容させる役割を担っていることが強調される。ロシア・コスミズムの宗教的な支流では、その中心的な理念である「神人論」において、人間には創造活動を行なう使命があるという考えがもっとも重要となる。人間は歴史社会的な活動を行ない、生物的.あるいは実存的な主体となっているだけでなく、進化し、創造的に自己を越えていく宇宙的な生物でもあるという新しい考えが登場するのだ。同時にまた、慈星や宇宙を変革する活動の主体となるのは個々の人間ではなく、意識と?情をもつすべての生物の集団的(ソルボーヌィ)的な集合体であり、すべての世代が統合された全人類なのである。こうしたブルガーコフのい?「人類総体」の原型は、宗教的なコスミストたちにおいては、世界の霊、神的なソフィアである。
科学そのものに、より正確にはさまざまな学を統合して生命に関する普編的な宇宙科学となった科学に新しい方向が与えられる。科学は現代世界の基本的な創造の力なのだが、いまのところ破壊のためにも用いられ、あらゆる創造を冷笑するような成果をあげている。こうした事態の多くは.現代世界の根底にあり、大多数の人々の心を支配している、ひとつの選択が招いたことなのだ。現代世界は、自然によって与えられた現在の人間の本性とその限界をあえて押し広げようとせず.それらを事実上、神格化することを選択した。神的なものと同等の権利を認められた暗い「デモニック」な面もも含めて、自分の本性のあらゆる面をあらゆるレベルで試して、自己を揺るぎなにものにしようとする人間を理想とすることによって、さらに進化して、完全なものになるべきだという至上の要請を拒否したのである。だが、科学的な認識と探求は新たに能動進化という道を選びとり、そこで
自己を実現していかなければならない、そこでは明確な道徳基準,それらが向かうべき究極の目的が必要となる。なによりもまず生命と生物学に関する知識が発展すること、しかも一定の計画にそって変革していくという目的があり、そこに倫理的な基準がある以上、自然の統御という至高の理想をうけいれ、それに奉仕していくことーこれこそ意識的な進化段階のために活動する科学の最も重要な特徴である。精神圏という宇宙的な理想は、現実にすべての人間を引きつけることができるように、具体的に解明されなければならない。なにをめざしているのかわからないような研究や?限のない認識,あるいはいま生きている人々の一時的な物質的快適さを作り出すためだけに行われるような研究と認識を、最高の善とみなすことはできない。最高の善をなるのは生だけである。しかもそれは精神的に開花した生,個性的な生でなければならず.そうした生を維持し、生をさらに長くし、発展させていくことでなければならない。そのような善や目的は対象は、例外なしすべての人に関わる。それゆえに科学研究.そして宇宙のの変革は共同の事業,文字通りすべての人の事業でなければならない。能動進化という思想の最高の形態が人格主義-不死の人格という思想、死者をひとつの人格として復活させる思想-だというのも当然なのである。
コスミストたちの力は、能動進化と精神圏が倫理的にも客観的にも不可避であることを立証したところにある。
ユートピア主義とは異なり、それは単に高貴な精神が世界の調和を求めたといったものではなかった。精神圏
的な方向は、進化それ自体が、すなわち理性をみずからの道具として発達させた宇宙の発展の奥深い法則が選び取ったのである。多くの人々が自然の運命を前にして自らの弱さと無力さを感じ、「救済」は絶望的だ
と思っている。これは単なる陰うつでたわいのない心情ではない。そこから毒を含んだシニズム、あるいはさまざまな種類の凶悪さやサディズムや「サタニズム」などの病的な反応が生まれるのである。自らを絶滅寸前のところにまで追い込んだ、現代世界の多くの人々の恐怖や絶望感はとほうもなく大きい。「普通の人々が、そして人文学者や哲学者の一部の人も文明が滅亡するかもしれないと考え、恐怖を抱いている」とヴェルナツキイは深い確信をもって書いている。「こうした考えや恐怖が生まれるのは、地質学的な過程のもつ力と深さが充分に知られていないからである。現在われわれは生物圏が精神圏へ移行していく時代を体験しているが、この移行は地質学的な一過程なのだ」。 これが書かれたのは「野蛮化の力」がその勢力と規模を拡大し、恐るべき第二次世界大戦を始めようをしていた時代であった。(略)、ヴェルナツキィは日記に、「野蛮化の力」は敗北するにちがいないなぜなら それは精神圏的過程に逆らい、世界の発展の客観的な法則に逆らっているからである、と書いている。(略)ヴェルナツキィがわたしたちに証明しようとしたのは、進化に逆らうこと(略)は、不合理であり、無益であるということである。
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ロシアコスミズム
科学の発達がユートピア(ディストピア)を促す
「神人」という概念
エネルゲイア
コピー 3か所
(できたら写す)
23-25
32-33
86-88
人類の進化(神化)
宇宙への憧れ=天上界への憧れ
フロレンスキイ:器官投影 オルガノプロジェクション
P213(器官投影とは、自然の器官に「かたどって」技術的に道具や機械が作り出すことであるか、)フローレンスキーはこの理念を人間が周囲の環境に能動的に働きかけ、それを意識的に操り、合目的的に再編成する活動としてとらえた。有機体の空間に広がり、自分の外形を世界のすべての事物に押し付けることを熱望している。なぜか?なぜなら自分は不完全なること感じているからである。逆
<b> 技術はたんに人間と自然と媒介するものではなく、人間が自己認識するための、一種の手段なのである。道具や機械を組み立てるのは、私たちは自分自身の機関の構想より深く、正確に理解しようとするようなものである。</b>機関において無意識に、反射的に行われていることが、技術においては自覚的な設計とプランに従って意識的に再生産され、組み立てられたものとなる。それだけではなく、私たちの器官の中で萌芽的なもの、あるいはいまだに全く発達しておらず、現れてもいないものを技術の中で再生産し、そうした器官を完全な、調和のとれた気候に変えることによって、私たちはいや応なしに私たちの地震の中にある、まだ眠っている鹿瀬を発見することになる。「技術が進んでいく方向と生命が進んでいく方向は平行線をなしている」とフロレスキーははっきりと書いている。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ヒョードロフを中心とした宇宙理論
ユートピア的でありながら、現実的であ
人類の可能性が描かれている -
ロシア・コスミズム(ロシアの宇宙精神)とは、19世紀末から20世紀初頭のロシアにあった独特な精神潮流で、人間を、世代交代によって種を完成させていく動物のような段階から、積極的に進化(神化)させ、と同時に過去に生きていた全ての人類を復活させて、宇宙の隅々にまで進出していく、という救世主思想のこと。本書では、代表的な6人の人物とその思想が紹介されている。